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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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ED 月日は流れ少年少女のその後を知る小噺

 大魔王ヴァファムーアを討ち倒して二年の月日が流れた。


 マナを大量に放出したウイックはあの後、七日間眠り続け、皆に大いに心配を掛けた。


 ウイックが目を覚ます頃には色んな話が進んでいた。


 大魔王の封印が解かれた事件の時、世界中に大量発生した魔物門。


 その被害に陣頭指揮を執って対応に当たった、ウルアイザ帝国とクラクシュナ王国は、各諸国にも働きかけ、巨大な神聖樹を頂く新島を一つの島国と認定し、その初代君主にウイックが祭り上げられた。


 謎の島は放置するには危険だが、正直あまり関わりたくはない各国は、帝国と王国の提案に異を唱えることもなく、アーチカとアイナニナに後押しされた秘術士が適任と認めさせたのだ。


「ウイック様の元に輿入れするためには、それ相応の立場になって頂く必要がありましたので、アーちゃんもワタクシも頑張りましたよ」


 本音なんてこんなもので……。


 ラックワンド公国の君主になったと言っても完全なお飾りで、ランドヴェルノから暖簾分けを受けたアンテが開いた工房で量産されたワークボット。


 アンテの物を中心に、AIが自律制御する作業ボットと共に、街の開拓は瞬く間に進み、半年で十分な移住者も定着した。


 そして一年で島の半分、13の箇所に都市が築かれた。


 それぞれの都市には烙印の乙女達の名前が捩られたが、少女達は神聖樹の袂に築かれた首都“ラクト”の宮殿に住まい、今日は最後の一人、アイナニナ=ナハル=フォン=クラクシュナの輿入れ準備のお引っ越しの日。


「もうすぐアイナも成人か。しかし成人の日に結婚しきって、どんだけ待ち望んでたのって感じよね」


 マニエルが覗き込むベビーベッド、二人の赤ん坊が並んで寝ている。


「はぁ~い、もうすぐママもやってきますからねぇ、大人しく待ってましょうねぇ」


「はは、寝てる子に何言い聞かしとんねん」


「別にいいでしょ、私の子とアイナの子、とっても仲良しだから、ずっと私が見てきたけど、やっぱり本当のママがいいみたいで、ちょっと悔しかったりするんだから、寝ている時は完全に私の子みたいなもんでしょ」


「誰がマニエル様の子ですか! ワタクシのレイラエナに変な事を吹き込まないでくださいまし」


 大きな鞄を携えて、一月振りにアイナニナがやってきた。


「あらら、予定よりずっと早く着いたのね。サプライズも用意していたのに」


「ごきげんようマニエル様、皆様も、もう一刻も早くこの子に、なにより旦那様にお会いしたく思いましたので」


 鞄を置き我が子を抱え、本人も分かっているのか、レイラエナは頭をアイナニナの肩に預けて、寝息を立てながらも穏やかな笑顔になる。


「ところでウイック様はどちらですか?」


 一月前は会う事ができなかった。


 待ちに待ったと言うのに、約束の時間前だとはいえ、なぜ待っていてくれていないのか?


「あいつなら潜ってるよ」


 子供達と一緒にお昼寝をしていたピューレが体を起こす。


「きょ、今日もですの? ワタクシがくるってちゃんとご存じなんですよね」


 大魔王復活に命も賭けていた、上級悪魔ザモンが作り出した偽ウイック、ウッくんと潜った洞窟はちゃんと存在していた。


 この島には大きなダンジョンが二つ、神聖樹の物と地下の物、ここを訪れる冒険者の修行場として人気のスポットとなっていた。


「一年半を掛けて、神聖樹を攻略して、今は地下ダンジョンに挑戦中。誰よりも早く攻略するんだって、息巻いてるからねぇ」


 マニエルも我が子、マエニカを抱きかかえて、自称もう一人の愛娘に近付く。


 子供達のプレールームに今いるのは四人、アンテとエレノアは工房入りしている。


 自分達の子供と、ミルとイシュリーの子供達は、いつでも顔を見に行けるように、工房横の託児所に預けている。


 君主の代行をしているのアーチカは、今日も宮殿の職務室。


 助手兼ベビーシッターにシズを側に置いている。


「セイラ様は自室なのですか?」


「うん、プールに潜って頑張ってるよ。エルが付き添ってくれてる」


 人魚の妊娠期は懐妊から出産までに、二年が必要となる。


 生まれて直ぐに泳ぎ回れるように、時間を掛けてお腹の中で育てるのだ。


 その時が近い事を陣痛が教えてくれている。


 エルラムが“すくみず”を来て、彼女のサポートをしてくれている。


「こらぁ、あんた達は何遍言ったら分かるの!? 王宮内を走り回るんじゃあないの」


 小さな子供5人を追っかけ回して入ってきたのは、5人より一回り大きな女の子。の姿をしたお人形。


「お久し振りですダンルー様」


「あら、随分早いお着きね。ウイック達なら今、こっちに向かっているって念話が入ったそうよ」


 背中で眠るエルラムの子供を気遣うダンルーは、あれから転々と依り代を変えていき、今はこの七歳くらいの、少女姿をした等身大フィギュアに身を収めている。


「子守役お疲れ様、いつもありがとうな」


 5人の子供達は自分達の母親の元へ、双子を見てもらっていたノアールがお礼を言う。


「ノアレもアルンもお礼言うときや」


「うちの子もありがとう。いつも助かってるわ」


 三つ子はピューレの後ろに隠れて、顔を出して一斉にアッカンベーをしている。


「こんにちはチャンちゃん、リンちゃん、シャンちゃん」


 三つ子はアイナにお辞儀をすると、声を揃えて行儀よく「こんにちは」と挨拶する。


「なんなのよあんた達、ちょっと態度が違いすぎるんじゃなぁ~い?」


「ダンルーは完全にこの子等に嘗められとんねんから、しゃーないわな」


 ネコマタと爬虫人属の子供は、人種ひとしゅの子供と成長速度が大きく違う。


 イタズラ盛りの5人は毎日この調子で、ダンルーから雷を落とされているが、誰一人堪えてなどいない。


「本当に賑やかだなここは、何時来ても」


「あら、セレーヌ様もおいでになったのですね」


「ふむ、お主とセイラを祝いにな、してウイックはどこに居るのだ?」


「ミルとイシュリーといつもの所よ。いらっしゃいメイビスちゃん」


 セレーヌの足にしがみつく少女もまた、イタズラ好き五人組と同じように、人種ひとしゅの子供で言うところの四歳くらいに成長しており、魔女に連れられてランドヴェル宮殿にやってきた。


 魔女の子供とは思えないほどに、しっかりと深々とお辞儀をして挨拶をすると、呼んでいる五人組の元へ走っていく。


「よう! 揃ってんな。お帰りアイナ、セレーヌもよく来たな」


 程なくして帰ってきた主、ミルとイシュリーは工房に回っているそうだ。


「ウイック様、非道いではありませんか、今日はワタクシがここへ引っ越してくると、お知らせしておいたではありませんか」


「いや、わりぃわりぃって、お前が来る予定の時間はまだまだ後だろ、俺はそれに間に合わせようと切り上げてきたんだぜ」


 それは分かっていても、言わずにはいられない。


 少女の胸の内を察して、強く抱きしめて謝罪をすると、第二王女は機嫌を直して、子供達の目も気にせず自分からも抱きついた。


「もうあと少しで式典だからね。エレンが工房の方に顔出してだって」


 マニエルは言付かった伝言をすると、自分も男の背中に抱きついた。


「おお、そうか」


「皆さん、大変ですの! あら、お帰りなさいウイックさん、といらっしゃいアイナニナさん」


「ごきげんよう、エルラム様」


「おう、帰ったぞエル、それで何が大変なんだ?」


「そうでしたの、そろそろ産まれそうですよ。ウイックさん早く! ちゃんと立ち会ってくださいの」


 なんともドタバタした日常だが、ここではこのにぎやかさが当たり前。


 これより暫く後に13人の花嫁に囲まれた君主婚礼の儀が執り行われ、数日間の祭事が納まると、ウイックは数人のお后様を連れては、連日ダンジョン攻略に明け暮れるのだった。

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