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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
189/192

36 秘術士への想いと、秘術士の願いの噺

『おーい、みんなぁ~~~~~』


 この闇がどこにあるのかが分からないため、飛ぶ事ができない。


 ディーフィンとの対戦で空間跳躍は習得した。抜け道を見つける事ができれば脱出できるかもしれないが、手掛かりがどこにもない。


『みんなの声が聞こえれば、抜け道はきっと見つけられるんだ』


 しかし烙印の乙女達は、大魔王との戦いが再び激化しており、祈りを送る余裕がない。


 ウイックの身に何があったかを理解している皆は、接近戦を避け、中長距離からの攻撃を主体として、敵との間隔を保った戦術を立てている。


「みなさん頑張ってますよウイック様、早く還ってきてください」


 大魔王は気象を操り、落雷、暴風、豪雨、地震、業火を巻き起こして少女達を苦しめる。


「ウイック様……」


 戦闘が続く最中、祈るのはアイナニナとセレーヌの二人、呼ぶ声は遠く深く届くようにと、みんなの分も想いを届けようと集中する。


「助かったぜ二人とも。ようやく抜け道を見つける事ができた」


「よ、良かったですわ、ウイック様」


「ありがとうな、アイナ」


 ウイックの胸に顔を埋めるアイナニナ、そっと抱き留めて頭を撫でているとセレーヌも近付いてくる。


「あれがヴァファムーアなのか?」

「ああ、そうだ」


「でかいな」

「それでアゼリエルは?」


「あいつはとっくに自我のみの存在になっていたからな、俺との接触でヴァファムーアに乗っ取られた体から離れる事ができたみたいだ」


「ではあいつは解放されたのだな」


 これで残るはあの大物のみ、ウイックが見上げる先には神聖樹と、その存在の大きさにも負けない暗黒竜よりも更に大きな丸い固まりが浮いている。


 丸い本体から十字に伸びる四本の触手がミル達を軽くあしらっている。


「ウイックよ」


「分かってるよ。今までみんなが俺に力を注いでくれた分、今度は俺がみんなの祈りに答える番だな」


 ウイックはまだ腕の中で泣きやまないアイナニナに唇を重ね、優しく力を注ぎ込む。


「やれるか、アイナ」


「は、はい! 任せてください。“セイントクラウン”、大いなる奇跡を!!」


 第二王女は全てを理解し天を仰いで、ウイックに語り続けたよりも強い祈りを捧げる。


 この辺り一帯は無数の魔物門から無数の魔物や妖怪が出現し、ウイック達が討伐、今も死骸が山となっていたが、アイナニナの祈りは聖なる奇跡を起こし、骸は土に還り、鮮やかな草木が新たな芽の息吹を上げる。


「次はシズ、俺の元へ」

「はい」


 ウイックの帰還を知った仲間が集まってくる中、シズと交わすキスは濃厚で、注がれるマナの量も半端なモノではなかった。


「感じます。今なら冥府の門も開く事ができそうです」


 シズはヴァファムーアのいる高さまで飛んでいき、どこから取り出したのか、煌びやかな装飾の施された鈴を両手に取り出し踊る。


「この“神楽の舞”で、貴方の邪気を払いのけて見せます」


 シズが放つ神聖なオーラは、大魔王の暗黒のオーラを呑み込み、全てを冥霊界の冥府の門に閉じ込めた。


「今度はウチの番や」


 ノアールがウイックの力を借りて巨大なバケモノを結界の中に閉じ込める。


「さぁ、ウチの呪いをとくと味わうとええわ。出といでや“パンドラボックス”!」


 結界内に呼び出したヴァファムーアに匹敵する無数の災厄が、大魔王の動きを封じ込める。


「貴方の魔力も奪ってあげる。“人魚の歌声”を聴いて眠りなさい」


 セイラの聞く者の全てを魅了する歌声は、癒しの効果を示すと同時に、意識を向けられた相手は気力を吸い上げられ、思考を停止させられる。人魚の世界に伝わる幻の業。


「これはすごいぞウイック=ラックワンド! これならあの方のお力もお借りできそうだ」


 エレノアが召喚陣を描き、現れたのは精霊界の神にも等しきモノ、“精霊王ラグーン”。


「彼のモノを大地に縛り付けてください。偉大なる父、ラグーンよ」


 召喚士の願いは聞き入れられ、ヴァファムーアは大きな砂塵を巻き起こしながら落下、地面に叩きつけられた。


「はあぁぁぁあ!!!!」


 ピューレが突進し、武器を変幻自在に操る。


「すごいよピューレ、“セブンスラッシュ”も使いこなせるようになったんだ」


 次々と武器の形を変え、一騎当千、無双乱舞で一瞬にして触手を切り刻んでいく。


「ウルアイザに伝わる究極の戦技、修行は続けてきたが体現できなかった奥義、今なら発揮できよう“トールハンマー”だ」


 アーチカはハンマーと叫びながら剣を振り下ろした。


 ヴァファムーアの電撃よりも強力な落雷で、大魔王の表皮は黒こげになる。


「お膳立ては万全のようですの、ワタクシもこれまでは着こなせなかった究極の術衣で、最後のトドメを刺して差し上げますの」


「待ってエル、僕も一緒に」


 エルラムは術衣“ウエディングドレス”を装着した。


 アンテもこれまでは使えなかったが、ワークボットに新しい換装パーツを合体させ、人の形をした人の八倍の大きさの巨人を誕生させた。


「まるでウイックさんそっくりではありませんのアンテロッテさん、すごく大きくて堅い、ウイックさんそっくり」


『君のそれはもしかして結婚式の衣装かい? 全く、気が早いにもほどがあるよ』


 巨大ゴーレムと膨大な法術を駆る二人の少女は、動かなくなった肉塊をミンチにする勢いで、巨大ミサイルと殲滅級の法術を叩き込む。


『なに? なんかおかしいよこいつ、エル! 注意して』


「な、なんですの? 体の真ん中から何かが出てきましたの」


 トドメを刺したはずが大魔王の中から現れたのは、筋骨隆々な人型、人種ひとしゅの三倍ほどの大きさの正に悪魔だった。


「まだアゼリエルの体を弄ぶのか、大魔王ヴァファムーアよ」


 セレーヌが涙し、旧知の友を偲んだ。

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