表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
182/192

29 目的は達成できたのに、厄災が復活しちゃった噺

「なぁ、お前」


「なんだ人間」


「……ニンゲンって何だ? どっかで聞いたな……。まぁいいや、お前はなんで大魔王を復活させたいんだ?」


「敵対する神を討つためだ。我々の運命を弄ぶ存在を滅ぼすためなら、この身を捧げるのも厭わない」


 右腕を失っても叫び声一つ上げない胆力に驚かされる。


 また、その信念も痛烈に伝わってくる。


「ああ……、ああ、あぁ……、ぎゃあーーーーー!?」


 ウイック達がディーフィンに気を取られている間に、ウイックの精神体から滲み出た黒い影が、そのまま体を呑み込み、高らかと上がる断末魔の悲鳴。


「ザモン、ようやく使命を果たしたのですね」


 大量の血がこぼれ落ちていき、影が形を成して現れた人影は、しかしウイックとは似てもにつかない長身の長髪、切れ長の瞳の男前。


「大魔王ヴァファムーア様」


 ディーフィンがその名を呼ぶ、確かに途轍もない魔力が男から溢れ出しているのを感じる。


 男の元へ跳んでいこうとするディーフィンだが、ノアールが結界に閉じ込め、動きを封じる。


「空間を跳べたって、結界の中からは出られへんで」


 左腕を振るい、結界を破ろうとするが、烙印の力で張った結界は簡単に突破はできない。


 男はゆっくりと目を開けると、右手で胸の魔晶石を掴み、自分の体ごとえぐり取ってしまう。


「えっ?」


 その場にいる誰もが息を呑む、手に取った魔晶石を大魔王ヴァファムーアは、粉々に砕いてしまった。


「今まで何をしてもビクともしなかった魔晶石を、握力だけで壊しちまったってのか!?」


「いいえ、あの手に込められた魔力量が尋常ではありませんの、さっきまでの紛い物とは格が違いますの」


 ヒシヒシと伝わってくるプレッシャーに、押し潰されそうになるエルラムと、そして!


「にゃーーーーーっ!?」


 全力を込めていた結界は、男が指を鳴らした瞬間に粉々に、パリンと音を立てて消えてしまう。


「お前が我を眠りから覚ましたのか?」


「はっ、ディーフィンと申します。ザモンと共に手を尽くしました」


 空間移動で大魔王の眼前まで来たディーフィンは、膝をつく姿勢でひれ伏している。


「やべぇぞ。勝てる気がしねぇ、逃げるか?」


 ウイックが体を取り戻した事で、一応こちらも目的は果たしている。


 ここで逃げ出したとして、誰もウイックを責めたりはしないだろうが……。


「逃げたいのは山々だが、ワタシは引くわけにはいかんがな」


「私もお供します、殿下」


 アーチカは帝国軍全軍を呼び寄せてでも討ち取る覚悟を決め、イシュリーも獣王の勤めとして、乱世を呼ぶ存在を見過ごす事はできない。


「ワタクシも一緒ですよアーちゃん」


「ワタシもだな。あれは我々の世界にも害成す存在だ」


 自分がここにいても役に立てるとは言える自身もないが、アイナニナにも護るべき民がいる。


 精霊界もそうだが、大海洋界に被害が拡がれば、多くの精霊が危険に見舞われてしまう。


 それにエレノアは大海洋界も救いたい。


 セイラもピューレもノアールもシズも、引くつもりはない。


「どうするのウイック? 僕も逃げるつもりはないけど」


「うん、私も! 全部ウイックに任せる」


 アンテとマニエルはウイックと共に逃げる事をアリと考えている。


「最初から引く気なんてないんでしょ? あんたも」


 全員の考えは分かった。


 ミルが言う通り、ここで知らん顔をしていいなんて、本当は微塵も考えていない。


「わかった。やろう」


 運命を弄ぶ神という存在も気にはなるが、目の前の厄災を取り除くのが先決。


 本当なら一度引いて、完全に回復してからにしたかったが、野放しにはできない悪魔に大魔王。


 ディーフィンはウイックが抑える事ができそうだが、全員係でも取っ掛かりすら見えてこないヴァファムーアを、どの角度から切り崩していくか?


「魔晶石をかき集めて復元するってのはできねぇかな?」


「建設的ではないね。あの石は純粋な結晶体だったからね。集めたところでどうにもならないよ」


 アンテはウイックの“復元ふくげんの秘術”が、そこまで万能ではない事を知っている。


「そこなんだがよ……」


 まだ大魔王に動きがない。


 おかげであれやこれやと相談する時間がもてたのだが、業を煮やしたディーフィンが前に出てくる。


「いくぞ! みんな」

「はい!」


 ウイックは部隊を二つに分けて、迎撃を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ