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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
181/192

28 驚きの伏兵に、秘術士は目標達成を阻まれるのでは? という噺

「なぁ、アンテよぉ」

「なんだいウイック」


 ワークボットで次々発生する魔物門を消し去り続けていたアンテに近付き、彼女を手伝いながら相談を持ちかける。


「この体じゃあやれることがしれている。どうにかプロテクターを装着したいんだが」


 プロテクターの装着転移装置は向こうの精神体の腕に付いたまま、あれさえあればアイコの補助も受けられて、戦闘の幅がグッと拡がる。


「ああ、君に今渡そうと思っていたところだよ」


 ミルが遠慮なくウイックの体を切り刻み続けているうちに、腕から外れて落下してきたユニットをアンテは拾っていた。


「使い方は覚えているよね」


「もちろんだ! けどなんでこんなにユルユルなんだ?」


 直ぐに装着する女ウイックだったが、どうにもしっくりこない。


「そりゃそうさ、元々男のウイックの為に作った物だからね。アイコ、調整してあげて」


 AIのアイコは制作者の命令を実行に移し、間もなく女ウイックの体にプロテクターがフィットする。


「これほどに便利だったなんて思わなかったぜ。サンキューなアンテ、それにアイコもな」


 女ウイックは大量のミサイルを放出し、スラスター全開でミル達がいる空域に昇ると、AIは新たな装備の使用可能を報せる。


「れーるがん?」


『はい、理力弾を電磁加速をして撃ち出します。スピードを増し、威力も数倍になります』


 物干し竿のように長い筒状の銃を両手で支え、脇に抱えて構えを取る。


『ウイック、今の君の理力量ならコンバーターも耐えられる。思いっきり撃っちゃって』


 アンテのアドバイスを受けて、ウイックは全力で理力をレールガンに送り込む。


 照準はAI任せ、レッドシグナルがグリーンになるのを確認したところで引き金を引く。


 飛び出すエナジーは全力全開の秘弾ほどの大きな束ではないが、威力はそれに匹敵する。


 低級悪魔共を薙ぎ払い、理力弾はザモンに届く。


「やったか?」


 着弾した際に高熱が空気を膨張させ、水蒸気が煙になって視界を奪う。


「落ちない? まだ足りないのか?」


 次弾のために理力の注入を開始しながら、煙が晴れるのを待つ。


「だ、誰だお前?」


 ザモンの前に立つ黒い翼を拡げる女、ただならぬ魔力を垂れ流している。


「魔力障壁……」


 ザモンが操るウイックの精神体は無傷、どうやら女は悪魔の仲間のようだ。


「まったく、貴方は調子に乗りすぎですよザモン」


「ディーフィン、お前は隠れて俺をフォローするのが役目だろう」


「やはり貴方は愚か者ですね。あの攻撃が遠くから張った障壁で防げたと、本気で考えているのですか?」


 赤い髪の悪魔はザモン同様の上級種。


「まぁいい、お前が隠れている必要はもうないからな」


 ディーフィンの役割は下級悪魔の召喚と、ザモンへの魔力供給。


 その為に次元の壁の向こうに待機し、密かに役目を果たしていたのだ。


「さっさと仕上げに入りなさい。その間は私が遊んでおいてあげるから」


 充填が完了したレールガンがまたも爆煙を上げるも、言うまでもなく障壁を抜く事はできない。


「くはっ!?」


「あなた、あまり戦い慣れていないわね。こんな単純な手にかかるなんて」


 ミルのフランシュカが横一閃、胴を上下に別けられ、ディーフィンは落下していく。


「危ないぞミル!」


 女ウイックの警告がなければやられていたかもしれない。


 落ちていくディーフィンの上半身を目で追っていたミルは、宙に残っていた下半身に警戒を怠った覚えはない。


 ただ攻撃が思っていなかったところから襲ってきた。


 その為に対応が遅れそうになったのを、ウイックに助けられたのは感謝しかない。


「あ、ありがとう、正直言って驚いたわ」


 切り落としたはずの上半身が元の場所に戻っている。


「確かな手応えがあったんだけどね」


「貴方が斬ったのは空間の歪みよ」


 直感で構えなおした剣が何かを受け止め、更に危険を感じて距離を取る。


「あら、いい勘してるじゃない」


 彼女が手を払った動きで、何かが空気を切り裂いた。


「お前、次元跳躍能力者か?」


「へぇ、一目見ただけで見抜いたっての?」


 本気で感心したように目を輝かせるディーフィンは、女ウイックの目の前に瞬間移動する。


「じげんちょうやくって、何よウイック」


 ミルが飛んできて悪魔を払いのけ、秘術士の横に並び、質問を投げ掛ける。


「今、この姉ちゃんが跳んできたのは、俺達が使っている転移術とは全く違う能力でなんだよ」


 転移秘術や魔界門などの術式で移動するというのは、時間を掛けずに移動ができるというものだ。


 だが女悪魔の跳躍術は、空間を歪める事で点と点を結びつけて、すり抜けてくる能力。


 二つの点を繋ぐ事で、体の一部を別地点に飛ばす離れ業も可能にしてしまう。


「俺がイメージしながら、未だ実現できてない術だ」


 異空間ストレージを見た時に思いついたのだが、ウイック=ラックワンドをもってしても、実現には程遠いと思われた能力を操る者がここにいる。


「そうか、空間を抜けるんじゃなく、歪ませるという考え方か」


 僅かな問答の中から、ヒントを見つけようとするウイックに危険なニオイを感じ取り、ディーフィンは手を横に払うが、男は、いや女秘術士は軽く身を翻し、見えない攻撃を躱した。


「歪めた空間を手で押し出してんだろ? どんな刃物よりも切れ味は抜群って触れ込みで売れそうだな」


 完全に見抜かれ、続いて驚きの反撃。


 想定外であったため、ディーフィンは右腕を無抵抗のうちに切り落とされてしまった。


「やっぱりぶっつけ本番じゃあ上手くいかないか、首を刎ね損ねたぜ」


 自分の特異能力を盗み取られた悪魔は、あまりの衝撃に動きを止めるが、トドメを刺される前に、そいつは覚醒を果たした。

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