27 消耗戦は人には不利な事だらけと実感する噺
少女達の乙女としての能力は健在。
しかし今のウイックは、不死身の再生能力を失い、無尽蔵に沸いてきていたマナも使えない。
「秘術は使えるが、エネルギー源を無くした状態じゃあ、秘弾みたいなデカイ術は一発が関の山だろうな」
「それならこれ、使ってください」
シズが取り出したのは、エルラムが使用している術衣と同じ物。
「これを俺が着るのか?」
「下着も併用できますよ」
ウイックに女装趣味はない。
だが既に戦闘を再開しているミル達は、いきなり沸いて出てきた大群に少し苦戦気味。
「背に腹は替えらんねぇか」
しかし流石に抵抗が大きく、ウイックは着替える前に“性換の秘術”を使った。
平民服を脱ぎ、ウイックは“ぶるまぁ”を下着込みで着用した。
「くそ! この羞恥、あいつを切り刻んで償わせてやる」
女ウイックは今までと違い、始めて内包するマナを掻き集めて、“光束の秘術”を使えるだけの理力を生み出した。
「ちっ、こんなんじゃああいつに届かねぇか」
ザモンは配下のブラスデーモンとレッサーデーモンを盾にして、己は封印解除のための魔力を溜め続ける。
「攻撃を当てるだけでいいんだ。魔力を消費させるんだ」
アーチカが奮起を促すと、理力を込めた剣で低級悪魔達を次々と切り伏せていく。
セイラの補助術で切れ味を増した剣は血糊も残らず、ロングソードが煌めきを曇らせる事はない。
エレノアもセイラに並び、地の精霊に働きかけ、空を飛べない前戦メンバーに足場を与え続ける。
マニエルは竜変化をしてドラゴンブレスを連続使用、エルラムも大技を放つ。
ピューレは二本の武器を両方大釜にし、つなぎ合わせた物を力一杯振り回して、ザモンに続く道を作っていく。
「行って! 二人ともお願い」
大釜を分離して両手持ちで、穴を埋めようとしてくる敵の足止めを始めるピューレの横をすり抜けて、ミルとイシュリーは全力でウイックの顔をした悪魔を一刀両断、内蔵を破裂させる。
「本気出していいのよね?」
「ああ、聖光気で魔晶石を取り押さえても意味はねぇ、今のうちに石ごと完全にぶっ潰しちまえ」
体を縦に両断したのに傷一つ付いていない魔晶石。
石はマナの枯渇を招いたら、その強度を保てなくなる事を知っているウイックが、ラッシュを仕掛けるよう指示する。
ヤツが儀式のためにマナを集めている今なら可能だろうと、数を減らし多デーモンの隙間を塗って、女ウイックの光束をヒットさせる。
秘術士の攻撃を嫌ったザモンは、再び盾役を増加してくる。
「よし、焦りが見えるぞ。もっとマナの無駄遣いをさせるぞ」
肩で息をするアーチカは引き続き小物を相手にするが、使い捨てにされているが仮にも悪魔族、一撃一撃の疲労感は半端ではない。
「アーチカ殿下、回復します。一度下がってください。ピューレ、援護しなさいよ」
「偉そうにすんじゃないわよセイラ! それとなんで私は回復してくんないの?」
「あんたはまだまだ元気でしょ、前の5人はもっと大変なんだから」
分かったわよと不承不承に武器を一本持ちにし、長刀の高速突きで目の前の悪魔を、あっという間に片付けてしまう。
「か、回復はいいから食べ物よこしなさいよ」
「もしかして、自分のお弁当……」
「そんなのとっくに食べちゃったわよ」
みんなの三十倍はあった補給を食べ尽くしたピューレに、まだほとんど手を付けていない自分の分を全て渡すと、セイラはアーチカの疲労回復にあたる。
攻防は均衡を崩せず、少しは遅延できているのだろうが、ザモンは少しずつ魔力を高めているようだ。
「た、確かに術衣のおかげで、理力供給は万全だけど、俺自身がこんなに理力操作が上手くいかなくなるなんて」
試しに“秘弾の秘術”を一度使ってみたところ、エルラムのブラスト・レイと同じほどの威力しか出せず、たった一発で体内マナ残量も満タン近くから、一気にほぼゼロになってしまう。
「それが普通だと思うぞ、ウイック=ラックワンド」
精霊のコントロールをするエレノアが苦笑いを浮かべ、回復薬を女ウイックに渡す。
瓶を丸々一本飲み干せば、確かに理力は回復できる。
だが体に残る疲労感はアーチカ以上。
「ウイックさん、私が体力を回復しますのでお待ちください」
シズが背中側に回り、女ウイックの胸を鷲掴み。
「ちょっ、ちょっと何してんだよシズ!?」
「あっ、いえ、……回復ついでに、いつも私達を触っているウイックさんの気持ちを知りたいかなぁ~って」
確かに体は女だけれど、性感帯が男の時と変わっているわけではないので、女ウイックにはただただくすぐったいだけ。
シズの方は初めての感触にやや興奮気味のようだが、ちゃんと仕事はこなしてくれて、ウイックは完全復活を果たした。




