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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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26 大魔王様、奴らに正体がバレたようです! という噺

 右手をイシュリーが、左手をアンテが掴み、ウイックの手を自分の体の感じやすいところに持っていく。


 背中に張り付いたマニエルがワンピースをめくって、地肌を晒して密着する。


「ちょっ、ちょっと皆さん、ワタクシが出る幕がないではありませんか!?」


 四人に隈無く取り付かれ、はみ出し者のエルラム。


「いいでしょ、あんた最初にキスしたんだから」


 背中側にへばりつくマニエルに毒づかれ、膨れるエルラムはそっちのけで、四人はそれぞれにウイックのツボを抑えた行動を取る。


 足掻く大魔王は逃げ場を探る、その足下で変化が生まれる。


「ウッくんさん!」


 手持ちぶさたになったエルラムが向かうと、シズが蘇生術を開始していた。


 どうやらウッくんの霊糸を見つけて、呼び戻す事に成功したようだ。


「もう平気、ですの?」


「はい、しばらくは目を覚まさないかと思いますけど、蘇生術は成功です」


「よく頑張りましたねシズ」


「いえ、エルラムさん。全てはウイックさんのおかげです」


 アイナニナの祈りもノアールの呪術ももう必要ない。


 自身の生命活動で、整った呼吸を取り戻している。


「きゃあ!?」


 声の主は上空の四人の少女達。


「何がありましたの?」


 降ってくる四人を、どうにかセイラ、ピューレ、ノアール、エレノアが落下前に受け止める事に成功した。


 上空には大魔王を自称する、魔族の翼を持つ男が見下ろしている。


「ふざけた事をしてくれる。だがこれも余興としてなら笑える話だ」


 両手を拡げ、失った魔力を魔晶石から回復させていく魔王。


「くそっ、結局奪えなかったか」


「ウッくん様?」


 魂魄が定着したのか、覚醒したウッくんはしかし、どうにも様子がおかしい。


 アイナニナが不思議そうに顔を覗き込ませると、ウッくんは彼女の頭を抱え込み、軽くキスを交わした。


「あ、あの!?」


「はははっ、目覚めのキッスってヤツだ。ビックリさせたか?」


 体を起こして立ち上がると、ウッくんは頭上の自分と同じ顔をした敵を睨み付ける。


「ウッくんはん、そんないきなり動いたら、体に悪いで」


「ノア、わりぃが俺はウッくんなんかじゃあねぇ。いや、ウッくんなんて元々存在していねぇんだ」


 その喋り方は確かによく馴染んだウイックのもの、なんだか訳知りの様子だが。


「なんも分かっちゃいねぇよ。ただあのもう一人の俺は、言わば幻影みたいな存在だったって事は分かる」


 術を始めた瞬間、自称大魔王はその時を狙っていた。


「術は成功したんだぜ。肉体は復活して、後は精神体と融合すれば万々歳だったのによ」


 だが勝負に勝ったのはウイックではなかった。


「消し飛ばしたはずが、本当にしぶといゴミ虫だな」


 大魔王がウイックの前に降りてきた。


「貴様みたいな人格が生まれなかったら、こんな苦労もなかったのにな」


 秘術士を睨み付けて、大魔王は魔弾を放つ。


「させない!!」


 大剣を手に、ミル達も降りてきてウイックに並ぶ。


「お前等がウッくんなどと呼んでいた疑似人格が、ちゃんとその体を育てていれば、俺が手を下す必要もなかったのにな」


 ウイックの体がホムンクルスであるのは事実、その創造時に作られたのがウッくんという疑似人格であり、今のウイックは魔晶石が干渉したために生まれたイレギュラーなのだ。


 自称大魔王は、この魔晶石に支えられた体を手に入れるために策を講じた。


「そやつの名はザモン、デーモン族の低俗悪魔よ」


「セレーヌ、いいのか俺達に関わって?」


「話せる事は限られるがな、この場は立ち会わせてもらおうかの」


 正体を暴かれて動揺する悪魔ザモン、大魔王ではない事はとっくに見抜かれているが、本人はまだこのまま押し通せると思っていたらしく、冷や汗が止まらない。


「ま、まさか魔女が禁忌を犯すとはな」


「完全に摂理を逸脱した者に言われる筋合いなどないわ」


「ま、まぁいいわ。俺の中に残っていた邪魔者は追い出した。いまこそ念願の使命を果たすのみ」


 ザモンは自前の魔力を全力で発揮し、足らないマナを魔晶石から補い高める。


「まずいな。あいつの目的ってやっぱり本物の復活だよな」


「恐らくはそうであろうな。妾は手伝えんが、あれを呼び起こすことを見過ごす事もできん。ならばせめて烙印の乙女として祈りを捧げようぞ。それともう一つ、お主はお主を育てた者を最後まで信じるのだぞ」


 謎の言葉を残し、セレーヌはまた目の前からいなくなる。


「ねぇ、ウイック。もしかして私達、余計な事したの?」


 事態をようやく理解したミルが小声で問い掛ける。


「いいや、誰かの所為って話をするなら、俺が一番悪い。ミル達はやれる事を精一杯やってくれたんだ。だからもう一踏ん張り、目一杯に手を貸してくれ」


 今のウイックに無敵の体はない。


 無限のエナジーを供給する魔晶石もない。


 もし大魔王が復活すれば、同じ封印術が効くとも限らないし、そもそも

その方法を知らない。


 他の手段を、直ぐに見つける事もできないだろう。


 世界の危機は、先日の魔物門大量発生の比ではないだろう。


「この局面で俺がどれだけの事ができるか分かんねぇが、やるしかねぇだろ?」


 ザモンは恐らく我が身を生け贄として、最後の封印を解こうというのだろう。


 メダリオンがそれぞれの乙女の烙印を刻んでいる事で、イニシアチブはまだこちらにあるはずだ。


「ヤツが封印を解くまでの僅かな時間に、魔晶石に護られた精神体のガードを抜いて、ザモンを消滅させられれば、俺達の勝ちだ」

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