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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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24 大魔王の復活、烙印の乙女の憤りの噺

「だ、大魔王ぉおーーー!?」


 その名を知らぬ冒険者などいない、大魔王ヴァファムーア。


 そんな名前をこんな状況で、面白半分で持ち出すなんて事を、ウイックがするはずがない。


「本当に大魔王なの?」


 色々疑問が多すぎてなんだが、今はそれどころではない。


「傷、塞がりました。エレノアさん、お願いします」


 アイナの治癒術で腹部の穴は塞いだ。


 大量の出血が見られたので、精霊の加護を受け、失われた血液を甦らせる。


「ショック症状は落ち着きました。呼吸も正常です」


 肉体的な回復は即座に完了した。


 大神官が大きな神殿で、術式法陣を用いてもそれなりの時間が掛かる儀式を、しかも略式で簡単にやってのける。


 これも烙印の乙女としての能力向上の恩恵だが、ウッくんが覚醒する様子を見せない。


「だめですアイナ様」


「どういう事ですか、シズさん?」


「魂魄が、ウッくんさんの魂が体の中にいません。これでは体の方も術を解いた途端に死んでしまいます」


 シズは霊糸を探すが、体の中にはどこにも見当たらない。


「ウチが体の衰弱を抑えるから、シズは早くあの子の魂を見つけたってや」


 ノアールがエレノアに代わり呪術を行使する。


「はははははっ、あははははぁあ!」


 皆が慌てふためく様子を嘲り、大笑いの自称大魔王。


「無駄だ無駄だ! そいつの魂はもうこの世にはおらんぞ。俺が消し飛ばしたんだからな」


 放置されていた魔王に注目が行く。


「そ、そう言えばウイックは? 彼はどこにいるの」


 ミルはミレファールを取りだし、呼応して前戦メンバーが臨戦態勢をとる。


「いいな。そう言う反応が欲しかったところだ」


 言動を見ていると、ウイックが悪ふざけをしているようでもあるが、気に障る事この上ない。


「何が大魔王ですか? そのような粗末なマナ保有量で、大それた大風呂敷をよく拡げられたものです」


 ウッくんの事はアイナとシズとノアールに任せ、ウイックの安否を心配する少女達は魔王の前に立つ。


「マナだと? そんなもの魔晶石があれば、俺自身が無駄に消費する必要もなかろう」


 ローブとシャツを脱ぎ、魔晶石から魔力を放出する。


「そんな事より答えなさいよ。ウイックはどこ?」


「元の宿主か? そんなのそこの男と一緒の末路に決まっているだろう」


 その答えを最後まで聞く前に、ミルは動き出した。


 自称魔王の右腕を切り落とし、腹部を貫く。


「なっ、何しやがる!?」


 突然の奇襲に対応しきれず、体を破損する魔王だが、ウイックの体質は掌握しているようで、直ぐに回復し、後ろに跳んで距離を置く。


「ま、まだこの体に馴染めていないか……。だがなかなかに便利な体だ。痛みがキャンセルされないのが問題ではあるがな」


 背中に魔族がよく有している漆黒の翼を生やして宙に浮き、魔力弾を足下に放つ。


「この程度! 随分と講釈がお得意のようですが、やはり魔王と嘯くには粗末が過ぎますの」


 体が馴染まないなどと言い訳じみてはいるが、どうにも納得がいかない。


 エルラムは法術弾で対抗すると、相手も魔弾を放ってくるが、相殺しきれずに大魔王は被弾する。


「全く、この体は予定外に出力が出しにくい。たかがホムンクルスが体質をここまで好き勝手弄っていようとはな」


 辺りを聖天使と法術士、竜人に囲まれ、焦りを隠せない自称魔王は気になるワードを口から漏らす。


「ホムンクルス?」


「そうか、知らないのだな。この体がなぜ魔晶石を受け付けられたのか、考えれば普通ではない事くらい、直ぐに分かりそうなものだがな」


 確かに普通の人の体で扱える理力量ではない事は、ミル達にも分かっていた。


 だがそれも母であり、希代の名工錬金術師、マーリア=ランドヴェルノの技術の賜と思い込んでいたのかもしれない。


 もし何らかの秘密があるとしても不思議ではない、と。


「イザエナルなる堕天した愚か者が用意したものだ。この大魔王様復活の為に尽力してくれたが、功を焦って天上界に魔族を招き入れるような愚行をしていなければ、今も飼い慣らしてやっていたものを」


 復活のためには魔晶石を受け入れる器が必要だった為、メダリオンの封印力が薄まって思念波を扱えるようになった大魔王は、手頃な手駒として天使イザエナルを堕天させて、準備をさせた。


 その堕天使が暴走したために、聖天使エヴァマラーラは大海洋界に落ち、そうしてミルが生まれたのだが、そこで手駒を失った事で、魔王が望まない形でウイックは育ってしまったのだ。


「そんな事は些末な事だ。そこの死体になった男と、お前たち烙印の乙女がじゃれ合ってくれた事で、マイナス思念に染まった邪魔なホムンクルスの自意識を、簡単に消滅することもできたしな。後は俺がこの体を使いこなせるようになれば、完全復活という事だ。さぁ、闘おうぞ乙女達」


 神話の後の時代に人によって封印され、メダリオンによって永い眠りに付かされた大魔王は、そのメダリオンの力を逆に利用し、素体となるホムンクルスの能力向上に使ったまでは計画通り。


 後は計算外に理力寄りに偏った術士の体質を、魔力重視に傾けるために実戦で調整するまで、戦いの幕は切って落とされた。

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