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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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23 ダンジョンは多彩な冒険で、少女達を待ち構える噺

「姫様! 後ろです」


「なに!? くっ、イシュリーすまない、そっちにいった」


 二人は右へ左へと、更には金銀のゴーレムも必死に走り回り、足下から壁、天井を目掛けて剣で斬りつけ、拳を打ち付ける。


 二人の足下で高速で移動する影。


 敵は地面の下、壁の向こう、天井の上を縦横無尽に動き回り、時折アーチカ達のいるフロアに顔を出して気弾を放ってくる。


 この階層主は蛇のように体は長く手足もない。


 頭は膨らみトカゲのようで、あちらこちらと鋭利に尖っている。


 その体を活かして、勢いをつけて槍のようになって、突撃攻撃をしてくる。


「すばやいな。それに気配を感じられないというのが厄介だ」


 攻撃の際、体が出てくれば気配も感じることができる。


 回避は可能だが、攻撃を当てられないのが一番の問題だ。


 階層主のいるこのエリアにはかなり順調に進んで来れた。


 ここでこんなに手こずるとは思わなかった。


「うぉっ!?」

「ウッくんさん!」


 敵はどうやらこちらの動きの振動を関知している様子で、近接戦闘で動き回るアーチカやイシュリーはもちろん、狙いを定めて銃で牽制しているウッくんも攻撃を受ける事があった。


「いや待て、ヤツが捉えているのは我々の動きの震えだけではないぞ。あやつ、ライアとアイラを攻撃する頻度があまりに低いのが気になる」


 飛び回るライアはそれなりに襲ってくるが、足を止めて後方支援を主体とするアイラには、ほとんど何も仕掛けてこない。


「お、俺、ジッとしてても、たまに向かって来られるんだけど……」


 二丁の銃を構え、最低限の動きで引き金を引いているだけのウッくんへ、動き回っているうちに側まで接近すると進路を変えて襲ってくる。


「なるほど、ヤツは生き物の体温か何かを関知しているのだな」


 憶測でしかないが、その可能性は高いように思える。


 それならば決め手は、二体のゴーレムにある。


 アイラの精霊術の援護を受けて敵を追い込んでもらい、ライアは空中で方向を変え、チャンスを窺う。


「我々もヤツを誘い出すぞ」


 アーチカの指揮の下、イシュリーは獣王拳を繰り出し、全力で壁や床を殴り割る。


「姫様、これって?」


「ああ、そうだな。ヤツは陥没した箇所を通る事はできんようだ」


 割れたところを避けて移動する影を追いつめるために、イシュリーはドンドン壁や床を割っていく。


「よし、今だ!」


 アイラは敵の頭に目掛けて雷の精霊術を叩き込む。


 巨大蛇は天井に逃れるしかなくなっていたが、まんまと誘導されて雷の直撃を受けたモンスターは空中に放り出される。


 目前まで迫る金のゴーレムには反応すらできず、気弾も吐き出す事もなく、ライアは蛇の頭部に踵を落とした。


 意識を失ったのか? 今まで真っ黒だったボディーは褐色になり、口からは階層を抜けるための鍵が吐き出されている。


 アーチカ達は奥に進み、階段を下る。


「ごめんな。また俺は全然活躍できなかったな」


「何を言ってる、見事な援護射撃、見事な牽制、見事な囮を果たしたではないか。我が帝国新兵では決して、あの様な働きはできなかったぞ」


「そうですよ。ウッくんさんの動きは冷静で的確でした。本当に助かりましたよ」


 階段を下る三人、急に辺りが光に包まれ、立ち止まってしばらくすると光は静まり、アーチカ達は等間隔に並び、円陣を囲んで立っていた。


「ここは……、もしかして?」


 ついさっきまでダンジョン内にいたはずなのに、見上げれば神聖樹がそそり立ち、巨大な魔物門が禍々しい赤い光を放っている。


「あの魔物門か?」


 そこにはセレーヌの姿もあり、どうやら儀式の最中であるようだ。


 光は中心に向けて収束していき、中心には人影が二つ。


「もしかして今まで幻惑を見ていたというのか?」


 中心に立つ二人は、一人は白いオーブを着た冒険者のウイック=ラックワンド。


 そしてもう一人は平民服を着た……。

「えっ!?」


 ウイックの顔をした男が串刺しになっていた。


「ウッくんさん!」


「なにが、なにがあったのだ!?」


 驚きの声を上げたのは、アーチカとイシュリーだけではない。


 ここにいる13人の少女、いや動揺していない一人を除いた全員が中央に走り寄る。


「ふふふ、ははは、だぁーはははっ」


 突然大声で笑い飛ばすのはローブの男。


「どういう事なのウイック、これはいったいどうなってんの」


 ミルが歩みを進めると、その足下に秘術の炎が行く手を阻む。


「ウイック!?」


「ウイックか、確かウイック=ラックワンドと言ったか? 13枚のメダリオンを集めたわりには、力が足りんようだが、貰い受けるのには悪いタイミングではないな」


 笑いが止まらないウイックは、血塗れのウッくんの体を掴み、ミルの元へ集まってくる少女達の元へ投げ飛ばした。


「さぁ、喜ぶがよい、この大魔王ヴァファムーアの復活の場に居合わせた事を!」

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