22 意外な弱点発覚、克服への道のりは厳しい噺
ピューレは黙々と襲い来るモンスターを倒していく。
どうやらここはカラクリ仕掛けを一つ一つ解いていかないと先に進めないようで、知恵を絞り、謎解きをしていくエレノアが、
頭の柔軟性も知識も足りないピューレを下に見て小馬鹿にしたものだから、一気に場の空気が悪くなり、二人は言葉を交わそうとしなくなった。
「えーっと……、ごめんなエレノアさん」
「貴様はウイック=ラックワンド同様、ワタシの事をエレンと呼ぶ事を許しただろう」
「ああ、うん、エレンさん。悪いな俺も謎解きの役に立てなくて」
「なに、貴様はちゃんとマッピングをしてくれているではないか。助かっているよ」
また一つ謎を解き、扉を開くとフロアの真ん中には大きなボールが一つ。
「なんだこれは?」
今までは何かしらのヒントや謎かけが書かれたメモがあったが、ここには何もない。
「このボールを使って鍵を見つけるってことじゃないの?」
モンスターが出てこなかったのでやる事のないピューレも、少しは役に立とうとエレノアに近寄ると、召喚士はボールから手を放して遠ざかる。
「いったい何なのよ。そりゃ私は謎解きの役に立ってないかもしれないけど、避ける事ないでしょ」
「あ、いやそう言うわけでは……、えーい、悪いな。気を悪くしているのは分かっていたんだがな。その、なんだ、ワタシはな、トカゲが苦手なのだ」
目を背け、さらに距離を置くエレノアを見て、ピューレは不敵に笑う。
「そっか~、それはしょうがないよね。けどそれってちょっと悲しいな。ねぇ、仲良くしようよ」
意地悪くほくそ笑むと身体能力を活かして、有無を言わさず精霊召喚士に抱きついた。
「ぎゃーーーーーあ!?」
「そこまで嫌がるぅ。あははははははっ、あーはははぁ……」
いつもは澄まし顔の年長者は本気で暴れるが、体力自慢の爬虫人もとい、ラティアンのピューレから逃れる事は適わない。
「や、やめてくれ、頼む、ちょっ、ちょっとだけ、いや、本当に、まって、いやいやいや」
こんな風に青い顔をされては、流石に気の毒になるピューレは、素直にリリースする。
「なにがそんなにダメなのよ」
「ああ、いや、これはただのトラウマなのだ。まだ精霊界にいた時のな」
エレノアは二十歳を迎える数ヶ月前、王都ラクシュにほど近い森を抜けた山岳地で、人を襲う魔物が現れたとの報告を受け、討伐に向かった騎士団を統率していた。
「ワタシの指示ミスでな。騎士団は全滅、全員がオオトカゲの毒で石化されてしまったのだ」
後に女王ティーファ自らが戦闘に立ち、見事に問題を解決、石化された兵も無事に救助されたが、石になっている間の忌まわしい記憶が甦る。
「オオトカゲが獲物を石化するのには意味がある。ワタシ達は子供トカゲの餌にされたのさ」
石化したメルティアン達の体中を、無数の生まれたてのトカゲが這いずり回った。
「生命力が石になった体から染み出してな、それを子トカゲに嘗め回されて、養分を吸収されて、時間を掛けてジワジワ体力を奪われ死んでいくのだ」
石化しているのに全ての感覚はハッキリしていて、眠る事もできず、ずっとトカゲが這い回るのを肌に感じていた。
「ダメなのだ。その質感が、目で見ただけで鳥肌が立ってしまう」
ピューレがどうとかではなく、爬虫類の肌が既にアウトなのだとカミングアウトされる。
「だから、その……」
「事情は分かった。意地悪をして悪かったわ。けど」
ピューレはゆっくりとエレノアに近付く。
優しい表情のラティアンは、及び腰のメルティアンの前に立つ。
「あ、ええ、あ……」
ピューレは両手を出して、エレノアの右手を握った。
「私はトカゲじゃあない。この手は人種のと一緒でしょ? 手首から肩まで三分の一は鱗になっているけど、人肌と一緒の肌触り、私は貴方の養分を奪ったりしない」
理屈ではないのだ。
だが確かに、人と同じスベスベとした手の感触に、エレノアは顔を上げてピューレと目を合わせる。
「鱗だって慣れるんじゃない? ちょっとずつ、私がつき合ってあげるから、だってチームの参謀様が弱点を克服できないなんて、士気に係わるでしょ?」
そこまで言われては、苦手をそのままにはしていられない。
「そうだな。ヨロシク頼むぞ。……そんなに焦らなくても、ゆっくりでいいよな?」
エレノアは左手も出し、両手で握手を交わしたのだが、左手が手首の鱗に触ってしまい、体を強ばらせる。
「見つけた!」
少女達が親交を深めあっている間、一人黙々と謎を解く鍵を探していたウッくん。
幾何学模様と同化した天井に隠されたスイッチを見つけ、手の届かない場所へボールを投げ、ボタンを押して解錠した。
「やるではないか! なぁ、ピューレ」
「本当、頼りになるじゃない。流石はウイック=ラックワンドよね」
後いくつの謎を解けばいいのかは分からないが、扉の向こうから現れる魔物達は、ピューレが七変化する武器を駆使して駆逐していく。
「それ、すごいよな。アンテの作品なんだろ? よくこんな事を思いつくよな」
絶賛のウッくんだが、賞賛に値するのはピューレも同じ。
「こんなの使ってて、頭がこんがらがったりしないのか?」
「私が住んでた集落わね、娯楽という物が一切なくて、ただみんな本能のままに生きているだけって、つまらないところだったの」
ピューレがあそこから抜け出したかった一番の理由。
刺激を求めてやまない少女は、念願適って冒険をしていく中で、色んな見た事もない道具に触れ、学んでいった。
「そこで適正があるって、アンテが私専用の武器を作ってくれたんだ。私に合わせて作られた武器だもん、使いこなせて当然じゃない」
個々が己の武器を駆使し、ここから3つの扉を抜けた場所で、階下への階段を見つける事ができた。




