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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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21 錬金術師の男は空気が読めない噺

 ウッくんは気まずい空気に耐えきれず、ひたすら土下座を続けた。


「もういいから、本当に最初から怒ってなかったから」


「けど、傷つけたのは俺だってちゃんと分かってる。女の子にあんな失礼な事を言って、しかも直ぐに謝りもせずに、こんな事じゃあ許されないのは分かってるから」


 アンテはバックパックのサイドアームを使ってウッくんを起き上がらせた。


 二人の前ではマニエルが一人で奮闘している。


「もう! 済んだんなら、サッサと手伝いなさいよ」


 大きさとしては子犬から熊サイズの昆虫を相手にかぎ爪で切り裂き、尻尾で叩き潰し、ドラゴンブレスを吐き、忙しくしている中、二人が不毛な遣り取りを続けるのを一括して止めさせた。


「って、マーニーその手、えっ? 尻尾? な、何がどうなってんだ?」


「ああ、言ってなかったわね。ウッくんの世界の私は普通の女の子なんだね」


 このパーティーには戦闘向きの子と援護支援専門の子がいる。


 ウッくんは勝手に妹と親友は、戦闘はしないと思いこんでいた。


「アンテ、君の術具もすごいよね。こんなすごい錬金術師になっているだなんて、驚きが隠せないよ」


 マニエルの竜化体質の説明を受け、アンテのバックパックの事も教えてもらった。


「へぇ、戦争が技術を向上させるって言うのは本当だったんだな。やっぱり俺は早く元の世界に帰りたいよ」


 錬金術師として学びたい事はいっぱいある。


 だけど生活向上以上の事が求められる世界には、自分は向いていない。ウッくんは心の底からそう思った。 


「俺なんて酔っぱらった勢いで、男だと思っていたお前に、求婚しちまうくらいが調度いいよ」


 何気なく言ったつもりだった一言が、戦闘を継続中の少女達の手を止めさせた。


「お、おい! あぶないぞ!? ど、どうしたんだ二人とも?」


 ウッくんの援護射撃が二人を救うが、どうも様子がおかしい少女達は、急に殺気だって目の前の敵を、あっという間に殲滅させた。


「どういう事よウッくん!」


「ねぇねぇ、どういう意味なの? 詳しく聞かせてよ」


 言い詰め寄られ、たじろぐウッくんは、自分の発言の何が引き金になったのかを思い返す。


「もちろん冗談だぞ。なんせ俺はアンテを、アンテロッサを本気で男だと思っていたんだからな」


 アンテが成人した時に重大な発表があると、マーリアから聞かされてはいるが、その内容は暖簾分け、新店舗開設だと確信していたから、本当に飲酒による勢いの言葉だったのだ。


 アンテロッテが女であるなどとは夢にも思っていなかった時の。


「けど、もし女の子なら結婚したいって思ったって事でしょ?」


「お、俺は女友達もいないからな。錬金の修行ばかりで遊び回りはしなかったから。アンテは小柄で小顔で、眼鏡外すとマジで美少女って感じだったから、その……」


 頬を朱に染めて喜ぶアンテ、不機嫌極まりない膨れっ面のマニエル。


「えっ、あれ? どうかしたか?」


「しらない!」


 このフロアは迷路のようになっていて、先へ進むとまた新たな敵が現れ、二人の働きっ振りや、後方支援射撃を任されているウッくんの出番はまるでなく、やれる事と言えばマッピングくらいのものだったのだが。


「ああ、いいよいいよ。マッピングならアイコがしてくれてるから」


「アイコ?」


「うん、僕が作ったAI、人工知能の名前だよ」


「AI? 人工知能?」


 アイコはウイックのプロテクターの制御装置に組み込んだ人工知能プログラム。


 そのマザープログラムから一部を切り離し、アンテのバックパックにも実装した。


「だからマッピングも任せてくれればいいよ」


 空間を把握して記録するので、通路の予想もしやすい。


 人が記録するよりも便利に利用できるのだ。


「お、俺は本当にやることが無くなっちまったな」


「そんな事ないよ。正確な射撃で援護してくれるから安心して突っ込む事もできるし、そうだ。ウッくんは理力銃にも慣れて片手で撃てるようになってるよね。持ち替えたりして。それじゃあこれ!」


 アンテはもう一丁、理力銃を取り出してウッくんに渡す。


「二丁拳銃で僕達を助けてよ」


 両手持ちになれば連射も、今まで以上にしやすい。活躍もしやすくなるというものだ。


「そんなことよりさ」


 最後のアーマービートルを切り裂いて、戻ってきたマニエルが聞いてくる。


「ウッくんって、アンテが好みなの? 私ってタイプじゃあない?」


 ぐいっと詰め寄ってきて、必死の形相で問いただされ、仰け反るウッくんだったが。


「俺の好み? そりゃあ可愛い子は好きだよ。マーニーがどっちかっていうならタイプだけど、けどお前は俺の妹だし」


「ウッくんまでそう言う事を言うんだ。けど分かった。私も可愛いって認めてくれてるんだね」


 それだけ聞ければ十分。


 兄妹論争はウイックとやって答えも出した。


 自分が好みのタイプであると教えてもらえさえすれば、もう何も気にする必要はない。


 上機嫌になる二人の少女は奮闘した。


「お、俺、二丁拳銃ってのになっても、活躍の場がないんじゃあ意味ないんじゃあないか?」


 マップもアイコのおかげでどんどん埋まっていき、ほとんど迷うことなくフロアマップは完成し、目の前のジャイアントアント八匹を倒せば、その向こうに見える下層行きの階段に辿り着ける。


 巨大蟻は勢いづいた少女達の敵ではなかった。

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