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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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15 暗黒竜の真の力を目の当たりにする噺

 極大な光の束は巨大な黒竜を呑み込み、天高く登っていく。


 空気のない高さまでそびえ立つ神聖樹、秘術の生み出した光は、大樹の天辺を掠めて星の彼方へ消えていく。


「と、トンでもない事をやらかしたわね」


 回避するように言われて慌てて逃げ出すミル、飛んでいるのとは違うイシュリーはドラゴンマニエルの背中に乗せてもらい、全員がどうにか巻き添えを食らうことなく、収まった光の発信源は大騒ぎをしている。


「ビ、ックリしたぁ」


 あまりの衝撃に、技を放ったウイック自身がやや放心状態になり、重力レンズを抱えていたワークボットは一時機能が停止され、後ろに下がっていたアーチカ達も呆然と光の過ぎ去った辺りを眺めている。


「完全に壊れちゃったね。けど想定以上の威力だったよ。重力レンズも耐久値を遙かに超えて保ってくれたし、これなら」


 光が通り過ぎて暫く、爆炎が晴れていくと、そこにいた巨大な影は自由落下で地面に叩きつけられる。


 黒い竜はこんがりと焼けたニオイがしているが、そもそも体は闇よりも黒い竜だけあって、見た目は変わったように見えない。


「トドメ、刺す必要ないんじゃあねぇか?」


 ピクリとも動かない黒竜はもしかすると、これで終わりなのかと思えるほど。


「トドメは刺すわよ。はぁあ!!」


 ミルは大剣を真下に向かって逆手に取り、竜の額目掛けて降下する。


「これでどう?」


 額を貫かれ、暗黒竜は断末魔の叫びを上げる。


「おわった? のよね」


 伝説の竜は、額を貫かれて眠りにつくと言われている。


 まさか自分が伝説の勇者と同じ活躍をするとは思っていなかったが、引き抜いたブランシュカは正に聖剣、それを自然と天高く掲げてしまう。


「やっぱ俺なんかより、よっぽど勇者だよな。ミルって」


 犠牲も出たが、これで邪魔者は排除できた。


「この魔物門で間違いないのか?」


 ウイックの母、マーリアが長年掛けて調べた資料を託されたアンテが鑑定する。


「うん、間違いないよ。ここが定められし復活の地ってことだね」


 魔晶石に封印されし大魔王の魂、その封印を13のメダリオンに分けて刻む事で、災厄に触れることなく、封印の器は解放される。


「13人の乙女の祈りで、器になっているウイックの体は、魔晶石との繋がりが外れる。精神世界から体を戻せるんだよ」


 ようやく積年の思いを成就できる。


 感慨深いウイックを中心に喜びが沸き上がる仲間達は、直ぐに絶望の淵に落とされる。


「あ、あいつ……倒したよな。トドメも刺したよな」


 動きを止めた暗黒竜が復活して上昇をし、こちらに向かってくる。


 最初に気付いたのはアイナ。少女の悲鳴で全員が異変に気付き、今一度戦闘態勢を整える。


「おやおや、お主等、随分とボロボロではないか?」


「セレーヌ、お前どこに行ってたんだ?」


「ずっと見ておったよ。次元の皮一枚向こうでな」


 一晩を過ごした船を出るまでは一緒にいたはずの魔女は、いつの間にか姿をくらまし、今また音もなくウイックの傍らに佇んでいた。


「ちょっと取り込み中でな。できたら手伝ってくれるとありがたいんだけどよ」


 魔晶石がエナジーを供給してくれているウイックはともかく、皆の気力も体力も底が見えてきている。


 あの暗黒竜は伝説級の強さ、このままでは全滅も必至。


「悪いがのぉ、頂きを掲げる我ら魔王は、大海洋界に深く干渉する事を禁じられておる。その禁忌を破ったのは、大魔王を自称するあの愚か者のみ、

結果神の逆鱗に触れ、神に導かれし人の手によって封印された。

許せウイック、妾だけでなく、各世界の頂点に立ち、治める立場の者は皆、同じ立場なのだ」


 世界の理に反したこのような事態に於いても、その禁は破れない。


「だがあやつは違う。己を模した忌まわしき存在を許せず、深い眠りより覚め、重い腰を上げてやって来おったわ」


 セレーヌが手に持った扇で示した方向、真っ黒な雲が浮かんでいる。


 やがて稲光が走り、雷が地表に落とされるその雲の中から、威圧感を伴い巨大な影が姿を現す。


「おいおい、まさかあれは本物ってやつか?」


 未だ地表附近を這いずるように、低空に浮かぶ黒竜に酷似した上空の影は、はっきりと目に見て取れる高さまで降りてきて、大きな口を開く。


『なんとも醜いものよ。我と似た能力も備えておるようだが、所詮は紛い物。魔界の空を預かりし我からの、天の捌きを受けるがいい』


 そう言って落とされた雷は、暗黒竜の何倍もの煌めきだった。


「……たった一撃で!?」


 驚きの光景ではあるが、これが真の暗黒竜の実力なのだ。


 燻るほどに黒こげにされた黒竜は、今度こそただの肉の塊に成り果てた。


『人の子等よ。お主等の戦い振りは見させてもらった。見事なものであったが、我を沈めたあの者等には及ばんかったようだな。

我はまた眠りにつく、もう二度と合わせる顔もなかろうが、お主等のこの先を我も案じていよう』


 人の言葉を操る黒竜はまた黒雲の中に姿を消した。


「なんか怒濤の展開だったな。流石は神にも匹敵する最強の竜、あっという間に片付けて、あっという間に行っちまいやがった」


 これで今度こそ問題なく解放の儀式を行える。


 セレーヌも立ち会う14人は、大きな魔物門の前で準備を始めた。

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