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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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14 作られた伝説級に掟破りな大技をお見舞いする噺

 爆風が収まると、暗黒竜は天に頭を向けて急上昇、地上からでは粒のようにしか見えないほど上空まで行くと、身を翻して急降下。


「まずいぞ! あいつ地面に激突するつもりだ」


 ウイックはアイナとセイラを抱きかかえて宙に浮き、それに続いたシズもギリギリのところで大地の振動を受ける事はなかったが、爆風に飛ばされて、地表に降りていたアーチカ、ピューレ、ノアールにダンルー、そしてエレノアが爆撃に呑み込まれる。


「お、おい!? 大丈夫かぁ?」


 陥没した大地の中心に立ち上がる暗黒竜、落雷を落とそうとするのをアンテがワークボットの右手を顎にヒットさせ、頭の後ろに回り込むと角を掴んで首を持ち上げさせ、胸を反らさせる。


「こぉぉぉぉのぉぉぉぉ!」


 竜化したマニエルは黒竜の胸元に飛び込み全力で押し上げる。


 暗黒竜の六分の一の大きさでもパワーは十分、アンテと二人がかりでひっくり返すと、背中から地面に叩きつける。


「みんな、平気か?」


 黒竜に踏みつぶされたように見えた地上部隊は、ノアールの気転で難を逃れる事ができた。


 落ちてくる黒竜を見て、逃げ切るのは不可能と悟ったノアールは咄嗟に判断して、行動した。


 立ち位置がよかった、正に偶然だった。


 強く地面を蹴るために身を屈め、低い姿勢で目の前にいたエレノアとピューレにタックルをし、アーチカのところまで押し飛ばすと四人ひとかたまりになったところで、空間結界を張った。


 一種の異空間を作り出した事で、超巨大な竜に押しつぶされずに済んだのだ。


 しかしそこには忘れてはならない者が含まれていなかった。


「ダンルー、ダンルーはどこ行ったんや」


 上空に追いやられた暗黒竜は、空戦部隊が相手をしてくれている。


 ノアールは陥没した地面の中を走り回った。


 程なくして見つけたのは人形神ひんながみの無惨にもバラバラにされた体だった。


「ダンルー!?」


「あぁ、もうしくじっちゃったぁ~」


 頭部もボロボロで、辛うじて口を開く事はできるが、間もなく魂魄も抜けてしまうだろう。


「待ってろ、今すぐ復元を!」


「もう、無駄よぉ~、アタシは核を壊されてるからぁ~、あんたの復元でも、きっと無理ね。

……いいわよもう、退屈ばっかりの日々だったけど、最後に一生分の楽しみを手に入れる事ができた。お別れよウイック、この先の貴方の冒険に、実りあらん事を願っておいてあげるわ」


 軽快に話していたダンルーだったが、急に気配が途絶え、頭部は粉々に崩れてしまう。


「ご、ごめんやダンルー、ウチがあんたの事も見つけられていたら……」


「ノア! タラとかレバはなしだ。お前のおかげで、他のみんなは無傷で助かった。ありがとうな」


 猫娘の肩に手を置き、ウイックは空を見上げた。


「いたっ!?」


 肩に置かれた男の手には、バカみたいに力が込められており、その怒りがノアールに伝わってくる。


「アンテ、アイコ、俺の手伝いをしてくれるか?」


 黒竜を休ませない為に、攻撃は続いていた。


 アンテはウイックに応じて、戦線を離脱する。


 ミルはみんなの期待に応えようと、竜の額にブランシュカを打ち込む隙を窺っていた。


 衝撃波を飛ばせるとは言え、剣士であるミルの間合いは強大な黒竜に対しては、剣が届く距離まで入り込む事が既に至難の業。


 有効だとは呼べないが、中長距離での攻撃力を持っているアンテとマニエルは、相手を引っかき回すのに重要な役割を担っていた。


 その一角が離れていき、エルラムは援護のために距離を置いていたが、ミル達に合流し、ありったけの妖力を駆使して、戦線を維持してくれる。


「どうだ? やれそうか?」


 アンテとAIが導き出した答えはNOだった。


 ウイックの思いつきはかなり突飛で、しかし大胆な策は高い効果があるだろうと解析されものの、だがそれは限界を超えた挑戦でしかなく、流石のアンテでも首を縦に振ることかできそうにない様子だ。


「このままじゃあ、ミルもあいつの額に剣を突き立てるなんて、捨て身でも成功しやしねぇだろ。どうにかしてホンの一時でも、ヤツの動きを止めてやりてぇ」


 AIはずっとREDシグナルを出しっぱなし、しかし深く考え込んでいたアンテの答えは少し違った。


「どこまで保つか分からないけど、やってみる価値はあるかもしれない」


 ウイックの思いつきは悪くない。


 ただそれを可能とするのには、少し工夫も必要だった。


「うん、だから出力調整をしてくれれば、有効な攻撃になるくらいは保たせられると思う。そうだよね、アイコ」


『……解析終了、出力調整は30%以下より始め、少しずつ増していって頂ければ、有効打を放つまでは崩壊を遅らせる事は可能』


 細かい数値を示したところで、ウイックには全く分からない。


「ウイック、イメージして。最初は光束から初めて徐々に秘弾に置き換えるんだ。それならなんとかやれる。僕達はそう計算した」


 光束と秘弾では扱う理力の系統が異なるのだが、イメージとしては考え易い。


 アンテは重力レンズの付いた長筒をワークボットの頭にセットする。


 マニエルのドラゴンブレスを増幅した装置は、ウイックの秘弾に耐えられる設計にはなっていない。


「いい、一発勝負だよ、外したら終わりだからね。僕の合図で光束を、もう一度合図するから秘弾に置き換えて」


 ウイックは大きく頷くと、空を見上げて理力を限界まで高める。


「よし、みんな避けてよ。大きいのが行く! いい? ……今だよ。ウイック!」


「うぉーーーーーっ、“光束こうそくの秘術”ぅぅぅ、……いけぇーっ、“秘弾ひだんの秘術”だぁーーーーー!!」


 今まで見た事のない極大な光の柱が天に向かって駆け上っていった。

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