12 さすがは大物、一朝一夕とは言えない噺
ウイックを温存して巨大魔物門に辿り着こうと考えていたが、偽物だとしても能力値は本物の竜達を前に、アンテとマニエルは出会い頭の一撃で吹っ飛ばされ、的が小さいミルは直撃は受けない物の、暗黒竜のブレスの衝撃波でバランスを崩して墜落してしまう。
「おっと、大丈夫か?」
落下地点にはウイックがいて、秘術で減速の後に抱き留めてくれた。
「あ、ありがとう」
頬を染めるミルは口をすぼめるが、直ぐに我に返って改めて飛び立つ。
「意外と油断なりませんね」
ツッコミ役の天然ボケに、思わず本気でド突きツッコミを入れそうになるイシュリーは、装甲を自分に装着するとゴーレムを収納し、前戦に飛び出していく。
ウイックは秘弾を撃つが、銀竜の張った魔力の障壁が術の進行方向を変えてしまい、足下にいた大型種を一掃する事はできたが、竜達には全くダメージを与える事ができなかった。
「俺本気で体術を仕込んでもらおうかな」
このところ術の利かない相手によくぶつかる。
本気で宗旨替えを考えているわけではないが、近頃プロテクターに頼ることが多い気がする。
銀竜が攻撃を凌いだ後ろから出てきた金竜が、秘弾に匹敵するブレスを吐き出し、セイラが結界で受けきるが、それは簡単な仕事ではなかった。
理力の大半を持っていかれたセイラは肩で息をしながら、次の攻撃に備えようとするが、足下がふらつき、それをウイックが支えてやる。
「わりぃ、今のは俺の仕事だったな」
「ふざけないで、これはみんなで決めた事でしょ。貴方は力を温存する事を考えなさい」
回復薬をセイラに渡すと口移しを要求されるが、今は戯れている時間はない。
ウイックは膨れっ面になるセイラを置いて空に上がり、銀竜に向けてミサイルを一発発射する。
銀の竜が使う障壁は、マナを受け流すモノではなく、攻撃そのものを逸らす効果があるようだ。
現にウイックのミサイルは、障壁にぶつかると進路を替えられ地面に衝突し、グレートソードで斬りかかったミルの攻撃も、弾かれたわけでもないのに、別方向に逸らされてしまう。
「これならどうや」
ノアールは銀竜に対し呪詛を打つ。
「呪いは術とはちゃう。生きモンやったら逃れられへん。深い眠りの淵に落ちるとええわ」
シズも力を貸し呪詛は最大効力で発揮された。
「……やっぱりあかんか。偽モンの生きモンには呪いも関係あらへんねんな」
ただ一つ、打開点が分かった気がしたノアールは、エレノアに念話を送る。
「なるほど、ならばうってつけの上位精霊が、私に手を貸してくれる」
この中では一番広範囲に、能力を長い時間継続できるエレノアが全力を見せる。
「私がフォローします」
イシュリーはエレノアの背中に手を当て、精霊力を流し込む。
「おほっ、これいいわね。鼻血でそうだわ」
呼び出されたのは地の精霊と風の精霊。
周囲から風の圧力を与える。
銀竜の障壁の弱点は、衝撃を一方向にしか受け流せない事、それなら同時攻撃でも効果が出そうだが、障壁が一枚しか張れないという確証がなく、だったら全方位から一気に攻撃すればいい。
という発想をぶつけてやる。
「すげぇ、術攻撃で結果を出すなんてよ? って炎獄でやれたんじゃあねぇのか」
地の精霊に呼びかけて超重力を加え、地面に叩き落とした。
周囲から近接戦闘主体のメンバーが一斉に攻撃する。
トドメを刺したのは金竜。
相方を襲う少女達を焼き払おうと、ドラゴンブレスを吐き出す。
「誇り高いドラゴンが見たら嘆くよぉ」
マニエルはもう自分もドラゴンの端くれだという思いが高くなってか、強い憤りを覚えている。
「マーニー、大丈夫なのか、お前?」
「平気平気、出会い頭の事故みたいなモンだから」
完全竜化し、体は相手の三分の一ほどだが、負けないほどの咆吼で金竜に挑むが、ドラゴンブレスの撃ち合いは、全くの互角。
真っ向勝負に水を差したのは無数のミサイル。
「ちょっとアンテ、正面対決になに横槍入れてるのよ」
それはただの弾頭ではなかった。
空間ごと削る術符の籠もった爆発に、肉体のあちこちを抉られる金の竜は落下して絶命する。
「残るはあの黒いヤツだな」
本物ならその攻撃力と防御力だけでなく、その知力も警戒しなくてはならないが、相手は理性を忘れたただの獣、尋常ならざる破壊力は持っていても、恐れるほどの相手ではない。
「わけないでしょ、どうやって倒すつもりよ。あんなの伝説級よ」
慌てるミルだが、それでも暗黒竜に当たる前に金竜と銀竜を倒せた事には、大金星を感じてもいる。
ウイックは不貞不貞しく嘲ると問答無用に“秘弾の秘術”を黒竜にお見舞いする。
「くぅ! 術を無効化したんじゃねぇんだよな。あの鱗か? 俺の術を簡単に防御しやがったのは」
「あんたはバカなの? それとも無知なの?」
暗黒竜がどんな存在かは、子供の絵本にだって描かれている。
無効化はされなくとも耐性が強すぎて、術士との相性はやはり最悪。
「まいったな、こりゃどうも」




