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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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10 宝を手にした秘術士と懇願する姫達の噺

 幕営への帰還は、タイムロスなく行えた。


 神聖樹の中でも“遠渡えんとの秘術”の使用は可能だった。


「なんだ、誰もいないのか? アーチカは前戦に指揮所を設けるとか言ってたからそこか」


「ウイックぅ~」


「ああ、もう分かったよ。なんなんださっきから、泣いてないで早く言え」


 それを言わせなかったのは、帰りを急がせたウイックだったのだが、アーチカもいないようなのでミルの話を聞いてやる事にした。


「これ……」


 ミルが手にするのは刀。


 虎鉄の刀身を左手に、塚を右手に別々に持っている。


「折れちまったのか?」


「私が未熟なばかりに……」


 煙幕の中、階層主の手足を切り落とし、ミルは胴体も縦に斬りつけていた。


 ウイックからの指示にない行動で、虎鉄はポッキリと折れてしまったという。


「私が終わらせてやるって思ったんだけど、角度がちょっと甘かったみたいで、震える肉体の中の核があんなに堅いなんて」


 想像はしていたが、やれる自信が失敗に繋がった。


「これあんたの秘術で直せない? 天使の翼もひっつけられたでしょ?」


 自己再生能力のあるモノは直しやすい。


 単純な構造のモノもさほど手間は掛からないが……。


「こういった魂の籠もった逸品ってのは、おいそれと修復できねぇよ。できたら最初からお前の大剣も直してやったろうさ」


「そっかぁ、それもそうかぁ、くすん、ミハイルさんなら直してくれるかな?」


「さぁな、頼んでみる価値はあるだろうから、この件が片づいたら海底都市にまた行ってみたらいいさ」


 さてそんな事よりも仲間達が、いったい今どこにいるかだが……。


「なんだ貴様達?」


 もぬけの空だった暴舎に煌びやかな鎧を着た騎士風の男が数人の兵士を伴って入ってきた。


「誰だ、あんたは?」


「それはこちらのセリフだぞ。……そうか、貴様はアーチカの配下の者だな」


「配下……、まぁ、そんなもんだな」


「そうか、では即刻ここから立ち去るがいい。この戦場は今は私が預かっているのだからな。あいつの手勢に用はない」


 横柄なその男は前戦司令であるアーチカに取って代わってやって来た、ウルアイザ帝国第二皇子、帝位継承権第二位のセドリック=フォン=ウルアイザークだと、後ほど第三皇女に教えてもらうが、

ここでは取り付く島もなく追い出されてしまい、海上の船舶に仲間達がいることを兵士から聞いて、途方に暮れる。


「どうりで念話が通らないわけだ。ちょっと遠いからな」


 現状も分からないし、無暗に突っ込む事もできない。


「ようやくお戻りになったのですね」

「エルか?」


 突如現れたエルラムはゴスロリ姿。


 法術で遠渡の術も覚えたそうだが、術衣と併用する事で、イメージが曖昧でも転移が可能であると言われ、ウイックはその衣装が奇抜なドレスでなければ本当に欲しいと思ったものだ。


 出迎えのおかげでようやくアーチカ達と合流できたウイック。


 状況が思わしくない事を聞かされ、詳細説明を受けるためにテーブルに着く。


「じゃあもうほとんど片づきか掛けていたってことか?」


 アーチカの指揮の下、アンテ達の頑張りで、魔物門のほとんどを消滅させ、獣たちの数も随分と減らせられたのに、前衛を変わった部隊がモタモタしていた所為で、状況は元に戻り、現状では悪化までしてしまっているとか。


「なのに、なんでこんな所でノンビリしてんだ? 手伝いに行かなくていいのか?」


「兄上にも面子というモノがある。要請もないのに我々が出向いても受け入れはしないだろう」


 そんな事を言っている場合ではあるまいに、ともあれ確かに第二皇子が第三皇女に泣きつくなんて事は万が一つもありはすまい。


「内政を預かるユリウス兄様、第一皇子にいい顔をしたいのだろう。軍部を預かる身としてわな。私は一応、リック兄様の部下という位置づけだからな、尚のことだ」


 とは言え、いつまでもこんな事をしていても、犠牲が増える一方だ。


「面倒くせい話だな」


「それはもう少しタイミングを見計らうとして、どうだ、見付かったのであろう?」


 アーチカの抱える問題とは別に、待ちわびた報告を急かされ、ウイックは二枚のメダルをテーブル上に置いた。


「これでワタシもお前達の仲間になれるのだな」


「もう仲間なのは変わりないけどな、俺的には」


 その一言で火が点いたのは12歳。


 椅子から立ち上がり、ずいずいと目の前まで迫ってくる。


「も、もちろんアイナもだぞ。だから無理に操体しなくても……」


 更にもう一人がずいずいとすり寄ってきて、右側にアーチカ、左側をアイナに腕を取られて、自由を奪われたまま別室に連れて行かれる。


 それから四半時、ようやく戻ってきた三人、満足げなアーチカとアイナは無事に烙印を刻み、それ以外にも何かがあったようだが、今の時間で皇女殿下の意志は固まった。


「愚兄の自尊心を立てている場合ではないな。明朝、我々は前戦に復帰する。現幕営とは違う場所に拠点を置き、一気呵成に事態を収拾させる」


 十分な時間があったので、自らの部隊の再編成も完了している。


 アーチカは今度は自分も前へ出ると宣言し、アイナまでもが後方支援を買って出る始末。


「ねぇ、ウイック」


 二人の活き活きとした表情を見て、何かを察したマニエルがウイックに耳打ちをする。


 激しい動揺を見せる兄に、女の直感が的中し、妹は他の仲間の元に走っていく。


 なにやらマズイ展開がこの後に待っているような気がしたウイックは、この場から立ち去ろうとする。


 だが時既に遅し、明朝の出陣が懸かる数時前まで、男は休むことなく女達に攻め寄られるのだった。

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