表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
160/192

7 本当にここは神聖な樹の中なのかと悩まされる噺

 第五階層も無事突破し、三度目の疲れのピークに、流石に回復薬だけでは体が保たなくなり、ウイック達は神聖樹の幹に空いた、うろの中にゆったりできるスペースを見つけ、そこで体を休めることにした。


 第六階層は第二階層のような森が拡がっていて、空間全体を把握する事ができない。


 外の光りが差し込んでいれば、今が夜明け時だと知る事もできただろう。


 冒険者でもあるウイックとミルは、普段なら二、三日程度なら休まず戦い続ける事もできる。イシュリーの体力ならそれくらいは可能だろう。


 しかしここでの戦いは消耗が激しい。


 魔晶石から理力が溢れてくるウイックはまだいいが、マナの枯渇しているミルとイシュリーの過労具合は申告だった。


「けど三階層以降は、あんたが殲滅級の秘術を連発してくれたおかげで、こっちは楽をさせてもらったわ」


「はい、私達は階層主の場所を見つけるだけでしたから、少し休めば全快すると思います」


 見つけるだけだったと言うが、第四階層は水の中、第五階層は灼熱と極寒が交互に襲いかかってくるような奇妙な空間だった。


「確かに俺は、雑魚からボスまで、敵の全てを相手にしたが、術の無駄使いがそんなになかったってのは、お前らの頑張りあればこそだったろ」


 保存食で簡単な食事を終え、三人は並んで横になった。


 真ん中のウイックは両腕の自由を奪われ、二人の枕にされている。


「まさかこんなやり方で、俺の楽しみを奪うとは」


「す、すみません。そんなつもりではなかったのですが、その腕枕をしてもらうのが夢だったので」


「私も……、そうかな? 自分の気持ちに気付いてから、夢物語に出てくる恋人の戯れを体験したいって、なんとなく想ってたから」


 二人はウイックの手を解放することなく、更に体をくっつけてくる。


「本当にあんたのことなんて、手の掛かる弟くらいにしか思ってなかったのにね」


「ミルさんはそう思いこむ事で、自分の気持ちに蓋をしていただけですよ」


 少女達は想い人を挟んで恋話を始める。


 幼い頃はまだ天使として、天上界の発展に役立てるように、そんな思いを胸に、まだ見ぬ恋人に思い馳せる事などなかった。


 神殿の中、幾日も幾日も母の扱きに耐え、自らに鍛錬を続け、全ては継承をしっかり受けられるようにと、年頃の想いも抱くことなく精進してきた。


「まさかこんな素敵な想いを抱けるようになるなんて、貴方には感謝の言葉をどれだけ重ねても足りませんよ、ウイックさん」


「本当に、亜天使として故郷を追われ、生きる事に必死だった私まで、気が付いたら心を虜にされていた。もしかしたら出会いの頃から惹かれていた。そんな風にも今なら思えるわ」


 聞いているだけで、身悶えしそうな言葉を耳元で囁き続けられ、直ぐにでも心を落ち着かせて、少しでも休まなければならないのに、なかなかそうもいかない。


 気が付けば半時ほどが経ち、これ以上のタイムロスは許されず、ウイックはいきなり体を起こして身支度を調える。


「ウイック? ちゃんと休んでないといけないわよ」


「そうですよ。もう少し休んでいきましょう」


 二人におかしな状態異常が見られる。


 恐らく自分自身もなんらかの影響を受けているのだろう。


 洞の入り口、その先になにやらおかしな気配を感じる。


 ウイックはワンドを取り出して、洞に張っていた結界を解き、開口一番で光束を撃ち放った。


「なんだこのデケェ目玉の魔物は? いや違うな。妖怪ってやつか」


 直接襲ってくることはなく、精神攻撃を仕掛けてきた妖怪は燃やし尽くしたが、まだ感じる異様な気配は三人を取り囲んでいる。


「おい、二人ともいい加減に起きてくれ」


 声を掛けても返事がない。


 どうやら完全に敵の術中にはまっているようだ。


「術を掛けた相手はもう倒したのに、効果は持続するのか厄介だな」


 この第六階層はどうやら漂う妖気が、人の身も心も蝕む空間になっているようだ。


「本当にこの樹の中は何がどうなってるんだか、説明役も含めてあと二、三人連れてくればよかったな」


 中がこんな風になっていると事前に分かっていれば、しかし悔やんでいてもしかたがない。


「もし精神攻撃で相打ちさせられたりしたら、一気に全滅も有り得るな」


 だったら二人にはこのまま眠っていてもらって、その間に階層主を攻略する方が危険がないのかも? そう思ったウイックは一人で走り出す。


 探索中、向かってくる妖怪は一匹もおらず、ただ遠くから眺めてくるばかり、走り回るには調度いいが、ウイックはその違和感に既に気付いていた。


「迷路の中を走り回っているみたいだぜ」


 どうやらウイックは無意識のうちに誘導されていたようで、走れど走れど景色が変わる事はなかった。


 試しに木々を薙ぎ倒しながら真っ直ぐ進むが、いつまでたっても壁にたどり着かない。


「そうか、もしかしたらこれで」


 ウイックは“理解りかいの秘術”を無制限で発動し、様子を窺うが何かが代わったという自覚はない。


「くそ、そんな簡単じゃあねぇか」


 と、焦りを見せるがウイックだったが、その勘はドンピシャに当たっていた。


 ウイックは気付かなかったが、周囲にいた目玉の妖怪が使っていた精神攻撃を、今の術で黙らせることに成功。


 頭が軽くなったウイックは身断を使い、階層主を見つけて炎獄で舜殺する。


 洞に戻ると少女達は我を取り戻しており、ようやく一息つく事ができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ