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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
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5 二人の少女が仲間になった頃のような冒険をする噺

 第二階層の階層主、巨大な樹木の魔物を前に、ミルとイシュリーは枝や緑色をした蔓に体を絡め取られ、身動きが取れずにいた。


「なんなのこれ!? は、放しなさいよ」


「ダメですミルさん、暴れると余計にしまってきます」


 階層主を見つけ、かなり精神をすり減らしているウイックを置いて先行したミルとイシュリーだったが、足下の木の根がいきなり、二人の体に同時に巻き付いてきた事で対応が遅れてしまった。


「ん、なっ!? どこ触ってんのよ」


「いや、へたくそが触らないでください」


 誰に向かって叫んでいるのか? 樹の魔物は蔓を使って、二人の衣服を脱がしていく。


 あっという間にあられもない姿にされ、ようやく追いついたウイックに生まれたままの姿を真正面からさらけ出す。


「なにやってんの、お前ら」


「み、見れば分かるでしょ! と言うか見るなぁ!?」


 時々一緒に温泉にも入っていたから、今更という気にもなるが、確かに目を背けるのが礼儀というものだろう。


「ちょっと、早くどうにかしなさいよ」


「無茶言うな。そっち見ないで俺にどうしろってんだ」


 二人が捕まっているのでなければ、炎で焼き払う事もできるかもしれないが、そちらを見ずに風刃で切り刻む事もできない。


「ウイックさん、ミルさんの事は後回しにして、私を助けてください。と言うかむしろ見てください」


 そう開けっ広げにされても困るのだが、それならばそれで対応はできる。


「つか、ミルよ。お前は翼を拡げたら、どうにかできるんじゃあねぇのか?」


「えっ?」


 ウイックは極力目を細めて、イシュリーを拘束する蔓を切り落とし、助けると足下に落ちている彼女の服を手渡す。


「こんのぉ!」


 自力で脱出したミルも服を着ると、顔を赤くして忌々しい樹の魔物を滅多切りにする。


 その時に初めて気付いたのだが、この樹は二人を捕まえると、大きな花が獣の口のように広げた花弁の中央で、裸の少女達を呑み込もうとしていた。


「たく、お前はもっとしっかり者だと思ってたがな」


「第一階層に比べると大したことのない敵だったな」


「どこがよ? いい恥を掻いちゃったわよ」


 どさくさ紛れにイシュリーにイタズラをしているウイックの首をへし折り、ミルはショートソードを拾い上げた。


「イシュリーもそんな顔しないの。先を急ぐわよ」


 やはりそれは油断だった。


 魔物を背に、仲間に注意をするミルは、樹の魔物から伸びる黒い蔓に気付く事ができなかった。


「こいつ、また……、えっ?」


 さっきは翼で簡単に枯れさせる事のできた蔓が、今度はいくら聖光気を込めようともビクともしない。


 自由を失っていない右手のショートソードで斬りつけても歯が立たない。


「こいつ、まだ死んでなかったのか」


 空かさず風刃でミルを助けようとするが、黒い蔓はミルのショートソードが通らなかったのだ。


 その結果は火を見るよりも明らかだった。


「ミルのグレートソードなら」


「ごめん、私も思ったけど、ちょっと遅かった……」


 右手の自由も奪われ、手の打ちようがない。


「イシュリー! ミルを助けるぞ」


「あ、いえ、スミマセン」


 この魔物、どうやら女好きのようで、二人はまたも体中に蔓が這い回ることとなる。


「もういや!? ウイック、どうにかしてよ」


 どうにか、そう言われても魔物はミルが切り刻み、本体と思われていた樹は立ち枯れしている。


 その天辺から伸びてくる黒いツタ。


 目で追いかけて気が付いた。


「この樹、枯れてるよな間違いなく、なのになんだ? あそこ」


 樹の頂上部分には、まだ青々と葉が生い茂っている。


 怪しい事この上なく、しかしその何かがどこなのかも読めず、ウイックは“炎獄えんごくの秘術”を広めの範囲で発動する。


「ぎゃー!?」


 落下してきたのは人の形をした植物。


 落下した事で炎の檻から抜け出す事はできたが、ウイックの追撃の炎矢によって焼き尽くされる。


 蔓は人型樹木と繋がっていて、魔物を葬った事で二人は解放される。


「ねぇ、本当にこれを後、いくつも続けないといけないの?」


 螺旋状に上に続く階段を登り、3つ目の階層を目指すが、ここまでもそこそこ時間を使っている。


 早くアイテムを回収して皆に合流したいが、思った以上に体力も削がれ、第三階層に着くやいなや、休憩を取る事にした。


 辺りは岩だらけ、平らな地面を見つけるのも大変だが、下層から上がってきた場所だけは少し拓けていて、休むのには調度いい。


「天井は下の階と高さも変わらないのに大きな岩ばかりで、ここもまた進むのは大変そうだけど、ここなら私も飛ぶ事ができそうね」


「俺もプロテクターで飛べるな」


 少し小腹を満たすと、その間に情報収集のため飛ばした、アンテの小型偵察機が働いてくれて、既に階層主の場所も見当をつけてある。


「私の飛行術では、同じように進むのも難しそうです」


 イシュリーは2体のゴーレムの能力を使って、空中を跳ね回る事ができる。


 天井が高くなく、移動できる空間が広くはないここは、イシュリーの移動術に向いていない。


「今度は私が抱きかかえてもらう番ですね」


 満面の笑みのイシュリーと、呆然とするミル、ウイックは苦笑いを浮かべた。

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