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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
156/192

3 厄介なダンジョンに手こずりそうな噺

「でっかくて力が強いのは分かるけど、なんでこんなに素早く動けるのよ」


 砂埃が収まる中から無傷で、皮肉を残すミルが赤い巨人の棍棒に斬りかかる。


 切り落とされる武器を投げ捨てる赤いヤツに、壁まで飛ばされて倒れていたはずのイシュリーが、ウイックの到着前に起き上がって一気に距離を詰める。


「えっ、イシュリー大丈夫なのか?」


「ご心配お掛けしました。けど私、クリーンヒットは一つも受けてませんから」


 殴りかかるのは青い方。


 防御力に絶対の自信があるのだろう。


 真っ向から受けに来るその障壁を、獣王拳はものともしなかった。


「こちらは護ることしか脳がないようですね。無能がバカの一つ覚えを失った末路を身をもって知るといいです」


 全身にバラバラになったゴーレムの外殻を纏ったイシュリーが、赤いヤツから青い最強の盾を奪う。


 その赤いヤツをフランシュカで一刀両断にしたところで戦闘態勢を解くイシュリー、ゴーレム達も復元が済んでおり、元の姿を取り戻す。


「俺が術を使うまでもなかったぞ」


「自動修復という機能が備わっているそうです」


 そう言えば獣王の神殿で戦ったゴーレム達も、核を壊されないうちは何度も再生していた。


「これで階層一つ目か」


 階層主を倒した事で解放される扉、その向こうは階段になっていて、上層へ向かう事ができる。


「思ったより随分と厄介そうだな。まさかこれを何回も続けるのかよ」


 外の状況が気になると言うのに、そう悠長な事を言ってもいられない。


「……よし、やっぱ天井を貫こう」


 五大世界を支える柱とされる神聖樹を傷つけるなど、口先だけでも言葉にするなど狂気の沙汰。


 ミルが釘を打つよりも早く、ウイックは“光束こうそくの秘術”を真上に放った。


「……なんか天井に当たる前に消えちまったな」


 側にいた二人は胸を撫で下ろす。


「あんまり不用意な事しないでくれる、罰が当たるなんてレベルじゃない暴挙よ」


「心臓が止まるかと思いました。ウイックさんって、時々お子様以下の行動取りますよね」


 二人はホッとしているが、これは術士としては由々しき問題なのだが、よせばいいのにもう一度、別の術を行使する。


「……」


「だから、何考えてんのあんたは!?」


 大剣の腹で思い切り後頭部を叩かれて意識が飛ぶが、陥没した頭が回復すると今度は深く考え込むが、そう簡単に答えなんて出てこない。


「秘弾も効かないってか、冗談じゃあねぇぞ」


「ウイックさん、先に進みませんか?」


 このまま好きにさせていると、何をしでかすか分からない。


 現にこの時ウイックは、プロテクターのミサイルなら……、などと考えていたのだから、無理から背中を押したのは、イシュリーのファインプレーと言えただろう。


 第二階層へ向かうのは幹のうねりのスロープとは違う、誰かが整備したかのような階段を登る。


「生きている木だよな。しかし自然にこんな形になるモンか?」


 登りやすくなっているのは有り難いが、本当に不思議な樹である。


 有り難い事はもう一つ、階段を登っている間、敵対生物が現れる事はなく、ウイックもプロテクターを外し、レーダーを確認する。


「結構上の方に反応があるな。この感じだと、まだ幾つも上の階層まで登ることになりそうだな」


 到着した第二階層は密林地帯。


 第一階層と同じくらいの広さがあるのだろうが、視界は狭く目的地がどの方向にあるのかも見当が付かない。


 辺りには獣の気配が無数に感じられる。


 地道に探索するとなると、時間が掛かりすぎてしまう。


「身断を使うか」


「なに、単独行動させるの?」


 再びプロテクターを着けて、一度に制御可能な数のギリギリ近く、20体の分身を生み出し走らせる。


 暫くするとあちらこちらで、ミサイルのものと思われる爆音が聞こえてくる。


 ざわつく森の中、爆発から逃れようとする獣たちが向かってくる。


「これは楽で良いけど、大丈夫なのウイック」


 ミルは取り回し難い大剣を収め、ショートソードを二本構え、オオカミ型の魔獣を切り伏せ、頭に粒のような汗を滲ませる秘術士の顔を覗き込む。


「は、話かけんな。集中力が……」


 やはり一度に20の分身を産み、制御しようと言うのは無理があった。


 メダリオンの力のおかげで、40近くを作り出せるようになったが、動かす事を考ええて抑えたつもりだったが、流石に限界を見誤ったようだ。


「少し減らせばいいのに」


 戦闘はプロテクターの装備に頼り切りで、秘術を使わせていないのでどうにかなっているが、早く進路を見つけて分身を消さないと、本当に神経をやられてしまい兼ねない。


「そうだな。これ以上探索しても意味がなさそうな所から、少しばかり術を解いていくか」


「スミマセン、私もライアとアイラが頑張ってくれていますが、全く成果が出せません」


 イシュリーのゴーレムも探索に協力しているが、階層主の居場所はまだ見付からない。それでもこの空間の広さは大体分かってきた。


 無防備なウイックを庇い続けるミルも少し息が上がってきているが、回復薬ならまだ十分にある。


 額を汗一杯にして、ようやく他とは違う場所を見つける。


 ほぼ空間の中央、縦に伸びる柱があり、螺旋状の階段が見える。


 そして階層主と思しき大きな影を見つけた時には、ウイックの身断は最後の一人になっていた。


「よし、行くか」


 回復薬を飲み、直ぐにも向かおうとするウイックをミルは制止させた。

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