表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第五幕   若くして新たな伝説を残す男の探遊記
155/192

2 神聖樹の中は魔物の巣窟になっている噺

 エルラムのレーダーが示すとおり、確かに神聖樹の中には大空洞があり、幹がうねっていて上に登っていく事ができる。


「けど、飛んでいくって訳にはいかねぇな」


 誰かが手を加えてできたかのように、人が一人通るのがやっとくらいの通路は、面倒でもゆっくり歩いて登るしかない。


「あんまりゆっくりって訳にもいかねぇしな。ミル、イシュリー、走るぞ」


 ウイックはプロテクターのホバーダッシュでうねりを登り始め、ライアとアイラの外殻を填めて、イシュリーも同じように後に続く。


「ちょっ、私そんな進み方できないわよ」


 ミルは置いていかれないように懸命に全力で走るが、ただ走っていても追いつけそうもない。


「しょうがねぇな」


 戻ってきたウイックはミルを抱きかかえ、先を急ぐ。


「ミルさんばっかりずるいです。ウイックさん、後で私も抱いてくださいね」


「イシュリー貴方、それ意味違ってない?」


 ミルはウイックの首に回している手に力を込め、顔を近付ける。


「ミルさんもそっちの意味でくっつくなら、一人で走ってください」


 少し前までウイックのイタズラを決して許さなかったミルが、スキンシップを受け入れているのを見て、イシュリーは頬を膨らませる。


「けどそうね。ウイック、今はそんな場合じゃあないんだし、器用に指を動かすのやめてくれない?」


「お、おお……」


 殴られるのも斬られるのも御免だが、つい動かしていた手を止めるのに、ミルから言葉で諫められるとは思っていなかった。


 暫くして少し広い場所に出る三人。


「こんな所にも魔物門か。簡単に片が付くとは思っていなかったが、結構な獣の数だな。二人とも戦闘が目的じゃあねぇ。先に行くルートを見つけたら進むのが最優先な」


 ミルを下ろし、範囲攻撃術“膨爆ぼうばくの秘術”を発動する。


 範囲指定は黙視による感覚で、しばらく爆炎を巻き起こし続け、目に見える害意ある獣たちは、そのほとんどを殲滅される。


「なんか奥からウジャウジャ出てくるんだけど」


 目の前の魔物門は潰したが、顔を出す獣の数から言って、この先にも魔物門はあると見て間違いない。


「こいつら本当に魔門界から来てんじゃあないのかよ」


「ウイックさん、あれ」


 炎耐性が高く、膨爆で倒せなかった獣を始末し終えて、戻ってくるイシュリーが指差す。


「亜神竜にそっくりじゃあねぇか。それにあっちは人工天使? だよな」


 妖怪や魔獣などが多い中、亜神竜の姿にも驚いたが、まさか人工天使まで出てこられては、魔物門の向こうの世界が気になるところだが、確かめるためであっても、不用意に飛び込んだりはできない。


「まさかあの男がまた?」


「可能性はゼロじゃあねぇが、あの時のあれで全部使ったはずだぜ。あの手のヤローは出し惜しみはしねぇ。そう言ったモンだからな」


 あれから時間も経っていないのに、これだけの数を揃えたってのも考えられない。

 なによりあれだけ懲らしめられて、直ぐに復活もあり得ない。


「今は余計な事を考えている時じゃあねぇ、一気に倒して上に向かうぞ」


 威勢良く気合いを入れるのは簡単だが、狭い空間にこうもウジャウジャ出てこられては、一歩進むのにも一苦労。


「そうだ。ミルよ、天上界でもやったみたいに、こいつら一気に浄化できねぇのか?」


 それこそ無数の死霊を無に還したあの奇跡を、いまここで再現できれば、浄化された空気が悪しき者を暫く寄せ付けなくもなるはず。


「そんな都合良くいかないわよ。ここの聖光気の濃度で、あんな高度な奇跡を起こせるわけないでしょ。それにいくらか片付けられたとしても、私、その後はまともに動けなくなるわよ、きっと」


「なんだよ。使えねぇ必殺技だな」

「気を悪くするわよ」


 軽口を叩きながらも、着実に一匹ずつ片付けていくが、やはり拉致があかない。


 ここが神聖樹の中でなければ、殲滅級の術で一挙に駆逐していけるものを。


「ウイックは私達の後ろで、自分の身を護る事だけ考えていて」


 ミルは剣聖ミハイル=バファエラが鍛えた、新しいバスタードソードを両手に踊る。それに合わせてイシュリーはライアと舞う。


 各個撃破となれば、この二人は最強コンビ。


 次から次へと、一撃必殺で倒していき、順調に奥へと進んでいく。


 ウイックとアイラも後方からの支援をしながら、置いていかれないように懸命に付いていった。


 少し広がりを見せた場所で、大きな魔物門を見つけて破壊したことで、獣の群れが現れなくなるが、その向こうには既に巨大な影が待っていた。


「こいつがここの階層主か」


 一つ目の巨人が二体、赤いのと青いのがイシュリーに近付き、殴りかかってくる。


 軽く交わすイシュリーに、赤い巨人は手に持つ巨大な棍棒を振り下ろす。


 棒には無数の突起、その一つ一つが外れて高速で飛んでくる。


「きゃああああ!」

「イシュリー!?」


 咄嗟に庇うライアとアイラはバラバラに、被弾したイシュリーも壁まで飛ばされる。


 ウイックは敵に背中を向けて、全力でイシュリーの元へ走る。


 隙だらけの背中に赤いヤツは同じ攻撃を仕掛けようとするが、グレートソードに持ち替えたミルが斬りかかり、突起攻撃をさせずに済んだが、今の打ち込みによる手応えを感じる事もできなかった。


「青いヤツは防御担当ってやつ?」


 物理攻撃も術による衝撃も、魔力でできた障壁で受け止められ、それと同時に赤い巨人の棍棒が襲いかかってくる。


「ミルぅ!?」


 大きな粉塵が舞い上がり、空洞内に爆音が響き渡る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ