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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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38 世界の危機の前に問題を片付けておく噺

 部屋を借りて二人きり、ミルの話を聞いて、ウイックは頭を悩ませる。


「こんな事、頼めるのあんただけっていうか、他の人には絶対に頼みたくないから」


 神妙な面持ち、内容が内容だけにウイックも断る事はできないが。


「知っての通り、俺の体は俺の物じゃあない。それでもいいのか?」


「それを言ったら、私が考えている事は何の解決にも繋がらない。それでも気持ちだけでも救って欲しい」


 子孫繁栄の為の研究、ミシェルフは亜天使のミルの体を使って、色んな実験を行った。


 もちろん自らの体で行為をする試みもしてきた。


「相手は純粋な天使だから子供が生まれるとも限らない。けどそんな不安を抱えたまま過ごしたくない。貴方との子供だと思えるなら、私は新しい命を受け入れる事もできる」


「けどそう言う事は、心から愛せる相手とするもんだろう」


 これだ、イシュリーやマニエルがストレスも感じるほどの鈍感ぶり。


「私、他の人は絶対いや。あんたが良いって言ってるのよ」


「あぁ、うん、まぁ、ありがとうよ」


「なんなの? どこまで惚けてんの? 女の口からはっきり言わせる羞恥が望みなの?」


 突然大きな声で喚き出すミルに、言葉を失うウイック。


「私が好きなのはあんたよ。あんたの子供が欲しい。あんたの子供じゃないならいらない。けど生まれてくる命に罪はない。だから!?」


「お、俺の事? お前が本当に?」


「……マジで気付かなかったっての? ここまで朴念仁だったなんて」


 一気にテンションの下がるミルだったが、直球の想いを告げる事が出来て、少しだけスッキリした。


「なぁ、ミルよ」

「なっ、何よ」


 真面目な表情のウイックに見つめられ、ミルは耳まで真っ赤になり、急に脳の一部が冷静になり震えが始まる。


「子作りって、具体的に何をするんだ?」


「はぁ!? 成人の年齢にもなって、誰も教えてくれなかったの?」


 自分勝手な事で、みんなを出し抜くのも申し訳ない。


 完全に熱の引いたミルは仲間を呼び、全てを打ち明けて相談する。


「それはぜひやってください。もちろんその後の事も、ウイックさんには考えてもらいますけど、先ずはミルさんに譲ります」


「そうだな。ウイック=ラックワンドが初めてだというなら、先にワタシがレクチャーしてやるのも悪くないがな」


「貴方、メルティアンでしょ? そんな経験もないのにレクチャーも何もないじゃない」


 イシュリーには異論はない。


 エレノアが興味津々で先走ろうとするのを、即座にマニエルが突っ込む。

「知識だけなら頭に入ってるんだけどね。僕も興味はあるけど、まだ怖いって思いが勝つかな」


 勉強熱心な錬金術師は赤ら顔ながら、満面の笑みを浮かべている。


「ミレファールさんが一番というのは、正直ずるいと思いますの。けどしかたないですね。ワタクシも今では皆さんの事、何よりも大事な存在になってますから」


「今はまだ発情期やないけど、みんながやる言うんなら、ウチも除けモンにはせんといてな」


「あ、あの私も、その経験前に死んじゃいましたけど、心残りの一つを叶えて頂けるなら、そのお願いしたいです。実体化も長い時間できるようになりましたので」


 霊冥界出身の三人は理性よりも本能優先。それは後の二人も同じで。


「マーマンに見初められるのには興味なかったのに、今は違う。相手が違うだけで、こんなに気持ちが変わるとは思わなかったわ」


「小さな集落を出て早々に、望みの一つが叶うなんて、魚人でなくなった時以上のラッキーが舞い込んじゃったよ。私の運も全部使い切っちゃったかも」


 どうすればいいのかの相談が、なぜか全員と契りを結ぶ約束に発展し、今は非常時なのでミルだけと言う特別な状況に、不満の一つも溢したいのだろう。


「これだけいて、有効な情報が得られないとは……」


「なんなら妾が教えてやろうか?」


「セレーヌ、いつの間に?」


 部屋の片隅に佇む魔女は、徐に一同の輪に加わり、男と女の正しい交わり方を語り始める。


 ベッドに上がる男と女。


「えっ、あれ? みんな……見てるつもり?」


 それは当然だという満場一致の意見を覆す事はできず、不承不承に承諾する。


「おお、そうじゃウイックよ」

「なんだ?」


「先ずはこの者が孕んだかもしれんという、その懸念を払拭してやるのはどうじゃ?」


「そんな事ができるのか?」


 魔女は女に架せられた問題を、解決する手立てを男に与える。


「やる事は同じだ。その交尾中に術をかける。お前ほどの術士なら直ぐに理解できよう」


 それは願ってもない。


 願ってもないのは間違いないが、ミルは少し複雑な気分だった。


 ウイックとの間に生まれた子だと思えるなら、新たな命を受け入れる覚悟は本物だったのだから。


 何はともあれ、これにて新たな冒険を前に、抱えていた問題の全てを解決できたのであった。

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