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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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33 全ては秘術士の為に、ぶつかる少女達の噺

「ワタシを相手にその様な大きな獲物でかなうと思っているのか?」


「大した自信だな。ではその胸を借りるとしよう」


 エレノアはサイドステップでミルの左側に出て、体を右回りに捻りながら剣を横に払う。


 当然予測していたミルは剣で受け止めて、更に押し返し、体勢を崩したところを下から上へ凪ぐ。


 崩れた体制を無理に戻すことなく、エレノアは後ろへ一回転し、左腕に填めたスモールシールドで今度はこちらから押し返す。  


「よくもまぁ、そんなにデカイ剣を自在に振れるものだ」


「なんて足裁きをするんだ。動きもトリッキーで読めん」


 正に柔と剛の剣豪同士の闘いは、横から手を出すなんて事はできそうもない。


 スピード任せの突進に、天使は翼を拡げて天井近くに回避する。


 それを追うため、エレノアは精霊召還で、全身に風を纏い宙に浮く。


 聖光気は大きく分類すれば精霊力と大差はなく、ここでなら召還に使う精霊力を集めるのは難しい事ではない。


「閉鎖空間なら翼を拡げるより、こっちの方が機動力は上だと思うぞ」


 言われるまでもなく、空中戦を得意としていないミルは、地に足が付いている方が、体の自由が利く事は分かっている。


 空中で追い打ちを受けると、回避は全く間に合わず、翼で受け止めると羽を畳んだまま自由落下。


 追ってくるエレノアを待ち構える。


「真っ直ぐな闘い方をしてきたお前に、ワタシの動きは邪道そのものだろう?」


 数回の打ち合いで相手の闘い方を見抜くエレノアは、長い間精霊界の女王直属の近衛隊長を続けて、身につけた業を惜しみなく披露する。


 ロングソードで斬りつける回数は瞬時に5回。


 その全てが致命傷を与える切っ先で、相手がミルでなければこれでフィニッシュであったろうに、驚きを見せたのはエレノアの方だった。


「まさかワタシの剣が、こうもガタガタになってしまうとはな」


 精霊の力も宿る霊刀は、最強高度を誇る鉱石も簡単に切ってしまえるものを。


「その受け流し方は神業だな。ガードはギリギリだったのに、切っ先を追う目は確かなようだ」


 大剣の強度は確かに高い、何より神懸かった今の剣捌きを前に、エレノアは自分の未熟を悔やみはしない。これは必然の結果だ。


「まだ予備の剣は残っているが、あのグレートソードをどうにかしないと、結果は同じだろうな」


 新たな剣を構えるエレノアは、どう責めるかが決められない。


「どうした? もう終わりか」


 勝利を確信したミルの目はだがしかし、次の瞬間曇る事となる。


「気付いたか?」


「おのれ、まさかこうもあっさりと、やられてしまうとはな」


 この場所に今立っているのは6人だけ、同じ鎧を着た兵士達は気を失うか、呻きもがいている。中にはもう息をしていない者もいる。


「皆さんお強い方々でした。手加減もできませんのに、ヘタな抵抗をされては、行き過ぎる事もしかたのないこと」


 援軍は現れない。恐らくはこの部屋で動けるほどの兵は、天上界にはもういないのだろう。


「お前も知っての通りだ。この者共はそれぞれの分野で究極と言える力を持っている。さぁ、どうする?」


「どうするもなにも決まっている。私一人でも全員を叩き潰すまでだ」


 フランシュカを構える手が震えている。


 エレノアとの打ち合いは、ミルにもかなりの負担を強いていた。


「もう、決着はついてますよ。ミルさん」


 突如として現れる、ハッキリと感じられる背後の気配。


 振り返れば縁取りが赤い、全身の貴重を黒とした装束の獣王が立っている。


 手には見覚えのある袋が、ミルは慌てて自分の腰に手をやる。


「この術衣には隠密として、必要なスキルが多くあるんですよ」


 そのスキルの中にある奪取の能力は、気付かれることなく相手の物を掠め取る事が出来る。


「ウイックさんの魔晶石は返してもらいました」


 これで目的は果たせた。


 少女達は相談した。先ずはウイックを救出する。


 ミルの事が気掛かりなのは違いないが、イシュリーは奪い返した袋の中身を取りだし、それを手にこの広間から出る。


 先頭はマニエル。

 続くイシュリーの直ぐ後ろをエルラム、ノアールが次いで殿しんがりをエレノアが務めた。


「彼女、追いかけてこないわね」


「貴方との打ち合いで、力を使い果たしたのではありませんの?」


「せやな、あれは凄かったモンな。ウチには何をやっとったんか、ほとんど見えんかったわ」


 エルラムとノアールは通路に出た事で、自由に動ける聖人や天使がまだいるはずと、そちらを警戒するがそれも大丈夫そう。


 天空伝へと続く階段を登るのも邪魔は入らず、スムーズに天空回廊に辿り着く事ができた。


 何かの罠かもと考えたが、聖王宮に着いて直ぐにジャンプすることができた。


 全員が合流したあの森に戻り、その時には既に魔晶石は肉体の再生を始めていた。


「流石にここまでバラバラにされると、簡単には戻れないんですね。根性が足りませんよウイックさん」


 イシュリーは手にした魔晶石が、望んだ形に戻る瞬間を待ちわびて、抱きつく準備を整えた。

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