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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
145/192

30 剣士の少女、正気を取り戻すかもしれない噺

 ミルが意識を取り戻した時、彼女の体は男の手によって抱えられていた。


「なっ!?」


 胸に感じる刺激、お尻からも頭に響くような感覚が。


「いや、お前とは本当に随分と久し振りだからな。なんか懐かしいわ」


 衝撃の思い出と言われて、一番に思いついた事を実行中。


「や、やめ……、やめなさいよウイック、ちょっと……」


 言葉とは裏腹に体は抵抗をしようとしない。


 それより何より。


「ミル、お前いま俺の事を、いつもみたいに呼んだよな」


 これは効果覿面のようだ。


 しかも抗う事がないのなら、満足がいくまで行為を続けてやろう。そのつもりだった。


「ゆるせんな。花嫁にそのような不埒な行為、教義以前に男として許すわけにいかんな」


 真上には天使の大群、先頭に立つ男はどことなくミルに似ている。


「お前がミシェルフ様か?」


「ほぉ、キサマは大海洋界の者のようだが、ワタシのことを知っているか」


 他の天使より一際大きな翼をはためかせ、ミシェルフは地表に降り立つ。


「エンゲル=コーバンスを使って、俺の邪魔をさせていたのはお前のはずだが?」


「なるほど、キサマがウイック=ラックワンドか。なんともおなごが如き貧弱な輩が、我が花嫁に何をしているか、聞いてもいいかな?」


 怒りの感情はない、興味本位の眼差しで秘術士の返事を待っている。


「なに、とんでもねぇ美女が迫ってくれたんでな。噂の聖天使様と知って、ちょっと寝取ってやろうかと思ってよ」


「流石は大一級危険分子だな。仲間としていた女にまでそのような行為を。捕獲だの排除だのと生ぬるい事ではなく、最初から抹殺を命令しておくべきだったか」


「おいおい、オーガイルで殺傷は御法度じゃあねぇのかよ」


 このミシェルフと言う男からは、他の天使や聖人とは違う空気が漏れ出ている。


「おい、ミナエル」


「はっ、はい! 兄様……」


「何をいつまでも、そのような無様を晒しているつもりだ?」


「申し訳ありません。この怪しげな術にはまり、力が入らなくなって……」


 もう少しで我に返るところだったのに、いよいよ怒りだした兄の一括に、精神支配が甦ってくる。


 それだけ強い暗示を与えられているとなると、ノアールの心配が的中する前になんとかしないとならない。


「い、いい加減に、や、やめ……あっ」


 ウイックは指先に理力を集め、与える刺激を強くする。


「そ、そんな強くぅぅぅぅう」


「いい加減にしないか!」


 配偶者となる少女を好き放題にされては、それは黙ってはいられないだろう。


 怒髪天の兄天使が出してきた手札は、これもまた教義違反に触れる行為。


「人質にしたって事か?」


 一人が右腕、一人が左腕を抱えて、天使に引っ提げられて飛んできたのは、状況確認ができなくなっていたエレノアとマニエル。


「念話が通じないと思ったら、あの指輪か」


 二人は宿屋の中で拘束されて、ここへ連れてこられた。


「ウイック=ラックワンド、すまん」


「エレン、マーニー、二人とも無事なんだな?」


「うん、別に怪我もしてないし、精神操作もされてないよ」


 ただ拘束するために、身体機能を低下させる指輪を填められてしまった。


「子孫繁栄のために人体という物を研究しているからね。その副産物さ」


 再び飛び立つミシェルフが、二人の前に立ち塞がる。


 ここが魔門界なら、マニエルは竜人化できて逃げられただろう。

 ここが精霊界なら、エレノアも精霊を召還できただろう。


「こりゃ、完敗だな。俺達の負けだ」


 ここで負けを認めると、きっと失う物は大きい。


 しかし勝利の確率がほとんどない状況で、二人の人質を助ける手段が思い浮かばない。


「ウイック……」


「えっ、な、なんだ?」


 耳元で囁かれ、最初は空耳かとも思ったが。


「ミル、お前」


「しっ!」『黙って、悔しいけどあんたのおかげで、全部思い出せたから』


 間一髪、光明が差してくる。


 念話で返してきたと言う事は、間違いなく正気を取り戻したと言う事だ。


『じゃあ、どうにか二人を助ける事ができたなら』


『ああ、後は秘術で飛ぶだけだ……、いや、お前のお袋さんは?』


『さっき言った事は本当のことよ。フリーリンに会ったでしょ』


 まさかそれが本当なら、彼女は四十を越えている事になるが。


『どう見ても俺達と同年代なんだがな』


『……本当のことよ。あんた、念のために言っておくけど、あの人にいたずらすんじゃあないわよ』


 こっそりと太股を抓られるが、顔に出すわけにはいかない。


「おい、そのいかがわしい行為をさっさとやめろと言ったはずだぞ」


 ミシェルフは苛立ちを隠すことなくヒステリックに喚き散らす。


「すまんすまん、あまりに気持ちよすぎて、ついな」


『どうする?』


『とにかく俺は、ここに立っているからミルはアイツの元へ』


 ウイックはミルから離れ、諸手を挙げる。


「こい、ミナエル!」


 兄に呼ばれ、翼を拡げ飛び上がろうとするミルは振り返り、大剣で男の腹を貫いた。


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