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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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26 二人の女性の情熱に押され、本題から脱線する噺

 宿屋で再会を果たしたイシュリーは、周りの目を憚ることなく、勢いよくウイックに抱きつき、男の体温やニオイを体一杯に実感する。


「ウイックさん、いつものお願いします。断るなんてありえませんよ。頑張った私にはご褒美が必要です」


 そう言うとイシュリーは濃厚なキスをしてきてお強請り。


 ウイックはいつもより少し長めに優しく少女の体を堪能した。


「ありがとうございました。で、なぜ貴方がここにいて、自然と私の後に入り込んでくるのです?」


 いつものように流れで、全員にスキンシップが当たり前になっているウイックは、求められるままに行為を続けているが、それを納得していないのがイシュリー。


「なぜ貴方がここに居るんですか?」


「なんだ獣王、久し振りだというのに素っ気ない態度だな」


 旧知の仲ではあるが、取り立てて仲良くしていたわけではない。


 それでもティーファとは良好な関係を築いてきたし、その側近と啀み合った事などは一度もなかった。


「貴方はずっと陛下の元で、操を立てていく人かと思ってました」


「確かにウイック=ラックワンドに出会うまでは、私もメルティアンとして、独り身で子を頂くと思っていたよ」


「えっ、子供は作るつもりだったんですか? 同性愛者ではなかったということですか」


「ほほぉ、お前が私をどういう目で見ていたか、今ようやく分かったぞ」


 目に見えない火花バチバチで、話が中々進まない。


 一通りのレクリエーションを終え、ウイックは二人の間に割って入り、今後の方針について話を進める。


「やっぱり式当日が、最初で最後のチャンスとなるんだろうな」


「ああ、今からもう一度天空回廊を抜ける事は、頼めば可能だろうが、天空宮まで誰にも見付からずに、と言うのは流石に不可能だろう」


 エレノアが行った事があるのは天界でも中腹当たりまで、そこより先は天使の中でも階級によって上がれる上がれないが決まってくる。


「あのでっかい聖堂が会場になるんだったら、相当の人であふれかえるんだろうな」


 そこで混乱を巻き起こしてミルに近付く。


「なんて事はできねぇか?」


 例えば軽い小火騒ぎを起こすとか。


「警備の数も少なくはないでしょうし、ミレファールさんに近付こうなんて、至難の業なのでは?」


 彼女の手を取って逃げ出すだけなら、簡単に成功するかもしれない。


 しかし状況が分からないままで、高いリスクを冒したくもない。


「時に私はその間、どうしていればいいんでしょうか?」


 エレノアの部下を合わせた四人は列席を許され、場所もいいところに着けそうな事を、フリーリンからは聞かされている。


「大丈夫ですの、イシュリーさんにはワタクシの“忍者装束”で“くノ一”になって頂きます」


「私がエルラムさんの術衣を着るのですか? それはちょっと……」


 今まで色んな衣装を見てきたが、その奇抜さ故に着ろと言われても、受け入れがたいのだが。


「隠密行動をとるなら、これが一番ですのよ」


 “くノ一”の術衣は認識阻害ができ、身体の強化も期待できる優れもの。


「場合によっては切り札にも使える逸品ですのよ」


 それが故に惜しまれるのだ。いい物と分かっていても、売れない理由が分かっていないのだ。イングラムの一族は。


「これが現物ですの」

「えっ、ちょっと可愛い」


 拳法着にもにて、動きやすさと丈夫さが売りの衣装。


「これなら私、着たいです。お借りできますか?」

 エルラムは至極ご満悦。


「そうか、認識阻害ね。それができるってんなら、確かにイシュリーに働いてもらうと言う手もあるか」


 ミルに人知れず近付き、話をする事ができたなら……。


「なんならこの呪詛具で、話す必要がある人だけ別空間に飛ばす。ちゅうんはどうや?」


 ノアールが持っているのはあの男、エンゲラ=コーバンスの使った道具。


 そこに新しく呪いを詰め込んできたと、ちょっと物騒な事を言っている。


「呪いの空間やから、意識だけを飛ばす事もできるさかい、ミルって人だけを招き入れる事もできるで」


 それは便利。ではあるが、そうは問屋が卸さない。


 皆の注目を集めるミルが、意識を途切れさせてその場で卒倒してしまえば、式は取りやめ、連れ出すチャンスを失い事になる。


「とにかく時間はまだある。出せるだけアイデアを振り絞って、最良の作戦を立てるべきだろう」


「その辺はエレンに頼むぜ」


「今日はもうそんなに時間はないが、明日は一日かけて、もう少し情報を纏めよう、式典前に街をどう回るのかとか、式次も前もって知る必要がある。来賓なども分かっているに越した事はないな」


 式が終われば即、天空回廊に入ってしまうと思われる。


 式が執り行われている間しかないのだ。


「それじゃあ私、エルラムさんの服で、上の様子を見に行きましょうか?」


「いや、単独行動は危険すぎる。そいつがもう一着あればいいが、一人はダメだ。何かあっても、どうにかできる時間がそれこそない」


 試着しているイシュリーと、簡単にサイズを合わせて仕立て直すエルラム。


 瞬く間にイシュリー用に仕上がる術衣の能力を試している所へ、部屋の扉が開いて、数人の黒い服を着た男達とフリーリンが入ってきた。

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