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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
140/192

25 剣士の少女の今、ただ待つだけの男の心の内の噺

 ミルとの対話を許されたのはエレノアのみ。


 そちらは彼女に任せ、別室で待つウイック、そしてマニエルとノアール。


 3人にお茶を用意してくれた、この施設で働く聖人の女性に話しかけ、オーガイルで話題のニュースについて尋ねてみた。


「それはもちろんミシェルフ様とミナエル様のご婚礼についてですね。なんと言っても、お二人はあのエヴァマラーラ様のご子息であり、ミナエル様は亜天使であるご自身を磨き上げ、聖天使への昇華を認められたのですから」


 その話題で持ちきりになるのは当然だと言う。


「それでそのエヴァマラーラ様はミシェルフ様とミル、いやミナエル様の実の母親で、結婚するって二人は本当の兄妹なんだろう?」


「えぇ、そうですよ」


「天使は兄妹で結婚する事を許されているのか? 母親はそれに何も言わないのか?」


「変な事を気になさるのですね。徳の高い天使様同士が次代を授かるのは当然ではありませんか。兄妹である事がそんなにおかしいですか?」


 どうもこの世界の常識というのは、他の世界と違いすぎる。


「どうでもいいか。早くミルの問題を解決して大海洋界に戻ればいいだけだ」


 女性が立ち去り、ウイックはマニエルとノアールが着いているテーブルに近寄る。


「ミルは天使だが、大海洋界で育った人種ひとしゅの女だ。そんな簡単に割り切れるとは思えねぇんだがな」


「なんか厄介事になってるんだろうね。私もミルさんはウイック一筋だと思うし」


「おいおい、それはないだろ。アイツはいつも俺のやる事に、ケチをつけて文句ばっか言ってるんだぜ」


 妹の戯れ言と切って捨てるウイックは、僅かな動揺を隠せていない。


「本当にウイックって、女心を全然分かってない。と言うか考えもしてくれないよね」


「せやろな、新参者のウチもそう思うくらいや、ホンマ罪作りな男やで」


「女にだらしないのはしょうがないにしても、釣った魚にももっとエサを与えるべきよね」


「普段から優しさを見せるくせに、肝心な所はないがしろやもんな」


 待っている時間、ここからはもうずっと針のむしろ、流石のウイックもめげるかと思ったが、男は飄々として彼女達と一緒に自分に非難を浴びせて過ごす。


「ダメだよノアちゃん、この人なにも応えてないよ」


「せやな、感情を殺しとるわ。見事なブロックしとるけど、これ以上は可哀想やな、頬が強ばってるで」


「あっ、本当だ」


 妹たちに弄られ続けて数刻が過ぎ、エレノアが戻ってきた時には、幾分頬がこけているウイックに、メルティアンは笑いが止まらない。


「そうかそうか、確かにそんな感じだなお前は。いいかウイック、これからは私を満足させる事を第一に考えるんだぞ」


「ちょっ!? ポット出でなに抜け駆けしてんのよ」


「ポット出ではないぞ妹君。私とこいつは一夜を共に……と言うほど時間はとってないが、私にとっては濃密な時間だったからな」


「その割りに、人のことを牢屋に放り込んだけどな」


「それがあの時の私の職務だったからな。しかし今の私はフリーだ。お前を牢屋に入れて独り占めというのも悪くないがな」


「……そんな事より、早く報告してくれねぇか?」


 どうにも口では勝てそうにない。


 脱線した話を修正して、ミルの様子を教えてもらう。


「剣士殿とはあまり面識がある方ではなかったからな。正しい判断ができているかどうかは分からんが、話している感じから言って、特におかしな所はなかったな」


 面会に応じたのはミルだけだった。


 ミシェルフがいない事は好都合と思い、お祝いの言葉を述べた後、少しだけという約束で座談を受け入れてもらった。


「ちゃんと彼女は私の事も覚えていた。ラムーシュでの騒動の事も改めてお礼が言えた」


 それからしばらく、あれからの冒険話を聞かせてもらった。


「以前の彼女と全く違わない快活な様子でな。お前の話を聞いていなければ、多分その事にも気付かなかったのだがな」


 エレノアは一つだけ気に掛かる事があったとする。


「ウイック=ラックワンド、お前の名前を出した時の彼女は、眉一つ動かさなかった。そう、何の反応も見せなかったのが気になったのだ」


 それが精神操作された結果なのか、彼女自身が意識しての行動かは分からないが、何かやはり不自然な問題を抱えているのは間違いないだろう。


「最後に結婚について聞いておこうと思ったんだが、タイミング良すぎる事に、お付きの者が入ってきて、そこで時間切れが宣告されてな、二日後の式に参列を許されて面談は終了した」


 場所は聖王宮。早朝から聖都を周り、婚礼の儀を終わらせると天界に上り、天空宮で三皇天使からの祝福を受けるのだそうだ。


「今日はこれからウエディングドレスの試着なのだそうだ。もう式当日まで顔を見る事もできないだろう」


 ミルが望んで故郷に帰り、新生活を始めるというのであれば、口出しをする事はできない。ウイックはただその真意が知りたい。


「さて、我々もキシリアへ戻ろうか、にしてもそのゴーレムは本当に良くできているな。誰も人ではないと気付かなかったものな」


 エルラムと入れ替わったライアのゴスロリ姿を、改めてマジマジと眺める。


「こいつのおかげで怪しまれずに別働隊を組めたんだからな。さぁ、早くこいつをイシュリーに帰してやろうぜ。エルならもう仕事を完了してる頃だろうからな」


 落ち合う場所はエレノアが取っている宿の客室。


 四人と一体は天空回廊から聖王宮へと戻っていった。

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