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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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24 眠れる聖都の獣王と忍ぶ法術士の噺

 アイラの誘導に従い、エルラムは慎重に天空殿の中を移動する。


 スタンドアローンで動いていても、マナを遮断する隔壁があっても、精神世界で繋がっている主とゴーレムを切り離す事はできない。


 カガクと秘術の混合ハイブリットで作られているゴーレムは、正確に主の居場所を真っ直ぐに示している。


「この“くノ一”の術衣もよい働きをしていますの」


 隠密行動を可能とする特殊衣装を身に纏い、不思議な術をいくつも行使して、天空殿の職員達の目を欺き、エルラムは地下へと続く階段にたどり着いた。


「アイラさん、ここで間違いないのですね」


 法術“エアロポケット”内に納めたゴーレムを通して感じる,微かな獣王の気配を頼りに階下に降りる。


「なんですの? これってもしかしてなのですが、魔力ではございませんか? 少しおかしな気配も感じますが」


 魔力と言っても似て非なるもの、一番近いのは理力なのだが、秘術では操れない異質なマナは、この世界の術式とは系統が異なる。


 隠密スキルの中にある解析スキルで観る限り、このアンダーグラウンドは別の次元と繋がっている? とでも言わないと説明できない空間になっていた。


「なるほどですの、ここはマナが遮断されているのではなく、全く異質なマナの所為で阻害を受けているということですの」


 それならと、術衣の能力を全開に、この地下エリアにある全ての気配を感じてみせる。


「ここから3つ目、左側の扉に人の気配ですの」


 それが獣王の物かは分からないが、ここより下への通路もなく、今この階に人の気配は一つ。


「アイラさんは流石に、このマナの影響で活動を休止してしまいましたが、きっと間違いございませんの」


 エレノアの言っていた、単純な保護施設というのとは違う、時間があれば徹底的に調べたいところだが。


「……今はそのような暇はありませんの。さてさて、この扉をどうやって開ければいいのやら」


 機械的な鍵が掛かっている様子はなく、術式で解除する事は不可能、こんな所まで来て手も足も出ないでは、仲間達にも格好が付かない。


「ああ、そう言えばノアールさんからこれを頂いたのでしたね。一度試してみますの」


 取り出した呪符、ストレージから物を取り出す力が使えるという事は、自分達の使えるマナもここにはあると言う事。


 ならばこの世界で紡がれた呪符は、ここでも効果を示せるということ。


「……幸運は我々に味方してくれますのね」


 開かれた扉、中にはベッド、シーツには皺一つ付いていない。


「息はしているようですが、何かによって眠らされているようですの」


 その何かについて考えてみて思ったのは、教義がどうのとか言いながら、簡単に呪詛に手を染めて、悪びれない連中の考えそうな事。


「……ノアールさんの読み通りでしたの。この気付け薬を使えばよいというのですね」


 アンテの状態を後からノアールに検証してもらった。


 猫娘が海底都市に最初から赴いて、体の方を診断していれば、簡単に呪詛を解いてやれたと豪語していたが、その自信の立証は今果たされた。


「おはようございますイシュリーさん。ご気分は如何ですか?」


「あ、エルラムさん、どうしてここに?」


「お迎えに上がったのが、ウイックさんでなくて申し訳ございませんの」


 二人の少女は顔を見合わせて笑いあった。


「平気そうですね。よかったですの」


「ありがとうございます。私、ミルさんのご実家でお持て成しを受けて、食事を頂いて……」


 その日にエヴァマラーラとミルが再会したのだが、それを知らされることなく客間へ通されたイシュリーは、念のためにマスクを着けたまま就寝したのだが……。


「気が付けばここで寝かされていて、エルラムさんに起こされてました」


「イシュリーさん、その指輪は?」


「ああ、これは最初から術式が無効化されていて、今はただのアクセサリーなんですよ」


 イシュリーはウイック達と冒険をすると決めた時はまだ、世間知らずの人見知りとして、大きな問題を抱えていると自覚していた。


 その不安を解消してくれたのは他ならぬウイック、の母であるマーリア=ランドヴェルノだった。


「お守りにと頂いたピアスをずっと付けていたおかげです。精神を落ち着かせる効果があるんですよ」


 生まれて初めて耳に穴を開けてもらい、着けてもらった赤い石の付いたアクセサリー。


「それを見抜けなかったものだから、操れない貴方を眠らせて監禁したのですね」


 ただ寝かされていたので、状況は全く分かっていない。


 エルラムはアンテの無事を告げ、そちらの事件解決の際に仲間が三人増えた事を教える。


「霊冥界の人達が力を貸してくれたんですか」


「はい、そうですの」


 その後、オーガイルに追いかけてきた自分達に、また新たな協力者が現れ、烙印が刻まれたメルティアンのことを話した。


「エルラム=カシムさんはお互いよく知った間柄ですが、結構クセの強い方ですから、もしかしたらミルさんと衝突することもあるかもしれませんね。ふふっ……」


 精神障害はなさそうだ。


 このところ毒素を隠すことなく表に出す獣王に、苦笑いが浮かんでしまうエルラムは、そんなイシュリーと共に上階に戻る。


「さてワタクシ達は誰にも見付からないように、聖皇都へ向かうこととなりますが」


 問題は山積み、どうやって天空回廊を誰にも見付からないように通るのか?


「なんて、そんな心配の必要はございませんの」


 エルラムは自慢げに妖力を使った。


 ウイックの“遠渡えんとの秘術”を研究して体得した法術。


「そうですね、名前は“ディストゲート”とでもしましょう」


 事前に用意した写真を元に、二人の少女は転移した。

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