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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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23 少ない情報から最良の行動を選ぶ為の噺

 ウイック達はエレノアの部下として、聖王宮まで付いてきた。


 名目は挙式を待ち望む新郎新婦を祝福する事。


 ラムーシュの王のための土産話にと、お願いしたら快く許可を出してもらえた。


「一応は私は精霊界の代表代理だからな、その付き人のお前達にも、指輪は必要ないという事だ」


 案内役はフリーリン、彼女は普段は聖皇都キシリアに家を持って生活しているが、ミルの実家には自由に出入りを許可されている。


 待ち合わせまでは少し時間がある。


 一足先に聖王宮にまで来た一行は、建物前で頭を抱える。


「なぁエレン、ここって教会だよな」


「ああ、大海洋界で言う大聖堂というやつだな」


 この様な場所に牢屋があるとは考えづらいが、もしもここで監禁されているのだとしたら、確かに盲点になるのだろう。


「いやいや、慌てるな。言っただろう、獄中にあるとしたら天空殿だと、ここはまだ天界ではないのだぞ」


「そ、そうか……」


 この下層ならイシュリーの反応を確認できるのだ。慌ててはいけない。


 もちろんそれも、発信装置が取り上げられていなければの話だが。


「ウイック、後ろ!?」


 マニエルが突然木の上から振ってきた、二つの影に気付いて注意する。


「ああ、分かってるさ。こんな所でいきなり襲ってくるなんて、いったいどこのどいつだ」


 頭の陥没が回復したところで振り返るウイックは、激痛をくれた相手を確認して激しく動揺してしまう。


「ラ……、アイラじゃあねぇか」


「ライアで合ってるよ」


 マニエルにはちゃんと見分けが付いているというか、金と銀の違いがあるのに間違える方がどうかしているウイックは、インファイターゴーレムの一撃に疑問符が消せない。


「な、なんで俺、死んでもおかしくない攻撃を受けなきゃならねぇんだ?」


「きっとイシュリーの不満を、代わりに実力で伝えてるんだよ」


 それだけでは片付けられない痛みだが、今はそれどころではない。


「この子達、スタンドアローンで行動しているみたいですの」


「ど、どういう意味だエル? す、すたん、ど?」


「単独行動ですの。イシュリーさんは身動きが取れないという仮説は、おそらく間違いありませんの」


 イシュリーが行動不可能になった時の緊急システムにより、二体は事態の解決のために自立行動をしている。


 アンテから見せてもらった設計書で、仕組みは理解している。


「そうだ。二人がいるんならさ」


 マニエルが妙案を思いつき、全員が納得し、準備を終えて間もなくフリーリンがやって来た。


 皆は聖王宮の中へ入れてもらい、直ぐに天空回廊まで案内してもらった。


「これは?」


「えぇ、マナを使った転移術式ですの。上層階という表現をなさっていますが、どこに飛ばされているのか実際には分かりませんの」


 マナの地脈の濃いポイントで、絶えず聖光気が放出されているそこを天空回廊と呼び、飛ばされる先が更に純度の高いエナジーに満ちた空間であることから、上位種族が住まうに相応しい土地だとされているようだ。


「妖力も魔力も精霊力も人の体に害はもたらさないが、聖光気は強すぎると弱い体には毒だからな。天空回廊と呼ぶ転移術式で選別しているって訳か」


 今いるメンツなら、なんの問題もないだろう。


 エレノアが先頭に立ち特殊な転移門の中に入る。


 全員が転移を完了し、到着した天空殿は、この世界の政治を司る役場といった役割の建物だった。


「なるほど、ここなら特殊な施設があってもおかしくないな」


 フリーリンが席を外し、ウイック達は作戦会議を始める。


「ああ、そうだ。それにここの建物は濃度の高い聖光気から、体を守る隔壁にもなっているからな。その機構を利用して隔離もできる部屋を作っている。本来は保護施設なのだそうだぞ」


 階層分けされた天界は上層ほどに聖光気が高くなる。


 その為に天界では子供が生まれると低層に、場合によっては聖皇都まで降りて子育てをする。


「つまりここに?」


「間違いなかろう。獣王はきっとこの建物にあると言う、隔離施設にいるだろう」


 エレノアに出会えて、ここまではトントン拍子で事を運べた。


「先ずはイシュリーの無事を確認してからだな」


 だがここからは、また見極めが重要になってくる。


 ミルが不信感を抱く兄、ミシェルフとの婚姻の噂が盛り上がるなんて考えられないが、イシュリーが人質にされて、大人しくしているのかもしれない。


「とにかくマーニーの策に沿って、慎重に行動を起こすとするか」


 ウイック達は聖王宮の個室で、ミル達の到着を待つ事になる。


 ただし面会可能なのはエレノアのみ。


 ウイック達四人はその間、天界の教義についての講話を受ける事になっている。


 信用をされていないのではない。


 天使は他者との交わりを最低限にする事も、教義の中に含まれているのだ。


「こちらの準備も整っていますの」


「ウチの方も呪符の準備はできとるで」


 エルラムは着替えてノアールから呪符を受け取り、ウイックがイシュリーの二体のゴーレムをストレージから出した。


 フリーリンが呼びに来た時が行動開始だ。

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