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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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17 いざ、天空回廊を通り抜け、天界に訪れる噺

 指定された場所、聖王宮にたどり着いたミルとイシュリーに、フリーリンは一つのアイテムを手渡した。


「これは?」


「天使様であるミナエル様には必要ありませんが、お付きの方にはこちらを身につけて頂かなければなりません」


 出されたのは指輪。


 ミルは険しい表情でフリーリンを睨み付ける。


「そちらからの要望で、上へ向かうはずですが?」


「決まり事ですので、ミナエル様にはご理解頂けると思うのですが……」


 ミルがこの世界にいたのは随分と昔の事、そんな慣習があったかどうかも覚えていない。


「第一この子は、私の付き人でも何でもないわ。なんなら私達はここで待っているから、そっちから降りてくるように伝えてもらってもいいんだけど」


 事情はどうあれ、自分を捨てた親よりも生死を共にした仲間の方が、ミルにとっては大事。


 得体の知れない道具を受け取る気にはなれない。


「ミルさん、私なら大丈夫ですよ」


「ダメよ。アンテかエルラムがいれば鑑定してもらえるだろうけど、この世界の実行支配ってやつを、甘く見ちゃダメだからね」


 事の成り行きを見守り、言葉のないフリーリン。


 命令に忠実で、イレギュラーに慣れていない彼女は戸惑いを隠せない。


 ミルが慎重に慎重を重ねるのは、イシュリーが上へは絶対に二人でと言って引かなかったから、ここは妥協が許されない。


「ミルさん、私に何かあれば、あの子たちが何とかしてくれます。それに私にはこれもありますから」


 しばらく考えて、ミルは頭を縦に振る。


「貴方を信じるわイシュリー」


 イシュリーはマスクを先に着けて、フリーリンから受け取った指輪を右手の中指に填める。


「それでは参りましょう」


 フリーリンの案内の元で入った聖王宮とは、とてつもなく大きな聖堂の事だった。


 正面口から入ると、反対側の壁には天使の巨像が見えてくる。


 その像の両脇にも入り口があり、それぞれから入った正面に別の像が祀られ全てが平等に三柱の皇天使を崇拝していた。


 三角形のエントランスを抜けると、長椅子が並んでおり、聖堂内は多くの信者が祈りを捧げていた。


 オルガンが奏でる聖歌が、静かに流れるなか、入ってきたミル達に、信者は目もくれない。


「それではお二方はこのまま、あちらの扉から出て頂き、その先にある天空回廊へ向かってください。その先の案内は別の者が同行いたします」


 フリーリンの役割はここまで、ミルの不信感は益々増すが、ここで引き返す事はできない。


 聖王宮を出ると大きな階段があり、それを上れば大きな扉が現れる。


 側に羽のある少女が一人立っていた。


「お久し振りです。とは言え私は覚えていないんですけど、分かりますか?」


 見た目でいえば、ミルとそう歳は離れていないように思える。


 だがしかし、天使のこれもまた人種ひとしゅと大きく違う生態の一つであって、羽の生えた天使は急速に成長し、あっという間に成人年齢に体だけが育ってしまう。


「今年で11歳になるのかしら?」


「はい、私は今、兄様の補佐役を仰せつかっております。姉様」


「本当に大きくなったのね。クランヴェル」


 ここで妹と再会するとは思っていなかったが、ミル達の案内なら、確かにクランヴェルが適任なのかもしれない。


「元気そうね」


「はい、天上界は大きな問題もなく、穏やかに日々を過ごしております。姉様は如何ですか?」


 姉妹としての思い出はそう多くないが、こうして顔を合わせれば、いくらでも話したい事は浮かんでくる。


 しかしいつまでも、ここで雑談を続けるわけにもいかない。


 天空回廊への扉は開かれ、中へ入ると、三人の体はただの一歩も足を進めることなく、背負っていた扉が瞬時に目の前にきて、そこを潜るとそこは天界にある、天空殿のエントランスホールだった。


 ミルが8歳になるまで暮らした宮殿。


 その頃となにも変わらない煌びやかな内装。


「家は姉様が暮らしていたのと違う場所に移ってます」


 天空殿を通り抜けるとその先には天使の居住エリアがある。


 ミルが過ごしたのは、ここより二つほど高い階層。


 上の階層になればなるほど、高位の天使と認められる階級社会。


 亜天使を追放した家族は、さらに3つ上に居住権を獲得したのだとか。


「じゃあ、そこに行くの? 今から?」


 母、エヴァマラーラが待つのは自宅だと聞かされ、一気に緊張の糸が途切れた。


「どうかされましたか?」


「あっ、うぅうん、なんでもないわ。行きましょうか」


 懐かしい家族の待つ家に、妹の案内でゆっくりと向かうのであった。

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