14 王女は秘術士に興味津々な噺
「それにしても強力な結界と障壁を使えるんだな。あんたも秘術士なのか?」
「も? と言う事は貴方様も秘術を扱われるのですか?」
年の頃はイシュリーより少し上か? 金髪碧眼、ツインテールの王女は、ウイックの手を取って目と目を合わせる。
距離感がおかしな王女は名前を尋ねてきた。
「俺か? 俺はウイック=ラックワンドってんだ」
「ウイック=ラックワンド様? 破壊神と名高い方と同じお名前なのですのね」
流石は一国の王女様、世情にも疎くはなく、ウイックの悪名を瞬時に思い出す辺り、ヘタな受け答えをすれば、まずいことになるともしれない。
「お若くして大秘術士と謳われておいでとお聞きしましたが、それにしても貴方様は、いくらなんでもお若過ぎるようにお見受けしますが」
秘術士が名を馳せるほどに、その実力を示せるようになるのは、一般的には40~50ほどの年齢になってからのこと、ウイックの歳は駆け出しと言われるのが普通の話だ。
「別に自分で大秘術士と名告ってるわけでもないし、破壊神と言われるような大それた事をやった覚えもないぞ。俺の名前は間違いなくウイック=ラックワンドであり、俺以外にそんな名前の人間について、話を聞いた事もないな」
以前に名を語った中年秘術士に出会った事はあるが、世間のイメージとしては、最低でもあれが大秘術士と呼ばれるのに、必要な年齢ということなのだろう。
「で、では貴方様はいくつくらいの秘術を操りになられるのですか?」
「いくつかか? 数えた事はないが、少なくとも30以上だな」
「30!? それは本当なのですか?」
王国の宮廷秘術士だって、そんな数を使えるなんてありえないことだ。
「それに思いついて試して、使えるようならそのまま記録に残して、使い物になるように仕上げる事も普段からあるからな。それこそ数えきれず、ってことになるだろうぜ」
ウイックの話に言葉をなくす王女アイナニナ。
「で、では貴方様は“蘇生の秘術”を操りになられるのでしょうか?」
「蘇生かぁ、俺はどちらかと言えば攻撃系の秘術士だからな。一応は回癒や復元なら使えるが、神官や巫女のようなヒーラーじゃあねぇんだ。だから使えるかってぇと、難しいだろうな」
向き不向きで言えば苦手な類の術、仲間を持つようになってからは使えればと考えもしたが、それを試す間を持つ事もできず、最初の頃は理力も十分ではなかった。
「苦手な術を使うには、より一層に多くの理力量が必要になるからな」
「そうですか……、申し訳ありませんでした」
蘇生を望んでいるのは兵士や付き人の事を思っての事だろう。
沈んだ表情になる王女、まだ手は離してくれない。
衝動的に空いている左手が動きそうになるが、意識的に手を止めたウイックはその手で頭を掻く。
「ああ、王女さんも随分と若いみたいだけど成人したくらいか? いや、もうちょっと若いか」
「あら、はい! ワタクシはよく成人と間違われるのですが、まだ12歳なんですよ」
「12ぃ!?」
「出会って間もないのに、貴方様が初めてです。ワタクシの年齢に気付いて頂けたのは」
いや、さすがのウイックもそこまでは見抜けていない。
体付きから最初は成人年齢の15歳かとも思ったが、顔つきからイシュリーより年下かと感じた程度の事。
「本当に助けて頂けて、なんと感謝すればよいか」
「いや、そんな事は気にしなくていい。なにより姫さんは自分の身を自分で守ってたじゃあないか」
「いえ、それでは解決には繋がりませんでした。守るばかりでは、あの魔物にいつしか食われていたと思います」
しかし王女様はその白い、神官衣を思わせるワンピースのドレス姿からも、癒し系の術に長けているに違いない。
「俺に蘇生を期待したが、姫さんの方がよっぽど向いてるんじゃあないのか?」
「一応は習った事があります。ですがワタクシにはそれほど高い理力を操る資質がありません。ワ、ワタクシがもっと鍛錬を続け、貴方様ほどの能力を身につけてさえいれば、こんな……」
興奮するたびに顔の位置が近くなる王女様は、いよいよ鼻先がくっつくほどまでに寄って来て、流石にウイックは自分から足を遠のかせる。
「ウイックはん!」
ようやく待ち望んだ仲間の到着、アイナニナ王女は手を離した。
「おう、目が覚めたかノア」
5人の到着でウイックは、封じてある魂魄から目を離していた事を思い出し焦ったが、どす黒い煙のような魂は、動く様子を見せず安心した。
「なるほど、あの二人の魂はこの世界の存在じゃあなかったのか。それじゃあこれも?」
ノアールの説明に納得し、それならウイックが二人目にやったように、この魂にもマナを送り込み安定させれば、話を聞けるかもしれない。
それで解決法が見つかれば、呪術の解除に繋がるはず。
今は呪符の力で動きを抑えているが、この状態では話しかける事はできず、アイナニナ王女以外の六人で周りを囲み、ノアールとダンルーが一斉に呪符を剥ぎ取る。
突っ込むウイックから、自由を取り戻した魂は逃げようとするが、今度こそ進路をシズに止められ、右側にいるダンルーに標的を移して中に入り込む。
「ひょ!?」
魂魄の存在たる人形神は、依り代の取り合いをするハメに合う。




