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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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13 逃げ出した魂が変化した獣と死闘を繰り広げる噺

「広域結界か、大したモンだな」


 少女を襲う影が一つ、魔物の姿をしているが、気配がおかしい。


「霊糸はアイツの中に繋がってるな」


 元の魔物が何だったのかが分からないくらいに変化をしているが、それがどれだけ危険な存在なのかは一目で分かる。


「こいつデススペルを撒き散らしてやがる。あの騎士団が全滅していたのはこれのせいか」


 その声を聞いた者に死を告げる魔法、そんな物があると昔に聞いた事がある。


 少女はそれに対抗して魔力結界と、物理障壁を張って防御している。


 四足獣の姿をした魔物の頭に、ミサイルを一発ぶち込む。


「なかなか使えるようになってるよな俺、おっと」


 口の中で爆発が起き、デススペルを放てなくなった魔物は右前足を振り、その先端の爪が抜けて、ウイックを襲う飛び道具となる。


 軽く回避をし確認すると、魔物は飛ばした爪を即座に再生をしてしまう。


「厄介者だな。なんだこいつ? 見た事ねぇぞ、こんな魔物」


 似たものとしてフェンリルを思い浮かべるが。


「デススペルと言い、爪だかなんだかを高速で飛ばしてきたり、そもそも元の生きモンがオオカミなのかも分かんねぇし」


 少女の前に降り立ち、五発のミサイルを撃ち込むが、今度は高圧の電撃で着弾前に爆発させてしまう。


「ゴーレム……さん?」

「お嬢さん、話は後だ。その結界と障壁はちゃんと維持していてくれ」


 エルラムが言っていた。魂が小動物などに憑依すると妖怪変化となると。


「もし強い怨み辛みを抱えた魂が、大きな獣に憑いたら……」


 これ以上は専門家に聞かないと分からない事だが、獣を倒さないとならない事は間違いない。


 元の獣に恨みはないが、ここは一気に殲滅させてもらう。


 秘術士として霊冥界では制限の厳しい局面を強いられた。


「憂さ晴らしさせてもらうぜ」


 手始めに“氷弾ひょうだんの秘術”を飛ばすと、予想通りに電撃で散らされるが、同時に霧が立ち、視界が奪われる。


 “風刃ふうじんの秘術”で獣の手足を切り刻もうとするが、目で見るのではなく肌で察して見事に避けきると、いつの間にか再生している口で、牙で食らいついてくる。


「へっ、待ってたぜ」


 待ち構えていたのは石槍、空を飛ぶ能力は持ち合わせていない獣は、そのまま突き刺しに……はならず、右に振った頭から放つ咆吼で進路を変更、ウイックの技から見事に回避してみせる。


「器用なマネを!」


 瞬時にロックオンをすると、獣の着地点に“炎獄えんごくの秘術”を発動。


 周囲から狭まる炎からは逃れる事はできず、獣は全身を焼かれる。


 かなり大きめの電撃で逃れようとするが、ウイックの秘術は人智を越える強大な理力を込められていて、ちょっとやそっとではビクともしない。


 しばらくして解かれた術の中心にいた獣は、完全に焼き尽くされており、魂はとっくに抜け出していた。


「まだ逃げるか」


 追い駆けっこが続けられるのかと思いきや、直ぐ側にいた小猿に取り憑いた。


「妖怪になる瞬間ってやつか」


 体のサイズは二倍、いや三倍以上にまで肥大化し、サーベルタイガー以上に牙が伸び、雄叫びも先ほどの四足獣よりも強い。


「この状態でもデススペルは使えるって事か」


 さきほどからウイックには全く通用していないのに、懲りずに威嚇を続ける。


 口で火球を生み出し、撃ち放ってくる。


「恐ろしい一撃だな」


 飛びかかってきて振り下ろされた右拳は炎をまとい、その威力もすさまじく。


「地面が陥没しやがった。プロテクターが警報鳴らすレベルかよ」


 だからといって相手の土俵で戦うわけではない。


 ウイックは少し高度を取って、真下に雷鳴を落とす。


「さっきまで電撃を使ってたヤツが、悲鳴を上げてやがる」


 取り憑いた相手に合わせて属性も変化するようだ。


 となると今は火属性という事になるのか。


 “氷塊ひょうかいの秘術”で氷漬けにすると、中から巨大な炎で溶かそうとする猿を、空かさず光剣で一刀両断。


 大猿は絶命し小猿に戻る。


 魂も抜け出してきたが、最初に比べてかなり色が薄くなっている。


 ウイックは何枚か貰っていた霊符を一気に使い、また逃げ出そうとする魂の動きを封じた。


「俺ができるのはここまでだな。後はエルかノアが来てくれるのを待つしかねぇや」


 これで決着ではないが、今できる事はやりきった。


 プロテクターを解除するウイックの元に、一人の少女が駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか?」


 心配が必要なのはそっちだろう。


 ウイックが振り返ると、駆け寄ってきた勢いを殺さずに、少女は思いきって抱きついてきた。


「お、おい!」

「ああ、申し訳ございません。失礼を致しました」


 顔を朱に染めてすぐに離れた少女は、スカートの裾を摘んで挨拶をしてくれる。


「ワタクシはクラクシュナ王国、王位継承権第五位、第二王女のアイナニナ=ナハル=クラクシュナと申します」


「やはりそうか……」


 すんでの所で胸に向く手を止めてよかった。


 王族の家名が付いたブレスレットを左の二の腕にしているから、もしかしたらと自重して正解だった。


 近くで倒れる騎士達、その骸は王女の護衛だったのだろう。


 結界を張る彼女の側にも幾人かの女性が倒れていた。


 聞けば側仕えの次女達なのだそうだ。


「生き残りはあんただけか?」


 王女は無言で首を縦に振った。

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