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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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12 呪われた魂の解放が必要な噺

「う、うそ……これ、……こんなことだけで?」


 彼女は大学生だとか、これも聞いた事のない職種だが、その学舎には行っているだけで、あまり身をいれて学問に取り組んではいないのだとか。


「いや、こんなの耐えられない!? やあぁーーーーー……」


 ぐったりする彼女から離れたウイックは、話を聞く事にした。


 あの闇男とは夜遊びをしていた繁華街で出会い、行き摩りの関係でと決めて一夜を共にしたのだそうだ。


「色んな男摘んで、気まぐれで童貞くん狙いで、遊んだだけだったんだけどね」


 彼女の言葉の意味をほとんど理解できないまま、最後まで聞くことにする。


「HOTEL? なんか聞き覚えあるな。あぁ、セイラと行った、あそこか」


 食後のお楽しみ中に事件は起きた。


「初めてで拙いまでも一生懸命で可愛かったよ。反してあっちは忘れられないくらい立派で、すんごく気持ちよくて、もうちょっとでイケたのに……」


 満足を得られる。そう思う直前に理由も分からず首を絞められ、魂へと身をやつすこととなった。

「ダイエット考えてたけど、体重ゼロってないわぁ」


 起きてしまった事はどうしようもない。


 前向きな幽霊となった彼女が、未だに漂う身でいるのは何故か?


「あれ以来ずっと悪夢を見っぱなし、イク寸前で殺されて」


 その繰り返しの恐怖から、ウイックによって解き放たれて。


「指だけでってのが、負けちゃったみたいで悔しいけど、すんごく久し振りにイカせてもらったし、このまま最後まで、中でって言いたいけど、もういいわ。気が済んだから」


 本当ならウイック達の世界で転性を望んでいるが、それは叶わず少女は成仏した。


「きゃあ!?」


 解放する魂は最後の一つ、ノアールの意地で動きを封じた魂が、再び暴れ出して、エルラムは対応が遅れて逃がしてしまった。


「大丈夫か?」


「えぇ、心配はご無用です。ですが申し訳ございません」


 瞬間的にではあったが、強い力を発揮してエルラムを押しのけ、立ちはだかったシズも躱して、あっという間に見えない彼方に飛んでいってしまった。


「ウイックさんは霊糸、見えるようになりましたか?」


「ああ、ちゃんと見えてるぞ。こいつを追っていけばいいんだよな」


 別空間まで飛び出していってしまった魂だが、この霊糸を追って行きさえすれば、逃がす事はない。


「ワタクシはここで、皆さんの回復を待って、後を追いますの」


 気絶したままの仲間達のことはエルラムとシズに任せて、本当に逃げ切られてしまう前に、追いついて対処しなくてはならない。


「なんとなくだけど分かったぜ。ようはどうにかして魂の持ち主の願いを叶えてやりゃあ、呪いから解放しやれるって事だろ。俺に任せてくれ」


 霊糸を通して魂の居場所を探り当て、ウイックは世界を渡る。


 そこは奥深い森の中、見渡せぞ何か手掛かりになりそうな、目立った物は何も見えない。


「霊冥界でない事は確かだが、いったいどこに行きやがった」


 呪詛具に霊糸が繋がった状態だから、見つける事は可能だろうが、肉体ある身では、一歩一歩の移動が大変な場所だ。


「こいつを辿っていくしか道はねぇんだし」


 どこか遠くへ行ってしまう前に捕まえないと、ここまでも結構時間を費やしている。


「ミル達の事も気に掛かるし、どうしたものか……、そうだ!」


 ウイックはストレージからプロテクターを取り出して装着、空から追う事に。


「……あれ? なんかここ見覚えがあるような?」


 高いところから見渡してみれば、これと言った特色ある風景ではないものの、遠くの山々や、近くに見える湖、確かにどこかで見た事ある景色に見えてくる。


「……あれは、建物? 神殿かなにかか?」


 さらに高く舞い上がり、“遠見とおみの秘術”を使い観察する。


「間違いねぇ、ミカナフ教徒の神殿だ」


 天使を崇め、祀る神殿が見えるここは。


「クラクシュナ王国だな。王都オーランからも、そう遠くはないか」


 霊糸は確かに神殿の方へ伸びている。


 地表近くにいるようで、角度からして、さほど遠くはないようだ。


「いやぁーーーーー!!」


「絹を切り裂くような……、お手本にしたくなる悲鳴だな」


 今の声の主が追っている魂魄と言う事はないだろう。


 となると魂が何かしでかしたか? 被害が拡大する前に、どうにかしないといけない。


「確か、こうすれば速度を上げられるんだよ、なっ!?」


 一気に最高速からの急降下。


 プロテクターが自らセーフモードに移行しなければ、地面に激突していたところだが、フルスロットルを出したおかげで、最短で目的にたどり着き、そこには凄惨な光景が広がっていた。


「ひでぇな。この甲冑は王国軍の物だな。全滅かよ」


 馬も殺され、馬車も破壊されて、辺りに動く物の気配はない。


「いや、近寄らないで」


「生き残りがいるのか?」


 木々の向こう、大規模な理力の行使が感じられる。


「こっちだな」


 声の方と霊糸の向きが合致する。


 目標地点は直ぐ側、理力剣で木々を薙ぎ倒した先に、強力な結界を張り、襲い来る魔物から身を守る一人の少女の姿があった。

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