11 呪いが特殊である訳を語る噺
「関係ないかもしれないんですけど……」
控えめに入り込んできたシズは、オドオドしながらも自分が感じている物について教えてくれる。
「その道具から繋がる霊糸が関係しているのかと……」
「あら、本当ねぇ。こんなに細い霊糸、よく見つけられたわねぇ」
魂魄のみの存在である幽霊のシズだからこそ見えた、呪いにまだ絡め取られたままの魂の糸。
「これを辿っていけば、もしかしたら原因解明に繋がるかもしれんで」
ノアールは諸手を打って、合点がいき、ウイックの手を握る。
「間違いあらへんわ。この先に必ず答えがある」
糸はこの森を出て、二山向こう、三途と名付けられた川の畔まで続いていた。
休む間も惜しんで来たおかげで、約まる一日ほどでたどり着いた。
そこには強い怨みに染まった、三つの魂が漂っていた。
「全く、準備もさせんとようも、かっとんで来てくれたな」
文句を溢しながらも、常備している紙人形の呪符を使って、魂を一時的にではあるが安定させる事に成功した。
「君はあの空間にいた……」
「ああ、貴方はあの時の」
この再会は予期されていたもの。
闇男に襲われているところを助けてやったから、こうしてまた会う事ができた。
「あの時はありがとう。貴方のおかげで、私はアイツの呪縛から解き放たれた」
セーラー服の少女は呪いから解き放たれて、全てを思い出した。
「私は中学二年生の春に死んだ……、うぅうん、殺されたの」
中学生というのがどんな職種なのかは分からないが、あの男から夕暮れ間際に呼び出された、余所のクラスの教室で、ナイフで脅され逃げようとして、二階の窓から落ちてしまった。
運悪く頭から落ちてしまい、受け身もとれないまま、大きな石に頭から落ちて死んでしまった。
「アイツは偽装工作をしたのを、魂だけになった私はこの目で見たわ」
魂が浄化される寸前に最後の執念で探り、少女は遺恨を残して死出の旅に発った。
「二階でなく三階の、私達の教室から落ちたように見せかけて、事故或いは自殺として私の死は処理されてしまったの」
その後も遺恨は消えることなく、この三途の川で彷徨っていると、いつの間にかあの呪詛具に取り込まれ、悪夢を繰り返すようになったのだという。
「最後にお願い、あの二人も助けてあげて、あの子達もアイツに酷い目にあった被害者なの」
呪符の効力が切れ、少女の魂は消えてしまった。
「あの子はこの世界の魂やなかったんや。せやから呪いが解けて、元いた世界の死の国に旅だったんやな」
ようやく成仏できた少女の魂、もし生まれ変わったなら、今度は穏やかな寿命を全うできるようにと、ノアールは祈りを捧げた。
「あちらの禍々しい魂、どうも様子がおかしいですの」
ウイックが魂の少女と話している間、残りの魂から目を離さなかったエルラムが異変を告げる。
「マズイで、あれはもう既にその物が怨みの塊になっとる。大きな呪いとして依り代を求めるようになるで!」
呪詛具の呪いから解放はされたが、二つの魂……、二人の少女の怨念が新たな呪いを生み出そうとしている。
「どうにか沈めてやらんと、大変な事になるで」
ノアールは紙人形を魂に投げつけたが、受け付けられる事はなく燃えて灰になり、今のを攻撃として認識されたのか? 近い方の魂が猫娘に襲いかかる。
だがそこは呪詛使いである。より強力な呪符を使って魂の動きを抑え、捕まえる事に成功する。
ただ少しの油断があり、もう片方の魂に心臓を捕まれ、ノアールは気を失った。
「おい、ノアは大丈夫なのか?」
「ご心配なく、あの子が捕まえた魂が自由を取り戻していないという事は、ノアールさんの命に別状はないという事です」
この間に、自由に飛び回る魂をどうにかしようというエルラムの提案を受け、ウイックは瞬間移動を使って、悪意に満ちた魂を押さえつけた。
「おお、マナで固めた手で、本当に掴めた」
シズのアドバイスを受け、“剛拳の秘術”を掛けた手で、見事に捕まえる事ができた。
が、ほんの一瞬でマニエルとピューレも意識を剥ぎ取られ、ダンルーも沈黙させられてしまった。
「本当に呆れるほどの怨念ですの。ウイックさん、多分なのですが、その状態なら魂に呼びかける事ができるはずです。意識を集中してくださいの」
言われるまま、方法もよく分からないが、ウイックは心の底から呼びかけた。
胸の魔晶石が熱い。
理力の波動に、荒れ狂っていた魂が呼応して、可視化したそれは少女の姿となり、男がその体に掌を這わせた事で、正気を取り戻した。
「なに? 私とエッチしたいの? 一体いくらくれるの?」
ダンルーそっくりの突飛な見てくれの少女は、未だ胸やお尻を触りまくるウイックに強く抱きついて、欲情を臆面も無く剥き出しに返してくる。
「ウイックさん、今ですの。その魂にマナを流し込んでくださいの」
言われるままに行動すれば、ギャルと呼ばれるタイプの少女は完全に正気を取り戻した。
「やだ、なぁに? ここどこよ。っていつもの嫌な夢とは違うみたいね」
見るからにエルラムやミルとそう離れてはいない年齢の少女は、歳にそぐわない厚めの化粧をしており、かなり露出の多い恰好をしている。
先ほどの言動から察するに、発情期を迎えた雌猫と言った表現が、当てはまるようである。少女はウイックに抱きついてきた。




