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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
124/192

9 原因究明が急がれる中、事件に出会す噺

 ウイック達が来たのは、またも別次元の世界。


「確か、学校? だったか」


 セレーヌと戯れの時間を過ごした場所、学問を学ぶ教室という部屋だ。


「なんでまた、呪詛を解くのに、ここに飛ばされる事になるんだ?」


 ここにいるのはウイックとマニエル、ピューレとエルラム、ノアールとダンシングドールの六人。


「ノア、ここで間違いないんだよな」


「それは間違いない。けどな、ここに何の意味があるんかは、ウチにも分からんからな」


 呪詛の原因を探り、問題を解決してやる浄霊。


 或いは呪いの元を除去してやる除霊。目的はそのいずれか。


「なんにしても、見て回るしかないやろ。ここに何か問題があるんは違いない」


「ねぇねぇ、この服、持って帰れないかな? 可愛いよね、これ」


 マニエルが気に入ったのは、エルラムが教えてくれた“せぇらぁ服”と言う名の衣装。


 因みにウイックの物はガクランと呼ばれているが、そちらの知識はエルラムも持っていない。

誰も気にしていないから、どうでもいい事なのだが。


「見て回るって、言ってもどこ行きゃいいんだ? ここじゃあシナリオなんてないだろうしな」


「シナリオって、なぁ~に?」


「お前、なんでか知らんが、その服を着ちゃいけねぇ、気がすんな」


 突飛な言動をするダンシングドールのイメージとはそぐわないが、他に着替えがあるでなく。


「ホント、これもうちょっとぉ、どうにかしたいわねぇ」


 そう言うと上着を一枚脱いで、白いシャツは裾をスカートからだし、スカートもお腹のアタリで巻き上げ、ミニスカートに仕立てる。


「あっ、それいいね。私も」


 直ぐに食いついたのはマニエル。それに呼応してノアールも弄り始める。


「全く、こういう物はそのままに着こなすのが礼儀だというのに」


 エルラムは呆れ顔で皆と同じようにしようとするも、なかなか上手くできないピューレを手伝ってやる。


「それで、どこ行く?」


 教室の扉を開けて廊下に出る。そこで女性の大きな声が聞こえてきて、一同はその方向に歩き出した。


「すごい剣幕で怒ってるようだな。いったいどこだ? ここ無駄にひれぇよな」


 それでもまるで誘導されているかのように女性は叫び続けている。


 その言葉が段々とハッキリと聞き取れるようになると、メンバーも危険な状態である事を察知し、歩く速度もいつしか全力の走りになる。


 階段を下りて、一つ下の階を元いたのと同じ方向に行くと、椅子や机を押したり倒したりする音が聞こえてきて、ようやくたどり着いたそこには、二人の男女の姿があった。


 教室の扉を開けて中に入ると、ウイックは一目散に女性の目の前に立ち、抱きしめる。


「ぐっ!?」


 背中に刺すような痛みを覚えるが、決して倒れることなく足を踏ん張る。


「なんだよお前、邪魔すんな」


 男が怒気を放ち、背中に刺したナイフを引き抜き、再度ウイックの項を狙う。


 身を固くして堪えようとするウイックに、次の衝撃は襲ってこなかった。


「はっ!」


 振り向けば、ダンシングドールが男を蹴り倒し、激しく机や椅子を巻き込んで倒れる男の姿があった。


「サンキュー、ダンルー」

「ダ? なによ、そのダンルーって」


「お前の愛称、ダンシングドールってなげぇし、呼びづれぇし、いっそ改名したらどうだ?」

「分かった。そうする」


 あっさりと受け入れたダンシング……、ダンルーは蹴り倒した男の手からナイフを奪い取る。


 続いて入ってきたエルラムが、背負っていたリュックからロープを取り出して、男を拘束した。


「大丈夫? ウイック」


 マニエルは回復ポーションを取り出してウイックに飲ませる。


「ありがとよ。マーニー、どうやらここじゃあ、俺の無敵も通用しねぇみてぇだな」


 傷は薬のおかげで治ったが、自前の超回復能力は発揮されなかった。


「さてと、大丈夫か? あんた」


 まだ抱きかかえたままの女性に声を掛け、手を離そうとするも、今度はその子の方から背中に腕を回されていて、離れる事ができなくなる。


「ありがとう、ありがとう……、怖かった、怖かった」


 まだ少し錯乱状態であるようで、落ち着くまでしばらくの時間が必要だった。


「ごめんなさい。助けてくれてありがとう」


 ようやく落ち着きを取り戻す少女が、ウイックから離れ、話を聞く事ができた。


「こいつは同級生で、あまり人と関わらないヤツで、それを見かねた君が声をかけてやったんだな。いい話じゃねぇか、それが何で襲われる事になったんだ?」


 彼女はこのクラスの級長をしているらしく、教師からも周りに馴染めない男子生徒を気に掛けて欲しいと言われ、時間は掛かったが、友達として話ができるくらいに、打ち解ける事ができたのはごく最近の事らしい。


「やっぱり清楚系の美少女は、気配り上手なもんだな」

「ウイック、茶化しちゃあダメだよ」


 妹に諫められ、兄は口を噤む。


「偏った趣味が他人と距離を作らせているだけで、悪い子じゃあないと思ってたのに……」


 少女はまた顔を手で覆い、泣きだし、ここで話は中断される。が、大体の所は分かった。


 ようはこの刃物男は少女に思慕を寄せ、想いを告げるも、少女は受け入れる事はできず、拒絶されたことで、逆上して襲いかかってきたということだ。


 伸びていた男が目を覚ました。


 少女が怯えてウイックの後ろで身を縮める。


「なんだ、お前ら!? お前らも俺の邪魔をすんのか?」


 男の目からは、精気を持つ人のものとは思えない、血の通わない冷たさを感じた。

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