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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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6 天上界、正反対の二人が共に行動を始める噺

 天上界は想像を絶するほどに、眩く光り輝く世界だった。


「ミルさん、ここは?」


 ウイック達とは別行動中のミルとイシュリー、マスクの男が持っていたアイテムで世界を渡り、他の世界とは極力関わりを持たないオーガイルにやって来た。


 行き先の分からないゲートを、意を決して潜ると、見下ろした先に大きな街がある、人気ひとけのない高台に出てきた。


「間違いないわ。あそこは“聖皇都キシリア”。天空殿に繋がる、天空回廊のある、聖王宮の置かれた都よ」


 見渡す限り街が続く、都の名にふさわしい綺麗な街道は、周囲を囲う塀の外まで続いている。


「大海洋界フォルティナで見た事のある街並みですね」


「帝都バロッサね。一説によると初代の帝王は、この都市を真似て国を作ったと言われているわね」


 街外れからは目的の天空回廊は見えないが、土地勘を持つミルは、先の心配よりどうやって街に入るかを悩み出す。


「入れればよろしいのですか?」

「何かいい手があるの?」


 イシュリーはストレージからライアとアイラを呼び出し、自分はライアの、ミルにもアイラの外装を填めるように促した。


「この二人の服は透明化する能力があるそうです。試してみますか?」


 聖光気を放てるミルはともかく、精霊力を発するイシュリーは、場合によっては身柄を抑えられる恐れもある。


「色んな世界に行く可能性があるだろうと、アンテさんがマナの隠蔽機能を追加してくれたんです」


 二人はゴーレムの外郭を身に纏い、透明化とマナ隠蔽の機能を確認して、街道まで降りた。


 城壁には二人の衛兵と思しき人影。


 行き交う人々からは全く気付かれていないが、門番を相手にどこまで通用するか。


「ドキドキしますね」

「そうね。でもここで失敗はしてられない。堂々と行くわよ」


 言葉とは裏腹に、動悸が激しくなるミルと、鼻歌を溢しそうな程に冷静なイシュリー。


 門番は外から来た旅人の女性から、通行税を受け取りながら、無駄話に夢中。


 二人はゲートを潜って直ぐに左に曲がり、裏通りに入っていく。


「う、上手くいったわね」

「はい」


 装甲を外し、二人は次の行動を決める話し合いを始める。


「どうされるんですか?」

「……決めてない」


 無言の時間はそんなに長いものではなかった。が、二人の感覚としては十分な間を置いての沈黙を味わった後で。


「はい?」


「だから決まってないの。もちろん目的地は、街のずっと奥、聖王宮と天空回廊、そして天空殿にさえ行ければ、後はなんとか協力者を見つけられると思うの」


 マスクの男、エンゲラ=コーバンスの残したメッセージに従ってここまで来た。


 しかしあの男を信用しているわけではない。


 全てが罠である事も踏まえた上での行動が必要だ。


「一応、聖王宮の近くにある酒場で、私達が動きやすい様に手引きをしてくれる女性がいるそうなんだけど、どう思う?」


「伸るか反るかですか? いいんじゃあないですか? 何も打つ手がないよりは、先ずはその女性に会ってみるのもいいと思いますよ」


 なんとも肝が据わっているというか、そう言えばイシュリーが狼狽している姿を見たのは、獣王の神殿でウイックと戦った時くらいではないだろうか。


「じゃあ、その女性に会う前に、その酒場で先ずは様子を見るというのはどうですか?」


 煮え切らないミルを前に、今度はこちらから提案してみるが。


「う~ん、そうね。それもアリよね。なにより情報が少なすぎるしね……」

「ミルさんって」


「えっ、なに?」

「なんか煮え切らないですよね。こういう時」


 今までのウイックとのやり取りでも、慎重論を唱えるのはいつもミルの方だった。


「み、みんなが即決過ぎるのよ。私は冒険者として……」


「あっ、いえいえ、何もミルさんを批判しているんじゃあないんですよ。ただ、今の状況では行動しないと、情報も手に入らないのではと、思っただけなんです」


 言われてみればそうなのだけれど……。


「そう、ね。分かったわ。それじゃあ、どこかで着る物を買いましょ、この恰好だと目立つからね」


 オーガイルのお金なら、エンゲラ=コーバンスの懐から頂戴しておいた。


 これもまた、エンゲラのメッセージにあった通りにして貰ったお金。


 決して呪いで起きなくなった男から、強奪したわけではない。


「取り敢えずの方針は決まった。でいいわよね」


「はい、もちろんです。残念な煮え切らないミルさんが決断した事に、逆らう事はないですよ」


「イシュリー、あんたって結構いい性格してるわよね。知らなかったわ」


「冒険者の相手をずっとしてきましたからね。今はウイックさんが私の道標ですから」


「そうね、アイツは大抵の事は即決主義だもんね。私、益々貴方の事が気に入ったわイシュリー」


「ありがとうございます」


 酒場で女が待つという時間までは、まだ余裕がある。


 二人はあまり目立たないようにマントを羽織り、手頃な服屋を見つけて女の子らしくショッピングを楽しんだ。

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