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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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5 しばしの休息、精神的疲れもとりたい男の噺

 真っ黒焦げのダンシングドールは体もバラバラ、身動き一つできず、おいおいと嘆いている。


「ひ、ひどいじゃない。あんなにいっぱい、一度に襲ってくるなんて、ずるいでしょぉ~~~」


「へぇ、頭だけでも喋れるのか」


 戦闘開始と同時に全弾撃ちはなったミサイルは、全方位から一気にダンシングドールを襲い、その爆風は演舞場も纏めて人形をバラバラにした。


「俺達の勝ちでいいんだよな」


「この状態で負けてないなんて言えないものね。いいわよ。あんたの勝ちで」


 ウイックは“復元ふくげんの秘術”でダンシングドールを元通りにしてやり、約束通りにメダリオンを受け取る。


「サンキューな」


「いいわよ。それ一つくらい。まだまだお宝はいっぱい持ってるから、遊びに来てくれる人もいるでしょ」


「あの鬱陶しい喋り方しなくても話せるんだな」


「あれでモチベーション上げてるの、楽しんでるの」


 メダリオンを手に、ノアールの後ろに回り込み。


「やぁは、えぇよぉ、これ、これがぁあ」


 烙印を刻み、ノアールにも恩恵が現れるのかを、ダンシングドールとのもう一戦で確認する。


「ずるいずるぅ~~~い、そんな事で強くなれるなんてぇ」


 勝ったのは人形だったが、かなりの善戦を見せたノアールもご満悦。


「それぇ、あたしにも欲しいのぉ」


「先ずはその喋り方やめてくれ」


「なによもぉ、これやめたらくれるわけ?」


「メダリオンがないし、そもそも術が掛けられるのかも分からんしな」


 試すだけならと人形神ひんながみの胸に手を当てるが、その一瞬で分かる。


「だめだわ。お前、体がカッチカチだもんな」


 人形なのだから当然なのだが、人とはあまりに違いすぎて、術を掛けるにも、どうしていいかが分からない。


「女の子にそんな言い方する? 信じらんない」


 完全に機嫌を損ねたところで、演舞場を後にする。


「舞台を潰して悪かったな」


「べっつにぃ、どうせここに来てくれるのって、エルラムちゃんだけだったし、そろそろここから出て行こうかって、考えてたし、面白そうな人見つけたし」


 褒美品として集めたという秘宝を異空間に納めて、こちらに許可を得ることなく、ダンシングドールは一緒に来る気を固めたようだ。


「烙印の乙女以外の女はノーサンキューなんだけど、この子は人種ひとしゅから掛け離れすぎてるから、別にいいや」


 とマニエルが一発目で納得の意見をくれたから、誰からも文句を言われずにすんだ。


「それじゃあ一回、エルの家に戻ろうか、一休みしてからでねぇと、みんなバテバテなんだろ?」


 プロテクターに撮影機能がある事に気付き、プリント済みの写真を懐から取りだし、山の麓まで来て、遠渡を使う。


「君がシズか」


 突然目の前に現れたウイックに驚いて、動きを止めるシズをマジマジと眺める。


「きゃあーーーーー!?」


 青い髪の美少女は糸を紡いでいる手を止めて、その場から逃げ出そうとする。


「聞いてたとおりの絶品美女だな、驚れぇたぜ」


 消えるでもなく、足を止めて、シズはウイックに向き直る。


「わたしが……ですか?」


「おお! ノアから美人だって聞いてから、ずっと気にはなっていたが、本当にべっぴん過ぎてビックリだぜ」


 後から続く少女達が頬を膨らませているのにも、全く気付かずウイックは褒めちぎった。


「あ、あの……、お茶いれますね」


 すぅーっと、姿を消すと、キッチンの方から物音がする。


「ああいう子が好みですの?」


「ああいう子も好みだぜ。俺は憑きまくってるな。周りはみんな美人ばっかだもんな」


 これをなんの計算もなくできるのが、ウイックという男である。


 この後はシズも一緒にお茶をし、食事をし、作業場ではあるが、道具類を端に寄せていって、この場所に大きなマットを引いて雑魚寝。


 もちろん真ん中はウイックだが、その周りのどこに誰が寝るかで大揉めとなり、勝負はカードゲームで決める事に。


 勝負結果は、一位はマニエル、二位にエルラム、その他は決着をつける事もできず、また大きな揉め事になってしまう。


「俺、別に椅子の上でも寝られるから、みんなでここで寝るといいぜ」


 みんなの疲れは絶頂、これ以上は起きてもいられないからと、文句を垂れるのをやめて、中心にウイック、左右にマニエルとエルラム、頭側にノアール、足にピューレが捕まり、そこまで男に興味のないダンシングドールとシズは空いたスペースで横になった。


 幾ばくかの時が過ぎて起きるとウイックは、なぜ疲れが今ひとつとれていないのか、その理由を溜め息で誤魔化すしかできなかった。


 右腕はマニエルが、左腕はエルラム。お腹の上にノアールが丸まっていて、足はピューレとシズに捕まれて、頭をダンシングドールが抱え込んでいた。


「みんなよく、こんな狭いとこで寝てるよな」


 まだ目を開けているのは男だけ。


 人形とお腹の上の猫以外の全員の胸の弾力を、神経を研ぎ澄ませて感じ取る。


「シズが一番大きいな。って、幽霊に触れられるってのは聞いてたけど、肉体もないのに、結構あったかいんだな」


 その状態を崩す事ないままに、微睡んでいると、最初に目を覚ましたのはシズ。


「も、申し訳ございません。私ったら……」


「いや、仲良くなれたって、喜んでいいかな? だったら俺も嬉しいぜ」


 真っ赤になって起き出したシズは、食事の支度を始めてくれる。


「おはよう、ウイック」

「おお、マニエル。どうだ魔力は回復したか?」


 エルラムの家は、各世界のマナが集まるように造られている。


 次々と目を覚ますみんなが、回復した事を確かめて、シズが用意してくれた食事を済ませ、支度を調えると、ノアールが開いてくれた異空間への扉を潜った。

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