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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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4 一対一の闘い、少女達は善戦した噺

 自慢するだけの事はあって、エルラムの動きは卓越された拳闘士そのものだった。


 左回し蹴りから右飛び足、着地して右前蹴り。


 どれもウイックには、彼女のつま先を目で追う事はできず。


 いや、そもそもウイックはずっと、エルラムの足の付け根を見ているから、つま先は見えるはずがないのだが、今まで何度か戦った事のある少女が、これだけ体術に長けているなんて知らなかった。


「あんなん術衣の力に決まってるやん。エルは運動神経ドツボやで、レイピアはそれなりに振り回せるけど、術無し勝負やったら、ウチでも舜殺できる程度やからな」


 そんな動きをダンシングドールは簡単に、身を翻したり、腕で止めたり受け流したりと、一発もヒットさせない。


 蹴り技を拳主体のコンパクトな動きに切り替えるが、エルラムの動きに合わせて全てを受けきるから、まるで二人で踊っているようでもある。


「エルラムちゃん、今までで一番楽しいわぁ~、けどこれじゃあ足りないわね」


 術衣は効果覿面で、“チャイナドレス”を着たエルラムは確かにまるでダンスをするように舞っている。


「動きが単調なんやな。確かに早いけど、あれやと戦い慣れた相手には通用せんよ」


「俺には綺麗に踊ってるようにしか見えないな」


 この場で二人の動きがしっかり見えているのはノアールと、竜人化したマニエルのみ。


「楽しいけど、そろそろ飽きてきちゃった☆ 今度はこっちからいくわねぇ」


 ダンシングドールは髪の毛の鞠を第三、第四の腕のように自在に振り回しだし、一瞬で攻防は入れ替わり、エルラムは防戦一方に。


「いい線いったんだけどねぇ」


「得意技を封じられてなければ、貴方なんてワタクシの足下にも及びませんのよ」


「でしょ~ね。でもここではあたしがル~ル。いやならいいって、いつも言ってるでしょぉ~~~」


 腕よりも髪の毛の方が破壊力も高く、怒濤のラッシュで一気にキメにかかられ、エルラムは一人では立てられなくなるほどに打ちのめされた。


「思ったよりも頑張ったじゃない。次はどんな工夫して来てくれるのかぁ、楽しみにしてるわねぇ」


 エルラムを倒した事で、もう全勝を果たしたかのように余裕を見せるダンシングドール。


 自信を滲ませるだけあって、次の挑戦者のノアールには楽勝してみせる。


「進歩なぁ~~~い。ネコマタちゃん、前回と攻撃パターンが変わってないじゃない。お怠けなんじゃないのぉ。エルラムちゃん、ちゃんと鍛えてあげないとダメよぉ」


「料理の腕はかなり上達しましたよ。一流料理人にも負けません」


 ウイックに回復ポーションをもらって元気を取り戻したエルラムは、今度はノアールにポーションを飲ませる。


「次、私やる」


 最近は竜人化せずとも、その力をほぼ使いこなせているマニエルだが、着ている物を全て脱いで、完全変身を果たしての挑戦をする。


「おお、すげぇ、今度こそ全く見えないぞ」


「あの子、すごいな。ウチも影を追うのがやっとやわ」


 身体強化と、戦闘経験とを積んできた成果も現れ、拮抗した戦闘が続いた。


「あなた、すごくいいわぁ~、これよこれ、これがやりたかったのよぉ」


 興奮するダンシングドールはさらにスピードを上げて、ラッシュをかける。


 マニエルも四肢を、尻尾を振るい、翼も器用に左右を別々に動かして盾のように扱う。


「ああ、いい、いいのぉ、すごくいいのぉ~、イク、イク、イッちゃうぅぅぅ!」


 いかがわしいセリフを吐き続けるダンシングドールは、もっと激しい打ち合いを望んだが、マナの切れたマニエルは竜人化も解け、戦闘力も急激に低下。


 呆気ない幕引きとなった。 

「あん、もう少しでイケたのにぃ」


 ピューレは信じられないほどの力の持ち主ではあるが、ただそれだけで。


 闘い方の一つも知らない彼女が相手になるはずもなかった。


「はぁ~あ、残るはゴーレムちゃんだけね。竜人ちゃんより強いと嬉しいけど、ゴツゴツしてて、動きはとろそぉよね」


 飛行能力があり、ホバーダッシュで高速機動も可能。


 自分で飛んだり走ったりを、ようやく自由にできるようになったが、さっきのマニエルとの闘いを見る限り、ウイックには万に一つも勝ち目のない事は明白。


「取り敢えず、最初は自分で何とかしてみる。途中、どうしようもないと思ったら、これで好きに扱ってくれ」


 ウイックはヘルプにあったコントローラーを取り出して、エルラムに渡す。


 説明マニュアルも一緒に渡すと、走り読みをした法術士は「お任せくださいの」と、了承しくれて、もう後は野となれ山となれ、ウイックは演舞場に上がった。


「おわったぁ? ちょっと、待たせすぎじゃなぁ~い」


「おお、悪かったな。なに、お前さんを楽しませてやるための小細工をしてただけさ」


「あら、楽しみじゃないのぉ」


 みんなの闘いを見ていて一つだけ気付いた事がある。


 人形神ひんながみは一対一を希望していた。

 そしてその強さは尋常ではない。


「けどこいつ、団体戦には慣れてないというか、経験ないんじゃねぇか? だったらいっその事」


 ウイックの読みは大正解だった。


 念のために渡したコントローラーを使うことなく、エルラムはウイックの体を、遠隔操作できなかった事を残念がりながらも、彼の勝利を喜んだ。

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