3 新たな印を手に入れるために、山登りをする噺
「メダリオンがあるのか?」
「えぇ、随分と前から分かっていたのですが、ワタクシの実力では、手に入れらることができなかったのですの。スキルアップ、レベルアップをするか、一緒に挑戦して頂ける方を連れて行くかが必要だったのですの」
本当ならミルとイシュリーに期待していたようなのだが、解呪のために向かう場所を考えると、メダリオンの回収は是非しておきたい。
「さっきのオイタの時、一応ノアールさんにも術は使えそうでしたので、先に取りに行こうと思いますの」
ここまでの冒険の中で分かった事、ウイックに対して警戒心がなければ、術は成功させられるようだ。
「触られて、気持ちよさそうにしてましたので、だったらメダリオンを、烙印の乙女の数を増やすのがよいかと思いましたの」
メダリオンはこの霊冥界の、ここより半日ほど歩いた場所にあり、山の頂上に変わり者の妖怪が持っていて、そいつを満足させないともらえないそうなのだ。
「どこぞの魔女様の時と同じパターンだな」
今度は大妖怪相手に大暴れしなくてはならないのかと、溜め息を溢すが。
「うん? なぁエル、それでなんでまだ、そんな恰好してるんだ? それと歩いてってのは?」
「さすがはウイックさんですね。理由は着いてみればお判りいただけますよ」
回復ポーションなども用意してくれているので、直ぐに出発し、聞いたとおり半日掛けて登山をし、到着は日暮れ直後だった。
「ずっと薄暗いのに、夜は真っ暗にならないんだな」
山の麓まで来て直ぐに気付いたが、この山にはマナのエナジーが全く感じられない。
「ここではいくらエナジーを体内に蓄えて来ても、術として発動させる事ができませんの。ですがワタクシの術衣の様に、来る前に道具用に蓄えたマナなら使えますの」
試しにウイックは指弾を撃ってみようとするが。
「確かに術が練り込めねぇな。これじゃあ身体強化系の術も使えないか」
これでは空間ストレージのように、使用時にマナを使わないといけないアイテムも使えない。
「それでは入りましょうか。恐らく中で構えて待っていると思いますので」
正面の大きな扉を開いて中に入ると、外から見た時から明かり一つ灯されていないと感じていたとおり、中は真っ暗で、それでも全員が足を踏み入れると戸は独りでに閉まり、蒼い炎を上げる数多くのロウソクが壁で灯され、室内を明るく照らし出す。
「いらっしゃいましぃ~」
出迎えてくれたのは、これまたボディーコンシャスな衣装で、露出度の高いド派手に真っ赤な服の、かなりケバイ女。
金色の髪は両耳の後ろで束ねられ、二本の束の先端は、腰の辺りまで伸びて鞠が付けられている。
「彼女はダンシングドール。土人形から生まれた妖怪、人形神ですの。出会った頃はあのような、怪しげな恰好をしていたわけではないのですが……」
「あら、エルラムちゃんじゃな~い、おひさしぶりぃ~~~。元気してた?」
ド派手な羽根を付けた扇をヒラヒラとさせて、腰を振って踊っている。
「ダンシングドールさん、お久し振りですの。そして今日を最期にお別れですの」
よほど忌み嫌っている感じが伝わってくる。
「あらあら、これまたいつもと同じ、セ、リ、フ♪ スキよねぇ~~~~~」
これはエルラムでなくても勘弁して欲しい。さっさと用事を済ませて帰りたい気分になる悪ノリだ。
「あら、いつものネコマタちゃんだけじゃあないのね。竜人ちゃんに、トカゲちゃんと、何か変わったゴーレムちゃんね」
ウイックはエルラムの助言を受け、プロテクターを装着して入山した。
不思議な事に、いくら強く意識しても感じる事のできなかったマナが、プロテクターでは動力として魔晶石を使っている為、無尽蔵にエネルギーが流れ込む感覚がある。これなら使える。
「貴方もすごく素敵な衣装じゃないエルラムちゃん。あぁ、あたしが貴方と同じくらいの身長だったら、全て頂きたいところ、だ、け、ど、それよりもあたし専用の仕立て人になってもらって、スキな洋服をスキなだけ作ってもらう方がいいかしらねぇ~~~」
この鬱陶しい喋り方をする人形以外の気配がしない。
と言う事は……?
「その通りですの。このダンシングドールがメダリオンを所有していますの」
このパターンはやはり魔女セレーヌの時と同じなのか?
「いいえ、このくされ神が望んでいるのはただ一つですの」
戦って勝利すれば、勝手に持っていっていいと言われて。
「何度も何度も挑むのですけれど、ここでは法術が一切使えませんので、今までは悔し涙を流すばかりでしたが、このメンバーでしたら、きっと成功するはずですの」
なんともシンプルなルールだが、内容を確認したウイック達は、ここで初めて戦うのは一人ずつの一対一と知らされる。
「……暇なのか?」
「そぉっ、のとう~りぃ~~~♪ だってだってねぇ、せっかく演舞場まで作ってぇ、踊りたいのに、誰も来てくれないのぉ」
念のためにメダリオンを確認させてもらって、自慢の演舞場へ通される。
「それじゃ~あ~、始める?」
「誰から行くんだ?」
「そんなのぉ、決まってるじゃない?」
当然とも言える第一挑戦者が指差された。




