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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第四幕   仲間達と世界を股に掛ける男の探遊記
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1 魂巡る薄暗い森の新たな出会いの噺

 薄暗い深海から飛んできた先は、同じくらい薄暗い森の中。


 空を仰げば薄雲が、日光をほんの少しだけ遮っていて、木洩れ日もさほど差し込んでこない。


「ここが霊冥界か?」


「ええ、ワタクシの住む森、オバケ杉の森ですの」


 無事に転送されてきた。各々に顔を合わせる。


 マニエルとピューレ、エルラムにウイック。


 森は険しいが、案内役もいるし、四人ならはぐれる心配もないだろう。


「ミルさんとイシュリー、ちゃんと向こうに着いたかな?」


 マニエルは薄気味悪く、重い空気に黙っていられない。


「心配してもしょうがねぇだろ。俺達は二人を信じて、俺達がするべき事に集中するぞ」


 出発前、ミルから別行動がしたいと言われた時は慌てたが、どちらも急を要する事柄である以上、了承する他なかった。


「マスクの男が運んできたメッセージか。罠かもしれねぇが、放ってもおけねぇよな」


 案内役がしっかりしていて、真っ直ぐ歩いてくれるから、迷う心配もなく、自然と話題が膨らみ、ミル達の事を選んで会話が生まれる。


「亜天使を産んだとして、幽閉されてたお袋さんが、弾劾されると聞かされちゃあな」


 本当なら一緒に行って、手助けをしてやりたいのだが、アンテのことも優先度は変わらない。


 イシュリーが買って出てくれたから、少しは安心感も増したけど、こちらの用件を済ませて、早く合流を果たさないといけない。


「……二人とも、歩きにくいぞ」


 右腕にマニエル、左腕にピューレがしがみついていて、足下が悪い中、一歩も前に進めなくなる。


「本当に、お二人とも時と場合をお考えくださいの。ワタクシだって、お側に寄り添いたいのに、抑えているのですよ」


 森を奥に進めば、あちらこちらから視線が寄せられるのを感じる。


「けっこう住人がいるみてぇだな。この森は」


 霊冥界の住人は、そのほとんどが妖怪と呼ばれる異形の者で、人種ひとしゅもいるにはいるが、大海洋界の人とは違う存在だった。


「ここでは、魂が定着できる器を手にいれたモノだけが、存在を許されますの」


 ごく稀に強い意志を残した魂が、依り代なく浮遊する事があるが、大抵の魂魄はまた大海洋界へ戻り、新たな肉体を求めて、産まれてくる赤子と同化される。


人種ひとしゅはお前以外にも住んでるのか?」


「純粋な人種ひとしゅなんて一人もいませんの。もちろんワタクシも妖怪との混血ですの」


 霊冥界へ肉体を持ったまま渡ってきたのは、後にも先にもデヘン=イングラムただ一人。


「だったらここでいう人種ひとしゅっていうのは?」

「亜人ですの」


 大きな生き物は渡れないものの、小型犬や猫くらいまでの小動物は時々落ちてくる事があり、それらに魂が取り付くと、人型に変化する。


 大抵が異形の姿になるが、時折限りなく人種ひとしゅに近しい変化をするモノが生まれ、それを亜人と呼んでいる。


「じゃあ、お前も亜人なのか?」


「そうですの。ですが、未だにデヘンの、人種ひとしゅの遺伝子が強くて、他の亜人に比べても、それらしさはワタクシの体には見られませんの」


 因みに竜人や人魚、獣人は種として進化した存在で、亜人は魂が突然変異して産まれるから、これらは全く違うモノとなる。


「着きました。この森を納める長老、烏天狗様のお屋敷ですの」


 先ずは民長に挨拶をし、その後でエルラムの知り合いだという呪詛使いに会いに行く。


「お許しを頂き、ありがとうございます。もちろん問題毎なんて起こしませんの。ご安心ください」


 人種ひとしゅと竜人と蜥蜴人、あまりに怪しい一団の来訪に、一瞬の緊張感が烏天狗の中に沸いたが、エルラムの連れてきた客人だと知り、森のあちこちから様子を窺っていた天狗達も直ぐに解散した。


「ではワタクシ達はこのまま、ワタクシの家に向かいます」


 呪詛使いに会うと聞いていたのだが、まだ何か準備が必要なのだろうか?


「会わせたいのはワタクシの同居人ですの」


 エルラムの言っていた心当たりというのは、エルラムの家に勝手に住み着いた亜人なのだという。


「いえいえ、少し語弊がありますの。住み着いた後に妖怪変化となり、同居人というか、ワタクシの使用人にして差し上げたんですの」


 エルラムの家に着き、どんな相手かを尋ねていると、その声を聞いてか、扉は中から開けられた。


「誰が使用人やねん。調子乗っとったら呪うで」


 勢いよく出てきたのは……。


「猫耳かわいい」


 マニエルがいきなり飛びつこうとすると、ひらりと交わされて、ドラゴン少女はパンツ丸出しですっ転ぶ。


「なんや!? あんたの知り合いか? しばらく帰ってこん思ぉたら、一体誰を連れてきたんよ」


 虎のような色の髪の毛は肩口までの長さで、赤いノースリーブのワンピース、短めのスカートの中、お尻当たりから伸びているのだろう二本の尻尾。


「彼女はネコマタですの。ノアールさん、みなさんに自己紹介を」


「今、全部言うたやん! ウチは使用人やないけど、見ての通りのネコマタ。ノアって呼んでくれたらいいわ」


 独特の訛りのあるノアの自己紹介から始まり。


「わ、私はマニエル=ランドヴェルノ、みんなマーニーって呼ぶわ。ね、ねぇ、猫耳さわっていい? 手に肉球ある?」


「さっきの失礼なヤツやん、今もだいぶ失礼やけど、肉球なんかあらへんよ。……まぁ、よろしく! で?」


 前のめりに近付いてくるマニエルに警戒しつつ、彼女の右隣にいる二人目に名を訪ねる。


「わたし、ピューレ」


「……」

「……」


「それだけ?」

「うん!」


 なんか顔を見ているのと、何も考えてなさそうなので、それでヨシとする。


「そんで、そっちは?」


「俺か、俺の名は……」

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