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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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38 次なる世界を前に、戦勝の祝いに癒しを取る噺

「なるほど、あの男は亀甲船の一部を破壊した後、そちらに向かったということか」


 アーチカ姫がカンパーニとカザリーナと共に報告を受ける。


 セイラがアンテの看護を請け負ってくれて、今は介護室にピューレと共に向かって、この場にはいないが、ウイック達6人を含む9人は、会議室でテーブルを囲んで、全員が円卓に腰を落ち着けている。


「では霊冥界に?」


「ああ、可能性が少しでもあるなら、そいつにすがっていく方針だ」


 仲間は一人も欠く事はできない。


「それでは、アンテロッテさんの事はお任せください。こちらでも解呪ができないか調査をしてみますね」


 カンパーニが協力を申し入れてくれて、カザリーナも海賊団に戻ったら、調べ物を手伝うと言ってくれた。


「どうする? もう行ってしまうのか?」


 ミルのグレートソードも仕上がっていると聞いた。


 出ようと思えば、出られなくもないが。


「直ぐにでも立ちたいが、出発は二日後を予定している」


 珍しくウイックは先走ることなく、ミルやイシュリーの意見を尊重し、提案を受け入れた。


 ミルは明日、ミハイルの元へ赴き、剣を受領、約束の手合わせをする予定に。


 エルラムも使い切った妖力が、回復する時間が欲しいという。精神がすり切れた状態で霊冥界へ戻るのは、負担が大きいのだとか。


 そうなるとウイックも、魔晶石をフル活用して疲労の溜まった体を休ませたい。


「ここでも温泉はあるんだな。やっぱり疲れを取るならそこが一番だよな」


 魚人との戦後処理の為の会議は、ウイック達がいない間に、進められており、方針は決まっているという。


 戦争協力の報酬については、霊冥界から戻ってからにしようと今は辞退して、会議は簡単に済ませて終了した。


「それじゃあ姫様は、しばらくここに滞在するんだな」


「しようがないのだ。亀甲船の修理が済むのに、七日ほどかかるというのだからな」


 伝令役として人魚が一人、地上に報告へ向かってくれているので、しばらくなかった休暇をもらう事にしたそうだ。


 今晩は晩餐会を予定しているとかで、姫様も参加するという事だ。


 パーティー会場は議事を担う庁舎の大広間を利用して、様々な料理が並べられている。


 パーティーの最中、ウイック達は壇上に呼ばれ、勲章の授与を受けた。


 介護室でアンテの容態を見守っていてくれたセイラも会場に呼ばれて、パーティーはそれなりには楽しめた。


 アンテの分もと考えてみても、彼女の笑顔がない宴席は、どうしてもなにか気が抜けたように感じてしまう。


 一晩が経ち、一同は温泉場にやって来た。


 ミル以外のメンバーで温泉療養をする事となったが、ここは人魚の国、メルティアンの郷のように男が全くいないわけではないが、その絶対的な比率の差が、ここでも温浴場は女湯のみとなっていた。


「まさか、あんたまで入ってくるとは思わなかったぞ殿下」


 ウイックのために時間を分けることになっていたのだが、男湯の時間に入浴していたら、ゾロゾロとみんなが入ってきて、最後にアーチカ姫までが入ってきた事に、本当に驚かされた。


「親衛隊の二人はいないんだな」


「脱衣場で服は脱いだのだがな、やはり恥ずかしいそうだ」

「あんたは違うのか?」


「恥ずかしさはあるぞ。だがやはり裸のつき合いは大切にせねばなるまい。お主だけなら外しても構わんが、皆が今入るのだと聞かされてな。ここは入ってこんわけにはいかんと思ったのだ」


 結局その後、親衛隊も入ってきて、セイラ、ピューレを入れた9名がこの場にいる。


「こ、これ……、クセになりそう、ね」


 ピューレにも“操体そうたいの秘術”を試みるが、ただ欲求を満たすだけで終える。


 その後も一通り全員の体を堪能し、長湯をするが逆上せる前に温泉から上がると、予約した宿でマッサージを受けられると教わり、じっくりと時間を掛けて、疲労回復に専念した。


 夜にはミルも合流、再び全員で温泉を堪能し、翌朝には中央都市に戻り、各々が商店街で準備を調えて集合したのが昼前。


「なんだ、ショートソードとダガーも預けてたのか?」


「ええ、使い慣れてもきていたから、新しくバスタードソードも買ったわ。預けた剣も受け取ったし、これで私は完璧よ」


 ウイック達も保存食やポーションを補充し、ピューレの装備も揃えた。


「本当に付いてくるんだな?」


「うん、地上に出たいっていうのもあるけど、貴方達と一緒にいると、それ以上の刺激を得られそうだわ」


「だが、命の危険はかなり高いぞ」


「簡単に死ぬ気はないわ。だけどもしもがあっても後悔はしない。地下でただただ時間が過ぎていくのを、安穏と生きていくだけに比べれば、意味のある生き方だって胸を張れるはずだもの」


 この決意があるから、メダリオンの烙印を受け入れる基礎ができていたのだろう。


 昨日の温浴中には既に確認できていたが、その気がないなら、メルティアンの女王のように絆が途切れるだけなのならと、見送っていた烙印を刻みつけ、改めて仲間として迎え入れた。


 カーキ色のチューブトップに、ネイビーのハーフパンツという、動きやすさ重視の、彼女の得意とする、パワーファイトを念頭に置いたスタイルで纏められている。


「ストレージには回復ポーションが入ってるからな。俺やエルラムが側にいれば術で癒すが、危険と感じたら、それで危険回避をしてくれ」


 アーチカ皇女から異空間ストレージを譲り受けて、これでピューレの旅支度も完了。


「本当に羨ましいぞピューレ、私も自分の立場がなければ、お前達に付いていきたいところなのだがな、何、アンテロッテ殿の事は任せて、行ってくるといい」


 亀甲船が直れば国に帰るアーチカ皇女に見送られ、エルラムはゲートを開く。


「そんじゃあアンテの事よろしくな」


「うん、あの子が目覚めるような事があったら、これを渡せばいいのね」


 セイラにはアンテの看護をお願いした。


 もし万が一目を覚ませば、追ってこられるようにと、エルラムが用意した護符を渡した。


 アンテならその護符を元に、簡単に転送札を完成させられるだろうと。


 烙印の波動を追う仕組みになっているので、もしかの為に二人分の絆を残しておきたいという配慮だ。


「では参りますわよ」


 本来このゴスロリの術衣は単身用。


 しかしエルラムはウイックの使う、遠渡の術式の一部を理解し、飛ばす対象を選択できるようになり、同時ジャンプを可能にしている。


 ジャンプ先のイメージは固まった。


 メンバーは海底都市を後にした。

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