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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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37 一件落着には程遠い噺

「本当に今回はきつかったな」


「そうだね。これだけのメンツで、これだけの攻撃して、こんだけボロボロになって、僕は早く横になりたいよ」


「ちょっ、ちょっとアンテロッテさん、あまり動かないでくださいな。ワタクシも余裕はありませんのよ」


「ごめんごめん」


 そう言ってアンテは、エルラムから離れようとするが、足下が覚束ない。


「無理をされると、ワタクシの負担が増えますのよ!」


 本気で叱られて、アンテは素直に謝り、しかしジッとはしていなかった。


「だから! えっ!? アンテロッテさん!!」


 エルラムに改めて体を預けるアンテは、勢いを殺さずに、ウイックとエルラムの背中側に迫り出して、倒れ込むように身を投げる。


「おまえぇぇぇぇ!」


 ウイックは光剣を出し、全力で斬りかかるが、相手はバックステップで回避する。


「大丈夫ですの? アンテロッテさん!?」


 突然の襲撃者、マスクの男に何か怪しげなアイテムを押し当てられ、アンテはピクリとも動かなくなった。


「どうなんだエル、アンテは大丈夫なのか?」


 マスク顔を睨み付けたまま、足下に気を向ける。


「これは? ウイックさん、アンテさんは今の接触による怪我はありません」


 遠回しな言い方で、じれったい思いをするが、ウイックは黙って言葉を待つ。


「呪いをかけられましたの。この背中のアイテムが強力な呪術をアンテロッテさんの体に流し込んだようですの」


 穏やかな寝息を立ててはいるが、アンテが目を開ける様子はみられない。


「眠りの呪いのようですの。アンテロッテさんの動きから、狙いはウイックさんであったようですの」


 ウイックを庇い、自らの体で男を守った少女は、いくら揺さぶろうと声を掛けようとも、表情一つ変えず、一定の呼吸を続けるのみ。


「キサマ、今すぐアンテの呪いを解けよ。俺に用があるってんなら聞いてやるからよ」


『お前の言う事を聞く必要はないな。多少予定が狂っても、為すべき事は為された、私のここでの指名は果たせたのだ』


 ウイックは風属性の指弾を撃ち放ち、仮面を弾き飛ばした。


「エンゲラ=コーバンス、だったか? もう一回しか言わねぇ。アンテを元に戻せよ」


 風刃で左足を切り飛ばす。


「ぐぬ、殺したくばそうすればいい。どうしたって私が、その娘の呪いを解く事など有り得んのだからな」


「なんだと!」


 更に右前腕を切り飛ばしたウイックは、この男に脅しは利かない事を悟る。


「ウイックさん、その方は解呪の法を知らないとみるべきですの。アイテムは取り除きましたが、これはまだ役目を果たす能力を持っていますの。これほど高度な呪詛を解呪できるのは、その道を究めた者のみ、ですの」


 エルラムはダイオウグソクムシの様な形の呪詛具を手に、エンゲラに近付くとその腕と足を法術で繋げてやる。


「貴方の胆力には驚かされましたの。ですからその口から聞き出せる情報はないとみて、間違いないでしょう。ですのでお休みください。深く静かに」


 エルラムはエンゲラの背中に呪詛アイテムを押し当てた。


「おいっ! エルよ、勝手な事を!?」


「落ち着いてくださいまし、この方は解呪はできなくとも、この呪いの正体は知っている可能性が高いですの。せめてそれが分かれば、対処法も見付かるかもしれませんの」


 エルラムは呪いにより、深い眠りについたエンゲラの頭に手を置き、精神を集中させる。


「やはり首謀者は、ミレファールさんのお兄様で間違いありませんね。今回の件で用いられたアイテムは全、て神々の秘宝ですの。このアイテムの名は“深層の眠り”。呪詛の系統については何となく分かりましたの」


 エンゲラはただ命令を受けて実行していただけ、その目論見の主要部分に関しては、全く知らないようだ。


「それで、アンテはどうなる? どうにかできるのか?」


「そうですね。どうにかできる可能性は見えました。行ってみる価値のある場所に、心当たりはありますの」


 異変に気付いて、周辺警戒をしていたイシュリーが戻ってきた。


 ミル達四人も合流し、事態の重大さに、全員がエルラムの見解に耳を傾ける。


「ワタクシの故郷である霊冥界は、呪詛使いが幾人もおりますの。今読んだこの聖人の頭にある情報が確かでしたら、一人、話を聞く価値のある相手に、心当たりがありますの」


 可能性でしかないが、手掛かりがあるのなら試す他ない。


「よし! なら一度、海底都市に戻るぞ。ミルのグレートソードも受け取らんといかんし、アンテを預かってもらわんと行動できねぇ」


 ウイックは一枚の紙切れを取り出した。

「ウイックさん、それは一体?」


 イシュリーの位置からなら、紙に何が描かれているかがよく見える。


「これか?」

 ウイックはみんなによく見える位置に手を下ろす。


 そこには風景が写っていた。海底都市ソフィーリアの広場の絵。


「これ、本当に絵ですの?」


 あまりに鮮明で、エルラムの言うように、写し絵であってもここまで再現できる絵師が、この世にいるとは思えない。


「こいつは“フォト”だ。アンテが創った“カメラ”ってもんで、景色を切り取って、紙に写したもんだ」


 その鮮明な絵を元に、ウイックは自分の記憶と照らし合わせて、“遠渡えんとの秘術”を使い、ソフィーリアの広場に全員で戻る。


 アンテは力持ちのピューレに背負ってもらって、事後報告も兼ねて、カンパーニの元へ向かった。

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