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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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36 最後の大一番、完全勝利への一勝負の噺

 アンテが持ち堪えてくれている間に、どうにか完全勝利の決め手を用意しないといけない。


「さっきのエルラムの攻撃は確かにヤツには効いていた。最後の方は一気に吸収されて蒸発されちまったけど、強力な術でならやっつけられるってんなら」


 とは言えマナを使い果たして気絶したエルラムの助言も受けられず、その決め手というのをどうやって考えるか? しかも時間はあまりない。


「あんたの最大火力、あれなら消せるんじゃあないの?」


「ミルよ。もしかしなくても秘弾を打ち込めば、確実に消せる自信はあるんだがよ」


 打つ手のなくなった剣士は、使えなくなった剣を収めて後方に下がってきた。


「ここは地下世界だ。ヘタに大砲ぶっ放して、どこかのマントル層に穴でも開けてみろ。あっと言う間に火の海地獄と化すんだぜ」


 或いは、深海と繋がって水没なんてオチになるかもしれない。


「どうにも烙印の絆ってやつは、ビックリするほど俺達を強くしてくれるようだ。今の俺が秘弾を撃ったら、どれだけの威力があるか分かったもんじゃあねぇ」


 変な術の行使は自滅を意味する。ウイックは頭を悩ませた。


「そんなの簡単じゃない」

 そう言ってミルが指を立てる。


「うん? ……あぁ!」


 ウイックは改めてプロテクターを装着する。


 どうやらアンテは疎通の護符を持っていないか、完全に忘れてしまっているようだ。


 ワークボットは奮戦しているが、相手が生身の肉体を持っていないエネルギー体では、肉弾戦ではダメージを与える事はできない。


「怪獣には効果合ったけど、たぶんミサイルはエレメントには効果ないよね。うん? ウイックからだ」


 通信の内容を聞いて、アンテは一度エレメントと距離を置いた。


「レッグパーツを交換しないとね。こいつはウサギをモチーフに作ったフットワーク重視のパーツだよ。ステップレッグ装着!」


 腕の太さに負けない太股の、見るからにパワーのあるタイプへ換装したワークボットに、アンテの要請でミルが飛んでくる。


『ごめんね。お願いするよ』

「任せて、このごっつい手に聖光気を纏わせればいいんでしょ」


 エレメントがこちらに仕掛けるつもりで、体を実体化していれば触る事もできるが、流動体のままの部分には、このままではダメージはおろか、触れる事もできない。


 エレメントがワークボットに興味を示さなければ、簡単にここを抜かれて、とっくにみんなの所に行っていただろう。


『熱さは大丈夫?』

「ちょっとキツイけど、チャチャっと済ませて、サッサと下がらせてもらうから」


 こちらが少し違った行動を見せると、様子を窺い動きを止める霊獣に注意しながら、ミルは依頼を達成して飛び去る。


『やるよ、ウイック』

『頼んだ』


 ワークボットは大きく跳びはねた。


 一歩で距離を縮め、エレメントを両腕でしっかと掴み、大きく跳び上がり、頂点に達したところで、渾身の力を込めて上に放り投げた。


『マーニー、お願い!』


 全力のドラゴンブレスを受けたワークボットは、大きく吹き飛ばされる。


「喰らいやがれ!」


 真っ直ぐ上へ飛ばされた霊獣に、その真下へ“転移てんいの秘術”で瞬間移動してきたウイックは直上へ、“秘弾ひだんの秘術”を全力全開でお見舞いする。


 光の束はまるで先ほどのエルラムの水柱のように、天井に向けて一気に伸びていき、その光に飲み込まれた霊獣は、瞬く間に霧散していく。


「さすがにこれで終わりだろ!?」


 辺りに静けさが戻る。


 この辺にいた恐竜は一掃してしまったから、動いているのは自分達だけ、流石にこれだけ暴れたら疲労も困憊。


 ウイックはエルラムのように、マナ欠乏症になる事はないが、全身に溜まる疲労感が半端ではない。


「あれって、天井に穴が開いたよな。なんか貫いてねぇか?」


 立ちつくし、何気なく見上げる天井、距離があっても、ハッキリ分かるくらいの大きさの穴は、その先が明るく見える。


「完全に穴が開きましたね。地上と繋がる事で、この世界も変わるかも知れませんよ」


 意識を取り戻したエルラムが、同じように天を見上げる。


「それにしても地上が近くねぇか? かなり深い海に潜ってたよな」


「もしかしてウイックさん、貴方、魚人の産卵場から入ってきた水路、あれが本当は真っ直ぐ真上に伸びていたこと、気付いてないのではありませんか?」


 感覚としては斜めに上り、そして下り、その繰り返しだったはずだが、エルラムの説明通りだとすれば、結構な距離を上ったということになる。


「貴方って、秘術士としては超一流ですが、冒険者としてはもう少し、注意深さを覚える必要がありますね。そうですよねミレファールさん」


「あっ、う、うん。そうだよウイック」


「目が泳いでますよ。大丈夫なのですの? 本当にこのチームは……」


 呆れ顔の法術士は、深く溜め息を吐く。


「ありましたよぉ!」


 エルラムからレーダーを預かったイシュリーが、メダリオンを見つけて戻ってきた。


「ご苦労さまぁ」

「サンキューな」


 ミル、ウイックに迎え入れられ、イシュリーはアイテムを手渡す。


「あっちの方に恐竜が近付いてきていたので、警戒していますね」


 この中では比較的にまだ動けるイシュリーは安全のために、周囲警戒に向かってくれた。


「みんな、ご苦労様。ようやく一件落着だね」


「こらアンテ! あんたは満身創痍なんだから、大人しくしてなさいよ」


 マニエルに肩を借りて、アンテも戻ってきた。


「大丈夫なのか?」


「大丈夫、じゃあないね。もう一人じゃあ、一歩も動けないよ」


 ワークボットは回収済み、バックパックもストレージに入れた。


「次はあっちね。それじゃあこの子の事、お願い」


 マニエルはアンテの体をエルラムに預け、ミルと二人でセイラとピューレを迎えに行く。


 残された3人には油断はなくとも、その事態に応える体力や精神力が残っていなかった。

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