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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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35 強力な精霊獣に対し、更なる攻防が続く噺

「あれがエレメントの正体か」


 フルフェイスモードを解いて、肌で鱗粉が飛んでこない事を確認し、ウイックは地上に降りた。


「なんとも禍々しいマナを感じますの。恐らくはエレメント本体が操られているとみて、間違いありませんの」


 流動するマグマその物の、獅子の形をした霊獣。


「あれって精霊界の獣でしょ? なんでこんな所にいるの?」


 ミルは情報として知ってはいるが、精霊界の住人以外は、お目に掛かる事のほとんどない、純粋な精霊その物な存在を見るのはこれが初めてだ。


「あれも、あのマスク男の仕業なのか?」


「どうかしら、私達が知らない秘宝が関わっているとしたら、可能なのかもしれないわね」


「確かに神々の宝具であれば、何でもありになりますの。考えるだけ無駄というもの」


 情報通のミルやエルラムも知らないのでは、考えていても仕方がない。


 どうやらエレメントの標的は変わらずウイック達であるよう、声にならない咆吼を上げて威嚇してくる。


「どうされますか? あれがエレメントである以上、生半可な術ではまたマナを吸い取られるだけでしょう。ですが先ほどの秘術でも消滅させられなかったとなると、どれだけの攻撃力が必要となるか、計り知れないですの」


 聖光気を自由に使う事に蟠りを無くしたミルも、獣王の呼気を完璧に使いこなす事ができるようになったイシュリーも、竜人化せずともドラゴンブレスが撃てるようになったマニエルも、ワークボットを失ったアンテも手の出しようがない。


「ワタクシも、せめて“ぶるまぁ”があれば、妖力を最大で使えるのでしょうが」


 今ある術衣の中に、この場で有効な物はないエルラムも、流石に上位のエレメントを相手には、どうする事もできなさそうだ。


「もの凄く熱いです。これ以上は近寄る事もできません」


 ライアとアイラの装甲を、身に纏う事をアンテから教わったイシュリーだが、それでも対抗しようがない事に変わりなく。


「どうにか近付ければ、ワークボットはまだ動かせるはずなんだ」


「おい待てよ。右腕ふっとんでるし、入り口のガラスも粉々だろ?」


「ガラスじゃあないけど、ハッチは装甲を閉じれば問題ないし、腕は切り外せばオプションアームもあるから平気さ」


 二の腕から先を失った右腕だが、四肢を分離すれば、正に球体となる分割構造のワークボットはまだ完全に壊れたわけではない。


「けど熱すぎて僕じゃあ、あそこまで行けそうにないよ」


 マグマの海に僅かな時間であれば、飛び込める強度を持つ鋼のゴーレムだが、それを扱えるアンテが、あれに飛び込めないと意味がない。


「でしたら今一度、水の柱を作ります。通用するかは分かりません。お気を付けください」


「それなら俺も」


「いえ、ウイックさんは切り札です。今は理力を可能な限り高めておいてくださいの」


 エルラムは残りの妖力を総動員して、最大の力を込めてアクアピラーを立たせた。


「助かるよエル、ホバーダッシュ全開だ」


 アクアピラーはマグマに触れ、水蒸気爆発を起こす。


 飛んでもない暴風が押し寄せる。


「うわっ!?」


 身を屈めて堪えようとするが、アンテは体勢を崩して飛ばされそうになる。


「しっかりしなさいよ!」


「大丈夫ですか、アンテさん」


 マニエルが翼を広げて盾になってくれ、倒れそうなアンテをイシュリーが支える。


「ありがとう」


「あと少しだよ。あんたを頼りにしてるんだから、私だって。しっかり答えてみせなさいよ」


 傷だらけになるマニエルは、その場で膝を付く。


 イシュリーは今度は竜娘を支え、ウイック達の元に戻っていく。


 振り返るとアンテがワークボットの中に入っていくのが見えた。


「よかった。ハッチ開けっ放しだったから、もしかしたらと思ったけど、心配は要らなかったみたいだ」


 システムをチェックしたところ、砕けたドリルアームと、失われたライトアーム以外は正常を表すグリーンのライトが点灯している。


「ライトアームパージ、ドリルアームとレフトアームも収納。ストロングアームを装着」


 失った右腕と一緒に左腕も取り外し、アンテのバックパックに装着されるゴーレムハンドの巨大版と言ったところの巨大アーム。


「も、もう限界ですの!」


 しばらく均衡を保っていた水柱だったが、エレメントの膨大な炎に、エルラムの妖力の限界と共に全ては蒸発させられる。


「後は、任せて!」


 アンテはワークボットのハッチの装甲を閉じる。


 外の様子は目の代わりをするレンズを使って、内側の大きなモニターに映し出す。


 エレメントはなにやら警戒していたようだが、エルラムの攻撃が継続しない事を悟り、目の前に立ちはだかるワークボットに狙いを定めて、襲いかかってきた。


 まさかの接近戦。


 四足獣の形をしたエレメントは後ろ足で踏ん張り、前足二本を体を起こして、ワークボットにのし掛けてきた。


「なんなの? 重さを感じる。マナの塊なのに?」


 表面温度は600度ほど、怪獣が放った火炎放射よりやや低い。


 これならワークボットは耐える事のできる温度だ。


 安心するのも束の間、エレメントは口を開き、溶岩弾を高速で吐き出した。


「うわっ、なんて攻撃だ。直撃を喰らったら、ノーダメージとはいかないよ。それに今の……1200度!? 流石にこいつの装甲でも、ただじゃあ済まないかもしれないぞ」


 怪獣の時ほどの力はないが、このエレメントにはワークボットを破壊するだけの攻撃力がある。


「ウイック、時間は稼ぐけど、早くこいつをやっつけてよ」


 プロテクターを一度外しているウイックに、通信機の声は届かない。


 疎通の護符をしまい込んでいるアンテの言葉は届いていないが、気持ちは通じているのか、ウイックは大きく右腕を振り上げて応えてくれた。

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