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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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34 全員で一丸となって厄災に立ち向かう噺

 上空にいるとは言え、怪獣に手出しができないというわけではない。


 動きを止めるウイックに、怪獣の火炎から護るために盾になるエルラム。


 しかし相手に攻撃を撃たせないのが一番の得策。


 ミルとイシュリーも決め手は持っていないが、注意を引こうと、必死に飛び回り、跳ね回った。


『二人は大丈夫なのか? あんなに近付いて』


「平気なようですよ。イシュリーさんはマスクが、ミルさんも全身がピカピカ光っていて、聖光気でしょうか?

鱗粉も寄せ付けないみたいですよ。

あっ、因みにワタクシは風の法術で防護しております。

“エアロシールド”、ウイックさんの“風護ふうごの秘術”と同じ物ですの」


『その手があったな』


 ブランシュカのないミルはバスタードソードで、ここまで多くの戦果を上げてきたが、その刃もボロボロになっている。


 隙をついては怪獣の鱗に打ち掛かるが、全く傷一つ付ける事ができず、では関節などの防御力の低いところを狙っても、今度は柔らかい表面と、その下の硬い筋肉がダメージを通さない。


 ミルはこの時は知らなかった。エレメントであるこの怪獣は、例え斬りつける事ができたとしても、ダメージを残すことはできないという事に。


 それはイシュリーも同じだった。

 獣王拳は精霊力を力にする技。


 マナを吸収する怪物に、ビーストマスターは必殺技が使えないので、攻撃も打撃技主体となるのだが、結果は言うまでもなく、二体のゴーレムと共に牽制役に務めた。


「さて問題は、アンテロッテさんを抜きに、成功させられるかどうかですが……」


 一応はマニュアルを呼び出す事に成功しているウイックだが、空間測量の仕方なんて項目はどこにもない。


 あの空洞で測量してくれたアンテは、即興で要求に応えてくれただけなので、当然と言えば当然の結果だった。


『まいったな』


『大丈夫、任せて……』


『アンテ、大丈夫なのか!?』


 疎通の護符によるものではない、通信機を用いた通話でアンテが連絡をくれた。


『セイラのおかげでね。それと僕を運んでくれた後、マーニーが僕のバックパックをワークボットから外して持ってきてくれたから、測量はできるよ』


 湖の方を向けば、マーニーに付き添われて飛んでくるアンテの姿がある。


『この辺りで作業するよ。攻撃を受けたら、今の僕は一溜まりもないからね』

『わりぃな。頼む』


 測定では火炎放射は届く位置だが、護りは万全。


 なぜかこちらの動きを察知したかのように、攻撃をする怪獣の火炎をドラゴンブレスで相殺。


 無駄な行為と知りながら、火炎が掻き消えた後もマニエルは咆吼を続け、怪獣は角で吸収。


 そのタイミングで特攻するミルが、渾身の力を振り絞って角を打つ。


「くっ、このタイミングならと思ったんだけど」


 ミルはここしばらく愛用していた二本の剣を失い、だが全てが無駄な損失ではなかった。


 間髪入れずに飛びかかるイシュリーの渾身の一撃、獣王の呼気を操り、気を拳に集中させる。


 眩く光る拳の一撃で、怪獣の角は完全に粉砕された。


『よし、二人とも離れろ!』


 マナを吸収する角がなくなったのであれば、通常の術も効果があるのかもしれないが、折角準備したのだから、大きい一撃を喰らわせて完全に消滅させようとする。


「それではワタクシから、“アクアピラー”! マグマを吐き出すエレメントだとしても、タダではスミマセンの!」


 今の持てる全ての妖力を注ぎ込んだ水柱は、エレメントを丸ごと飲み込む。


「これは驚きですね。ワタクシの法術もかなり強化されたようですの」


 だがそれでも純粋なエレメントを、消滅まではできない。


『サンキュー、エルラム! 動きを止めてくれたなら』


 角を折られて荒れ狂いだした怪獣は、周囲に火炎を撒き散らしていたが、エルラムの法術で動きを止め、そこへ最大最強の術をイメージして打ち出す。


『風船は最初から大きく。アイツを包むように広げてから放つ。広げすぎて効果の密度を落とさないようにギリギリの大きさで』


 アンテには術を適当に行使すれば、プロテクターを通して、範囲指定は制御すると言われている。


『つまりあまり気にせずに、全力でやりゃあいいってことだよな』


 これから出すのは初めての試み、前代未聞の術式行使。


『いくぞ、“氷縛怨暫ひょうばくえんざんの秘術”だ』


 試行、試みを行う時、普通は一つの系統でイメージを固めるのが当たり前、と言うか一つのイメージしか扱えないものなのだが、試行系統を二つに、しかも関連付けの難しい氷と闇。


『今の俺ならやれるさ。いけ!』


 一応範囲指定も、今後のことを考えて、自分でどうにかしようとイメージした。


 しかし発生した術は思ったよりもかなり大きかった。


『ちょっ、ウイック。なんなのそのバカみたいに大きな理力』


 アンテは効果範囲の制御をしようとして、あまりの力の大きさに、必要範囲を抑える事ができなかった。


 危うくミル達も飲み込まれるところだったが、なんとか回避してくれた。


 氷の束縛で動きを止め、闇の刃が切り刻む。


 怪獣はどんなに苦悶な表情や藻掻き足掻きを見せても、吐息一つ漏らさない。


 やがて外皮を削り落とされ、耳や指、手足と、順々に切り落とされていき、原型を留めなくなるとも、悲鳴を上げないで、怪獣は消滅した。


『よぉ~し、メダリオンを回収しようか』


 術の効果が終わり、そこにあったのは……。

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