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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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32 常識はずれの化け物相手に奥の手を披露する噺

「あいつら、なんでこっちに向かってこないんだ? あの男の準備は整ったんだろ? 目的は俺達と戦わせる事じゃねぇのか?」


 メダリオンという餌に、案内係も置いて、烙印の乙女との絆を強めた今の魔晶石の力を量りたいはず。


「だとすれば、あの巨竜は今まで戦った、どんな敵よりも強いって事?」


「魔女様と魔王を除いてな。理由は分からねぇが、向こうから来ねぇ、ってんなら先ずは周りの小物を一掃するぞ」


「待って、あれを見て」


 マニエルが恐竜たちの様子がおかしいことに気付く。


「共食い? 違うや。大きいのが他のを噛んでるだけだ」


 その噛んでいる行為、それが凶暴化の元凶だった。


「アイツに噛まれると錯乱するようだな。だからアイツが噛みつきやすい、大型竜だけが凶暴化してるという事か」


 その場にセイラとピューレを残して、ウイック達は巨竜に近付く。


「ウイック、空間攻撃するかい?」


「いや、アイツの耐久値が分からねぇし、ちっこいのは各個撃破でいこう」


 周囲の植物まで犠牲にするのも忍びない。


 ミルとイシュリー、アンテとマニエルは凶暴化する大型種に攻撃を開始する。


 後ろの巨竜に対し、秘術士と法術士は火の精霊秘術と風の精霊法術をぶつける。


「ウイックさん、ダメですよあれは!?」


「ああ、マナを吸収しやがった」


 この手のエナジーを直に喰らう生物は珍しくはないが、攻撃術からマナを取り込むなんて芸当は見た事がない。


「あの角か?」


 基本的には二足で立つ姿勢をとるようだが、熊に似たズングリとしたフォルム腕も足も太い。


 大きな耳は人が掌を頭に当てて開いたように付いている。


 そして額から伸びる一本の角。それが二人のマナを吸収するのを、ウイックは見逃さなかった。


「厄介だな。俺はアイツの頭を狙ったけど、エルラムは腹を狙ったのに、あの角が引き寄せちまったもんな」


「それにしても、あの怪物の周りをご覧くださいな」


「ああ、なんでアイツの周りに恐竜たちが集まってくるんだ?」


 そいつらのほとんどが大型竜の様に見えるが、小型の物も随分と寄ってきている。


「ニオイ、ではありませんか?」


「確かにあっちから漂う甘いニオイ、頭がヒリヒリする感じだな」


 周りの恐竜を噛み回っているから、全身を観察するのは簡単で、その背中には大きく硬そうなヒレが、頭から尻尾にかけて無数にあり、それが鱗粉を振りまいているようである。


「こんだけ離れてても頭が痛くなるんだ。噛まれるまでもなく、あの近くに行ったら錯乱しだすんじゃねぇか?」


 現に今みんなが相手にしているのは、巨竜に噛まれた大型種だけでなく、中型以下の恐竜とも戦っている。


「まずいな。距離を置いての術も効かない。近付きもできないとなると、どうするか……?」


 オールラウンドを謳う術士の二人ではあるが、打つ手が見付からず、周りの小物相手に援護攻撃に徹する。


「あの大きいのは僕に任せて、と言うかウイックもプロテクター装着して」


 ウイックは言われるままにプロテクターを装着する。


「バイザーをフルフェイスモードに切り替えれば、あの鱗粉を吸い込む心配なくなるよ」


 アンテもまたストレージから、これまた大きな塊を取り出す。


『なんだそのでっかい球体。……に手足が付いてんな』


『これは“ワークボット”って言うんだ。元々建築用に創ったんだけど、冒険するならって改造したんだ』


 ただ、最初の起動に搭乗者の理力が必要で、しかも人並みならぬマナを込めないといけないから、今まで動かせなかった代物。


『建築用に創った時は、起動にそんなに強い理力は必要なかったんだけど、あれこれ詰め込んでいるうちに、条件が厳しくなっちゃった』


 だが烙印の乙女として魔晶石の恩恵を授かり、これなら動かせるはずだと取り出した。


 球体は真ん中にガラスのような透過素材の扉が付いていて、その中に入り込む事ができる。


 背もたれのない椅子に座ると、背中を後ろに預ける。


 バックパックが固定され、それが背もたれになりアンテの体を固定する。


 透過扉、“ハッチ”を閉めて目の前にある操作盤に手を置く。


「動いてよ。この場面の切り札になるはずなんだ。キミは!」


 心配はしていない。

 カガク技術その物は理論として、間違いのない事は検証済み、そこに組み込んだ術式付与。この兼ね合いも難しい練金でないのは、背中のバックパックやウイックのプロテクターでも確認はできている。


「よし!」


 起ち上がったワークボットは、アンテロッテの4倍の高さがあり、襲い来る大型竜と同じくらいの大きさがある。


 迫り来る二体の二足種を豪腕の一振り、二振りで殴り伏せ、さらに突進をしてくる四足種の側面へ、ホバーダッシュで回り込むともう一振り。ミルの剣も簡単には通さない装甲を一撃で貫いた。


『スゲーなおい、とんでもねぇもん見せてくれたな』


 疎通の護符ではない。プロテクターのバイザーに備えられた通信機器を使って、ウイックが語りかけてくる。


『それじゃあウイック、僕の合図であの巨竜にミサイルを撃ち込むよ』


 撃ち出し爆発を生むのは火薬の力、いくらマナを喰らう獣でも、その爆風を喰らっては無事ではいられないはず。


 プロテクターの操作は、アンテが逐次説明する。


 ここでウイックにもちゃんと扱えるように学んでもらおうと、錬金術師は目にもとまらぬ基盤操作を開始した。

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