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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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31 危険な巨竜と新たな目標物の噺

 あっ、と言う間に渡りきった砂漠、暑くはないと言っても、歩くとなると大変な大移動となる。


「便利な物ですね。ワタクシにはこのドレスがありますから、必要のない術ですけれども」


 彼女のゴスロリは条件を満たせば、術衣を着た者は自由に好きな場所へ移動が可能になる、かなり便利な物だ。


 因みにこの場面では、条件を満たさないので使えない。エルラムは溜め息混じりで負け惜しみを溢す。


「本当にそいつ便利だよな。俺のこの術は、かなりシビアだからな。使い勝手が悪くてしょうがねぇ」


「そうなの?」


 ミルからすればこんな事を簡単に為してしまう術士そのものが羨ましいが。


「前に言わなかったか? あれは俺が目を閉じて、鮮明に思い出せるイメージがないと使えないんだ。だけどアンテのアイテムで、その問題も大きく解消されたけどな」


 ここが目的地なのかは分からないが、取り敢えず何かあるらしいので来てみたが。


「エルラム、ここに何があるんだ?」


「メダリオンですの」

「はい?」


 ウイックの問い掛けに答える法術士、秘術士と剣士は同時に疑問符を浮かべる。


「何を根拠に?」


「メダリオン、れ~だ~!」


「なんだよ。変な節付けて、れ~だ~ってなんだ?」


 エルラムは手に持った羅針盤のような物をウイックに見せる。


「もしかしてアンテさん、まだ探知機の一つも作ってないのですか?」


 活性化している時、一定の高周波を放つ事を発見したエルラムは、魔女からメダリオンを貰って直ぐに装置を作ったのだとか。


「精霊界ラムーシュでメダリオンを手にした時には、この周波に気付いたのですが、完成は魔門界に行ってからですの。完成したレーダーのテストで探知できた波動を追いまして、深海に向かいましたところ、探査依頼を受けたアイテムもあるしで、後回しにしましたが、ようやく見つける事ができましたの」


 メダリオンが今回の騒動のキーアイテムでない事は間違いない。


 しかしまだ暴走する巨竜が見つからない今、先にそちらを片付けるのも一つの手。


「それで、一体メダリオンはどこに?」


 ミルは辺りを見回すが、何も変わった物は見つからない。


「あの、一体何のお話かは分かりませんが、それよりあれ?」


 ピューレが指差すのは、湖の向こう側にある森林地帯。


 そこにあるのは特大の恐竜の姿。


「もしかしてあれが、凶暴化した巨竜というやつなの?」


 確かに一際に大きなそれは、ドラゴン種の中でも最大級の黒竜に匹敵する。


「あれには見覚えあるな」


 巨竜の周りにいる、素早い動きを見せる二足竜と、鎧のような硬い鱗に覆われた四足竜には見覚えがある。


 最初の空洞では多少の凶暴さは感じたが、今見えるものは、破壊衝動にかられての事だろう。周りの木々を薙ぎ倒している。


「メダリオンの反応は、あの褐色の巨竜の中からありますの」


 退治を依頼された怪物の中になど、あまりに話が出来過ぎている。


「……取り敢えずアンテ達を待つか」


「えっ、あの、直ぐにどうにかしてもらえないんですか?」


 確かに目標は見つけたが、その対象が動きを見せてないのに、突っ込む必要はない。


「そぉ、ですね。……あぁああ、アレ見てください」


 挙動がどんどんおかしくなるピューレ、指差す方で動きがあった。大きな尻尾を振り回し、顎を開いて威嚇の咆吼を上げると、二足竜の数匹がこちらに向かって走ってくる。


 このまま無視はできない。ウイックは“光弾こうだんの秘術”で迫ってくる二足竜を殲滅して、ラティアン少女の表情を窺う。


「マスクの男に命令されたのか?」


 疑いは出会った瞬間からあった。


 魚人を食すために集まる恐竜の群れの話は信じられる。


 だが、しばらく魚人が現れていないのに、ウイック達があの数から待ち伏せを受けるなんて話はあり得ない。


 そしてなんの前触れもなく訪れたウイック達と、少女があんな場所で出会すのがおかしい。


 最初の空洞に今のと同じように凶暴化した、二足竜や四足竜が居なければ、まだ話の辻褄も合わせられるだろうが、凶暴な竜が闊歩する中、この少女があそこで単身で息を潜めていた理由が、どう考えても説明できない。


「め、命令なんてされてません」


「命令されたんじゃなくて、依頼を受けたってところじゃない?」


 タイミングよく合流するアンテが、集落で収拾した情報で結論づける。


「ここって、出口がないんだって。知らないだけって言ってたけど、今はまだここから出る方法は見つかっていないんだ」


 魚人でなくなった彼女達は、深海に繋がるあの穴が使えない。


 それでほとんどのラティアンは諦めて、ここで生活を送ると決めたらしい。


「彼女、ピューレはただ一人の脱出希望者だって。しかもかなり熱望しているみたい」


 とどのつまり、ウイック達を売って、見返りに地上へ出してもらおうと、アイツと約束を交わしたという事だ。


「その策に乗ったはいいが、まさか同胞から犠牲者が出るとまでは思っていなかった。そんで急いで竜を退治して欲しいってとこか」


 完全に観念した顔のピューレは、尻尾も下がってしまい、青い顔をしてへたり込んでしまう。


「よし、全員揃ったところで、あのデカブツ退治して、メダリオンゲットでさっさと帰るぞ。ピューレも付いてくるか?」


「えっ?」


 顔を上げるピューレだが、ウイックの言葉が今ひとつ理解できていない。


「なんだ? 地上に出たいんだろ? 俺達が戻る時に一緒にくればどうだ。と言ってんだけどな」


 目の前の災厄を放っておく気はない。


 なによりメダリオンはあの巨竜の中にあるようだし、目的を果たせば帰るだけ、その時に一人や二人が増えたところで問題はないと、秘術士は言っている。


「わ、私は何をすればいい? 手伝う事はある?」


 謎の仮面の男の口車に乗って、同胞を失った罪は消えないが、罪滅ぼしにもならなくても、あの化け物はどんな手を使ってでも消さないといけない。


 こうなったら命を賭けてもいい。ピューレは全力でウイックに力を貸す事を誓う。

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