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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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30 問題解決のため、新たな呼び名から考えてみる噺

 木材で囲まれた集落の中には、様々な年代の地底人が生活をしているが、この場所に男はいない。ピューレの説明通り、ここにいるのはみんな元魚人、そのメスだった者達と言う事だ。


「魚人ってのは人魚に負けず劣らずの、美人揃いじゃねぇか」


 ウイックの注目点はそこではなかったのだが、少女達は揃って気を悪くする。


 しかし次の一言で、彼が言わんとする事が理解できた。


「彼女達は随分と力持ちなんだな」


 見るからに華奢な体躯なのに、立派な大木を一人で持ち上げるほどの怪力を持っている。


 建築様式はかなり粗末なのに、力業ではあるが、丈夫な蔓で大木同士をしっかり組み合わせているので、集落の柵も建物もそれなりに頑丈にできている。


「こんな柵を設ける必要もなかったんですけどね」


 彼女がウイック達に解決を依頼したい問題というのは、一部の恐竜達の凶暴化について。


 最近までは全く襲われる事のなかった地底人達だったが……。


「それだ! その地底人って呼び方をどうにかしないか? この容姿にその呼び方がそぐわねぇんだな」


 いきなり脱線するウイック。


「呼び方? 今、それどうでもよくない?」


 と言うミルの突っ込みに。


「いや、それは大事だよね」とアンテ。


「可愛い呼び名がいいよね」とマニエル。


「リザードマンと似た部分もありますが?」エルラムはピューレを観察し。


「元々は魚人なのよね」とセイラ。


「外の世界との関わりがないから、いらないのは分かりますけど、やっぱり名前はある方がいいですよね」


 と言うイシュリーの意見ももっとも。


 ミルは考えを改めて、みんなの輪の中に入る。


「あ、あのぉ……」


 一人取り残されるピューレだが、あまりに真剣そうに進められる話し合いに入り込めず。


「よし! ラティアン、ラティアンでいいよな。ピューレ」

「えっ? ああ、はい、えっ?」


 話は聞いていたし、流れも分かっている。


 しかし急に「決定な!」と言われても、笑顔で受け入れるなんてできやしない。


「な、なんでその名前なんですか?」


「響きがいいから」


「そんな理由で?」


「後は可愛いじゃねぇか、ラティアン」


「ラティアン……」


 名前なんて必要ないし、聞こえ方の響きなんてどうでもいいが、言われて考えると悪くない気もする。


「ちょっとウイック、ちゃんとみんなで案を出し合ったんでしょ。ラティアンはクラクシュナ王国の言葉で、隠れた楽園を意味するラトアナから考えたんでしょ、イシュリーが」


「語源を出してくれたのはミルさんですよ。それを可愛いなって響きで考えただけです、私」


 つまり響きがよくて可愛いから。


「合ってるじゃないか」

「……もういい」


 呆れるミルはピューレに「どうかな?」と改めて訪ねる。


「皆さんが呼びやすいという事なら問題ないと思います。仲間には後から伝えておきます。……えーっと、話を戻していいですか?」


 急に脱線したので心配だったが、ちゃんと話の流れは覚えていてくれた。


 ラティアンが恐竜に襲われたのは、割りと最近の事。


 最初は魚人を食べられず、人型をした自分達が替わりに狙われているのかと意見も出たが、食用に欲しているのとは違うようにも思えた。


「殺されても食べられない?」


「だから単に恐竜たちは凶暴化したのだろうと、その原因を探っているんです」


 先ずは対策のために集落を柵で覆った。ということらしい。


「それで俺達にも恐竜の事を調べて欲しいと?」


「はい、そちらの髪の短い人は、なんだか色々と物知りのようなので、見て頂ければ何か分かるのではないかと」


 集落の中、集会場に使っているという井戸のある広場に、丸太を横に置いただけのベンチに腰を降ろして、詳しく話を聞く事となった。


「その凶暴になった恐竜は、大型の物だけなのかい?」


 早速気に掛かる事を確認するアンテに。


「もう気付いたんですか? その通りなんですけど」


「いや、ここの柵が丈夫なのは分かるけど、扉もないと言う事は、小さな個体は警戒しなくていいって事だもんね」


 全てが凶暴化しているのだとすれば、ここにいるラティアンなんて、あっと言う間に全滅しているはず。


 だとすればごく少数の、しかも大きな恐竜だけが、何らかの理由で暴れていると言う事になる。


「では、その巨竜が生息する辺りに行ってみるしかありませんね。実際見てみないと答えは出せませんの」


 この辺りは低木が群生しているから、巨竜が入っては来にくいのだが、恐竜が暴れ出すまではなかった、不自然なくらい広い道一本が出現し、遠くまで続いていることを確認しているそうだ。


「あの先に行ってみるしかねぇか」


「そうだね。それとは別に、この周辺でも大型種がいるのか、それも調べたいな」


 凶暴化しているのは全ての大型種なのか、或いは道の向こうに何かが起こっているのか、ウイック達は手分けをして調査する事にした。


 周辺探索には人手も機動力もいるだろうという事で、マニエルとイシュリーにアンテが当たる事に。


 ウイックとミル、エルラムとセイラに案内係のピューレで、怪しい地点の調査を担当する事になった。


 一本道はしばらくすると砂漠地帯に繋がり、調べるべきポイントを特定できなくなってしまうが、エルラムが気になる場所があると指差したので、とにかく行ってみる事に。


「しかし砂漠なのに全然暑くねぇな。この地下世界は箱庭みてぇだ。誰かが意図的に作ったみてぇじゃねぇか」


 砂漠は広大ではあるが、遠くには高木の密林も見える。


 天井の高さが決まっているので、背の高い山などはないが、高台なんかは遠くにうっすら見えている。


 エルラムが指差す方角には大きな湖がある。


 ウイックはミルに頼んで一緒に空を飛んでもらい、湖の様子を目に焼き付ける。


「そんじゃあ行くぞ。“遠渡えんとの秘術”」


 ウイック達は湖の畔に生える、特徴的な木を目印に空間を渡った。

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