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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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27 呆気なく終わりかと思いきや、先はまだあった噺

 7人は元いた海底洞窟に戻ってきた。


 鳥人像もどこかに行き、ウイック達は知りようもないが、亀甲船からエンゲラも姿を消していた。


 まだ何かをやらせようとしている。


 そう思ったのだが、周りの様子におかしな所はない。


『目的は果たせたという事か? なんか拍子抜けだな』


 相手の意図が読めない以上、ここに留まってはいられない。


『さっきの空間にいる間に、あの男を取り押さえて、全部聞き出しておくべきだったわね』


『そりゃあ無意味だぜミル。あっこが敵のテリトリーなら、都合の悪い事はやらせてもらえねぇぜ。俺やエルラムが対処しようにも、時間はかかるからな』


 実行犯があの男でも黒幕がいる以上、ここへ無事に帰ってこられただけで、ヨシとするしかない。


『さぁ、戻ろうぜ。亀甲船に戻って、現実のヤツから情報収集だ』


「ちょっと待って、ねぇ、奥見て」

 マニエルが何かを見つけ、行き止まりの方を向く。


『こんな所に通路が? こんな道はなかったはずだぞ』


 ちょうど一人が通るのがやっとという穴があり、水の流れもある。


『行ってみねぇか?』


 ウイックの提案に全員が首を縦に振る。


 狭いところを進むため、小回りが利くセイラ、マニエルの順に進み、後に続く潜水服組、最後に“すくみず”少女が続く。


 上へと伸びる通路は暫く行くと下を向き、そしてまた上へ。


「あれ? 水面がある」


 先頭のセイラが水面から顔を出す。

 そこは少しだけ拓けた空間。


 一同は順番に水から上がり、辺りを見回した。


「これなんて鉱物だろう? 淡く光ってるから、明かりを用意する必要もなくて助かるね」


 水から上がったアンテが一番嬉しそうに周りを観察している。


 セイラとマニエルが、ここでは肺呼吸が可能だと教えてくれたので、潜水帽を外す。


「大丈夫そうだね」


 アンテがOKをくれたので、ウイック達も潜水服を脱ぎ、いつもの軽装スタイルに。


「横穴か、ずっと先まで伸びているな。行ける所まで行ってみるか。セイラは一緒に行けそうか?」


 大量の水が足を変化させる人魚の体質も、水から出れば直ぐに人型の足になるわけではない。


 しかし理力量の多い者は、己の意志で変身を調整することができると聞いていた。


「大丈夫よ。私もなぜかいつの間にか、変身能力が自在に操れるようになってたから」


メダリオンが刻印の乙女と秘術士の絆を強くすれば、安定した魔晶石の活性化が高まり、その力は乙女達にも力をもたらす。


「あくまで仮説だけどね。僕も今ならアレを使えると思うよ」


 横穴は思った以上に長く、暫く続く細道だったが、やがて大きな空間に出る。


「なんかデカイ地下空洞だな。奥まで見えねぇぞ」


 光る鉱物は十分な光量がないので、あまり遠くまでは見えない。


「まだ見えねぇけど、敵意はむんむんだな」


「えぇ、すごい数がこちらを警戒してる」


 ウイックはワンドを、ミルはバスタードソードを取り出し、イシュリーも構えを取り、ライアとアイラを召還する。


「えっ、なに、なにがあったの?」


「セイラも注意して、私もまだよく分かんないけど、たぶん危険が近付いてる」


「その通りですの。それも生半可な数ではありませんの」


 水から上がって直ぐに、ウイックが目の前にいるのに“すくみず”を脱いで、いつものゴスロリに着替えたエルラムは、法術で光源を創り、空洞の天井当たりに飛ばす。


「何あれ、あんなの見たことないよ」


 マニエルが明るくなった空洞内に見たのは、二足で統率の取れた動きで襲い来る大型の生物。


 ミルとイシュリー達は既に敵と断定し、そのただ中で暴れ回っている。


「タイラントに似ているけど、あれは爬虫類のようだね。ここは暖かいから活発に行動できるみたいだ」


 アンテはゴーレムハンドをバックパックに装着。


 マニエルも飛び出していき、エルラムは後方から法術を打ち続ける。


 補助術式を得意とするセイラは、エルラムの後ろで理力を高めて待機する。


「ここじゃあミサイルみたいな炸薬は使えないし、相手は大きな獣ばかりだし」


 二足の獣は、大きな尻尾を振り回し、太く筋肉質な足に比べて、あまりにも小さな手でバランスを取りながら、飛び跳ねて襲いかかってくる。


 奥の方にはさらに大きな二足種と、全身が甲殻に覆われているような四足種が雄叫びを上げて待ち構えている。


「もしかしてあれ、恐竜じゃないの?」


「あら、アンテロッテさんも気が付かれましたか? 本当に物知りなのですね。感激です」


 エルラムは霊冥界で見た事があるが、あまり資料も残っていない大型爬虫類の正体に思い当たるアンテを賞賛する。


 大海洋界が生まれ、大魔王が降臨するまでの短い間であったが、一時期、食物連鎖の頂点に立った恐竜は、ヴァファムーアが世界を氷で覆わなければ、絶滅する事もなかったであろう。


「なんだっていい。向かってくるって言うなら、叩き潰すまでだ。絶滅せずに生きてきたのに、やりぃとは思うがよ」


 一度下がるウイックが、エルラムとアンテに近付く。


「まだ奥に通路がある。ここは一気に片を付けて先に進むぞ」


 半端ない数の恐竜を前に、何かを思いついたウイックが二人に声を掛ける。


「ちょっと試したい事があるんだ。エルラムのメモにあった爆発を作る術」


「ああ、大体何をされたいのか、見当が付きましたの」


「アンテ、この場所の広さを測って、教えてくれ」


「ちょっと待って、試すって、やったことないって事でしょ? 何やらかすつもりさ?」


 エルラムは想像が付いているようだが、爆発と聞いて、アンテは不安になる。


「大丈夫だ。秘術ってのはイメージ次第で何だってできるもんだ。俺を信じろよ」


 そのイメージを固めるためのアドバイスと、この空洞の広さを精密に測った情報を、二人の少女はウイックに与える。

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