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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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25 若くして大剣豪と謳われる少女の秘密が明かされる噺

 円卓にはお茶とスイーツが用意されている。


 この空間にいる者は、イメージが明確であれば、こうやって誰でも何でも取り出す事ができる。


「へぇ、ここ夢の中だったんだ」


 自分がウイックと過ごした時間のことは覚えていても、アンテ、セイラ、マニエル、イシュリーは他の時間の経過を感じてすらない。


 いくら呼んでも姿を現さないセレーヌを抜きに、ミルの話はスタートする。


「さてと、どこから話せばいいのか……」


「もしかしてミルさんが、天上界の人だってことの話?」

「えっ?」


 今まで隠してきた事を、一体どこから話すものかと言葉を選んでいると、アンテがいきなり確信に触れてきた。


「なにそれ? どういう事」とマニエル。

「えっと、ミルさんが聖光気を扱えるって、所の話でしょうか?」とイシュリー。

「あら、皆さんもしかして、この方が天使様だって、知らなかったのですか」とセイラ。

「えっ?」と少女達。


「だってこの人、ずっと自身から聖光気を発してますよ。そんな事できるのは天使様だけですからね」


 それが分かっていながらセイラは、ウイックに自分を売り込んだあの時、ミルに喧嘩を売るような言葉を使ったが、みんな全部知っていて自然に接していると思い、遠慮せずに踏み込んだのだそうだ。


「そう、話が早くて助かるわ。けどごめん、私は天使じゃないの」


 天上界の住人でも聖人は聖光気を扱えても、体から発する事はできない。


 ミルも聖光気を出す事はできているが、天使のように溢れ出しているわけではなく、使う時は意識する必要がある。


 今までも剣に対して聖光気を使用してきたが、まさかそんな微量な反応を探知されていたとは思っていなかった。


「天使でないと言う事は、亜天使ということ?」


 その辺りの知識も持っているアンテには心当たりがあった。


 ミルは集中して背中に羽根を生む。


「すごく綺麗な純白ね」

 広げた翼から散る羽根を拾い上げ、マニエルが歓喜の声を上げる。


「本当に綺麗ですね。大きな羽根と小さな羽根」


 イシュリーは立ち上がり、ミルの背中側に回り込む。


「片翼……」

「セイラは天上界についても詳しいみたいね」


「それはもう、私達人魚は元々オーガイルで生まれた種族、今は大海洋界の大海原に生きてはいても、その伝承は今も受け継がれているから」


 天上界にも様々な種の生命が息づいている。


 その中には人魚のように進化を遂げ、人格の生まれる生物がいる。


 鳥人のように天上界で住まう者もいれば、生息地とするには息苦しいと、故郷を捨てる種族も少なくない。


「それにしても本当に綺麗。だけどこの翼じゃあ、飛べないのかしら?」


 マニエルの疑問はもっともだ。


 自分も翼を広げて空を飛ぶ事ができるが、それは両翼がちゃんと風を掴むから。片方の翼で羽ばたいたところで、浮かぶ事すらできないだろう。


「いいえ、聖光気を込めるとね」


 右肩の大きな翼に合わせて、小さな翼は黄金に輝いて、光の翼が生まれる。


「本当はね。大空に放り出された時に、自分で飛ぶ事はできたの。ごめんねアンテ」


「いいよ、別に。ウイックの事もなんとかなったしね」

「ごめんね。ウイック」


 ずっと黙って静観するウイックは、ここでも首を縦に振るだけ。


「待って、確か天使って、亜天使の存在を認めていないって聞いた事あるけど」


「アンテって本当に博識よね」


 話しにくい事も、後押ししてくれると進展させやすくて助かる。


「天使の子供はね。人種ひとしゅの子供と一緒で、生まれて暫くは羽も生えてないのね。

大体にして平均6歳とか7歳くらいから、徐々に生えてくるんだけど、亜天使の子が片翼だと分かるのは、生え始めから2年くらいね。

私の小さな羽みたいな状態がそのくらいまで続くから」


 亜天使とは、天使と別種族との交配種で、過去例もほとんどない事だが、時に生まれる子を、オーガイルは特例無しに処分をしてきた。


「私の場合は本当の父親に預けられ、天上界から事実上の追放を受けたの」


 生活の保障として金銭を渡され、身に覚えがありはしたものの、自分の子として認める事のできないミルを、それでも一応は育ててくれた。


 そのころの生活はろくなものではなかったけれども。


「そもそもなんで亜天使として生まれたの? お母さんに何があったの?」


 マニエルはご近所で井戸端会議でもしているかのようなノリで、ぐいぐい食い込んでくる。


「今から約20年前、魔王ルシュドナ。人種ひとしゅ史上、最大の罪悪を重ねて魔物落ちした、八大魔王二番目に年若い大悪党が、ある日突然オーガイルに攻めてきたの」


 他の世界との交流を完全に閉ざしている天上界には、いかな魔王とて境界を渡る事は許されない。


「教義に異を唱えたと粛正を受けて、堕天したイザエナルが魔王軍を招き入れ、大きな戦乱が起きたの」


 常日頃から戦いに明け暮れる魔神達を相手に、天使達は苦戦を強いられた。


「我が母、エヴァマラーラは、剣聖様と共に魔王軍に立ち向かい、1年にも及ぶ戦いの果てにルシュドナを退け、戦争は終結した。母様はその終戦の報を聞く事はなかったと教えられたわ」


 天使エヴァマラーラは戦いの最中、次元の歪みに落ち込んでしまい、大海洋界に堕ちた。


 その際に記憶を無くした天使は、人種ひとしゅの男性に助けられ、治療してもらった。


 記憶を取り戻すのに半年以上かかったエヴァマラーラは、その間に恩人と恋に落ち、その時に授かった子がミレファール=フランセーレだった。

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