24 法術士の目論見を知り、剣士の掴んだ情報を聞く噺
ここまでの少女達の行動の中で、一番理解できない展開。
罠があるとすればこちらが本命か。
「俺は別に構わねぇがよ」
「あら、いともあっさり」
それでもウイックには断る理由がなかった。
「でもお前、アンテとマーニーの事、変な逆恨みしてんのはいいのか?」
「えぇ、大事の前にはそのような些細な事は、どうとでも……」
明らかに感情を昂ぶらせてはいるが、それくらいは腹も括れている様だ。
「と言っても他のみんなが反対したら、今の約束はキャンセルになるけどな。お前ほどの術者が手を貸してくれるなら、大助かりってもんだ」
「ワタクシの望みを叶えるには、貴方の目的をお手伝いするのが、一番の近道だというデータが揃いましたの」
ウイックに信じてもらう為なのか?
エルラムは懐をさらけ出して、信用を得ようとしている。彼女の言葉に嘘はないと、そう信じる事ができた。
「望みって言うのは?」
「大魔王の復活と、それの消滅」
それは確かにウイックの最終目標と、ほとんど同じくしている。
「それじゃあなんで、今まで邪魔してきたってんだ?」
「ワタクシのカードは、その貴方の胸にある……」
魔晶石に服の上から手を添えて、エルラムはウイックを上目遣いに睨み付ける。
「メダリオンを全て見つけた後、その秘めたマナの力を直列に繋いで、一気に注ぎ込む。これを潰してしまえば、不完全に復活した大魔王を消滅させるのは、難しい事ではなくなりますの」
普通の手段では傷一つ付けられない魔晶石を、破壊する方法を見つけたのだと言う。
「その場合、俺は?」
「そのような事、分かりませんわ。運が良ければ助かるのではありませんの?」
エルラムなら平気でウイックの事を見捨てるだろう。
それがなぜ心変わりしたのか?
「あなた方の言う、烙印の乙女の存在ですわ。ワタクシ自身が選ばれ、また、“操体の秘術”を自分で施行してみて判りましたの。
メダリオンの力を利用しようとも、魔晶石を破壊しようとしたところで、刻印が貴方を傷つける事を阻むようですの。
魔晶石の恩恵を受ける貴方を消す事も難しそうですので、なのでワタクシも協力しますわ。貴方が大魔王をどうにかしてくれるだけの力を手に入れるために」
そう言うと、一枚のメモを取り出してウイックに渡す。
「ワタクシの法術作成のイメージを書き記したものですの」
「お前、俺の術を盗むだけじゃあないんだな」
「当たり前ですの。これまで自分の手の内は見せずに、貴方の力を手に入れるのは、全て戦略としての事ですの」
もちろんウイックの方も、エルラムに全てを見せているわけではないが、そのメモには注目すべき点がいくつもあった。
「それと……」
「お、おい!?」
唇を重ねるとご丁寧に舌まで使ってくる。
「ワタクシも貴方に好意を抱いてしまいました。これが一番の理由ですの」
頬を赤らめ、潤わせた瞳でみつめる。
「お前、それが一番嘘くさいわ」
「なっ!? 乙女の告白をよくもそんな……、ま、まぁ、いいですの。言質も頂きましたし、次の方がお待ちのようなので」
エルラムは目の前から消え、替わりに背中側に気配を感じる。
「さて、最後はどういう趣向かな?」
「全く、随分と待たされたわよ。楽しめたり、妙にむかついたり!」
最後になったミル、その様子もエルラム同様シナリオを無視して、自由な意志が働いているようだ。
「お疲れ様、ウイック。流石の貴方も、そろそろ気を緩めたいでしょ?」
「お前……、全部観てたのか?」
「いま使われているアイテムの事、知ってたからね。それに対する対処法も教わっていたから」
剣士たる少女の足下には、倒れて身動き一つしない仮面の男の姿が。
「そいつは……」
「残念ながらこの空間で、止めを刺す事はできないわ。ただ変な小細工ができないように、眠らせただけ」
「あ、いや、亀甲船に閉じ込めたはずなのにと思ってな」
「この空間に肉体の居場所とかは関係ないわよ。分かってんでしょ?」
ミルは腰を落とし、男から仮面を奪う。
「知り合いか?」
「タダの顔見知り、もっとも子供の頃に二、三度顔を見ただけよ」
男の名はエンゲラ=コーバンス、聖人である。
「天使ミシェルフに使えるコーバンスの嫡男、彼の父はまもなく天使に昇華する身よ」
この一連の騒動、ミルには背後の影が見えているようだ。
「……あの男、ミシェルフが貴方に目を付けた以上、隠してもいられないと思ってね。みんなも出てきて、全部話すから」
ミルの言葉と同時にアンテ、セイラにマニエル、そしてイシュリーが姿をみせる。
「あんたも出てきなさいよ。みんなに言う事もあるでしょ」
その言葉につられて、黒衣の法術士も姿を現す。
「やれやれ、やはり貴方は……」
「それ以上は言わないで、ちゃんと私の口から言うから」
そう言うと目の前に円卓が現れ、一同は腰を落ち着けた。




