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【朝晩2話毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第五章

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第046話 『聖女スフィア』③

 スフィアにしても脱がされるためにもう一度着るというのは考えてみれば相当に間抜けな状況だと思うのだが、ごそごそと服を着る気配がしてきたのでよしとしよう。


「……あと今は早朝なので、いつの間にか鳴くのは小鳥ではなく、教師とか男子生徒たちの多くが泣くことになると思うぞ」


「時間を間違えてしまいましたか」


 そうですね。


 早朝とはいえ最初の授業開始まで数時間しかないですし、俺はともかくスフィアがその時間になっても部屋から出てこないとなったら、大騒ぎになるのは間違いない。中にいる気配はあるのに返事をしなければ、強引に扉は開かれることになるだろう。


 残念ながらそんな状況で「スフィア? 俺の隣で寝てるよ」をできるほど、俺は肝が据わってはいないんだ。


 以上を説明すると感心したように「なるほど」とか言ってやがる。暢気だな。

 というか時間ではなく、小鳥よりも男どもが泣くって方に反応して欲しかったのだが。


「いやたとえ夜でも、スフィアの期待通りがっとは()()()()けどな」


 あ、間違えた。


 正しくは()()()()というべきだった。

 ここで内因なのか外因なのかは大きく違う。


 要らんところで本音を晒してしまった。

 スフィアは俺より頭もよく回転も速いので、しっかり言質を取ったような顔をしてやがる。いかんな、これでは外因を排除に動きかねないぞこの人は。


「そ、それはどうしてですか?」


 どうしてもこうしてもあるか。

 思わず己の発言を否定したくなる切なげな声を出すな。嬉しそうにするな。


「死にたくないからだよ」


「? 私はクナド様を殺したりしませんよ?」


 そんなことはわかっている。


 というかスフィアが本気で殺したい、死んでほしいと思った人間はとっくに死んでいると思うので、今俺が生きていることがスフィアの言葉を真実だと証明していると言える。


 もしもスフィアがその気になったら、奇跡によってなんの証拠も残さまないままに居なくさせることだって可能だろう。それになにもスフィアが直接手を下さなくても、聖女様のお気持ちをおもんぱかって自律的に動く狂信者連中が掃いて捨てるほどいそうだしな。


 なので今回のことがなくても、俺の立場はすでにかなり危ういのだ。


 アドルやクリスティアナ王女殿下、カインが親友扱いしてくれていなければ、この3年間できっと数え切れないほど襲撃されていたことだろう。その度、文字通り寿命が縮む思いをさせられていてはたまったものではない。降りかかる火の粉を払うのにも、わずかとはいえ俺は寿命を使わなければならないのが地味にキツい。


「うーんわかんないかな? 聖女様の純潔を散らして奇跡を起こせなくしてしまった馬の骨を、聖教会のみならず世間様がどう扱うのかくらい想像できない?」


 火刑に処されかねない。


 いや冗談などではなく本気で。


 なにも考えずにスフィアに手を出した場合、そういう狂信者の皆様のみならず、世間様すべてを敵に回すことになるのは明白なのだ。


 そうなるとアドルたちでもさすがに庇いきれまい。


 今万民の期待を一身に背負っているといってもまるで過言ではないのが、アドルをリーダーとした勇者パーティーなのは言うまでもない。魔王を倒して欲しいと思っていない人間など、ほとんどいないはずだからだ。


 聖剣の勇者アドル。

 不壊の剣聖王女クリスティアナ。

 万魔の遣い手賢者カイン。


 そして奇跡の聖女スフィア。

 

 誰一人欠けることの許されないその一角を、色に惑って手折ったとなればただで済まされるはずがない。


 どうせ世間様では、すでに勇者や剣聖王女、賢者をたぶらかしているクソ雑魚ナメクジ(俺)が、世間知らずな聖女様スフィア言葉巧たくみにめにしたことにされるのだろうし。


 聖女は神様にみさおを立てることによって、大奇跡の行使を許されている。

 少なくとも聖教会では正式にそう言い伝えられている。


 世間様がそれを信じており、世界が奇跡を必要とする厳しい状態である限り、聖女に手を出す者は例外なく人類の敵なのだ。手を出すのが俺ではなく、たとえこの国の第一王子や勇者アドルであっても等しく火刑に処されるだろう。


「私がいくら誘惑してもクナド様が手を出してくださらない理由を、初めて正直に答えてくださいましたね。――はい、きちんと着ました。絶対に後で脱がせてくださいね?」


 本当に俺の話聞いていましたか?

 脱がしたら俺が死ぬって話を今、していたはずなのですが。


 それに俺は確かに脱がすのが好きだとは言ったが、脱がすとは言ってない。


 ただ会話を続けながら衣擦れの音がしていたのは確かなので、とりあえず服を着てくれたことは確かだろう。後で脱がせることは絶対にないが、これでやっと落ち着いて会話することができる。


「いい子ちゃんもモードじゃないスフィアなら、そんなことくらい分かって、いた……だ、ろ?」


 寝間着!


 安心して振り向いたら、スフィアが身に付けてくれたのは、下着といった方がはやいくらい白くてふわふわした寝間着だった。なんだっけこれ、確か夜艶衣ベビードールっていうんだっけ?


 絶妙な透け感があって、これ下手をすると全裸より破壊力高いぞ。


 二段構えの罠か。

 全裸で油断させておいて本命の夜艶衣ベビードールをここで突っ込んでくるとはってなにを言っているのか俺は落ち着けステイステイ。寝てろ! 目を覚ますな!


「いえ、クナド様がそんな古臭い通説を信じておられたことに、少々驚いてはおります」


 なにしてやったりって顔しているんだスフィア。

 ここで恥じらいの表情を見せていたら、あるいは勝っていたかもしれないのに。


『聖女スフィア』④

12/18 18:00台に投稿予定です。


新作の投稿を開始しました。

2月上旬まで毎日投稿予定です。


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