表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【朝晩2話毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/52

第043話 『賢者カイン』⑩

「再構築はできそうなのですか?」


 本能的に隠し事は拙いと判断したカインが正直に伝えると、いつも通りに見えてまるで他人のようなスフィアが冷たい声で再び問う。


「どうにかね」


「……魔法もすごいのですね。局所的にとはいえまさか世界を創りなおすとは」


 その問いにもカインがほぼノータイムで正直に答えると、永遠にも近い数舜の後に、スフィアはいつも通りの口調に戻って嘆息した。カインの様子からスフィアがいつもと違うことに気付いたクナドも固唾をのんでいたのだが、身に纏っていた異質な空気が消えると同時に頭上の天輪も消え去っていた。


「――え?」


「――は?」


 だがクナドもカインも、その変化よりもいつも通りのスフィアが口にした内容に間の抜けた声を出してしまっていた。


「まさか自覚もなくやっておられたのですか。もう、クナド様はもう少し自分を大事にしてくださいといつもお願いしておりますのに」


 アホ面を晒している2人に対して、完全にいつも通りの様子に戻ったスフィアが可愛らしく頬を膨らませて呆れた表情を浮かべている。


 奇跡を司るナニモノカとしては対立する魔法の極北、世界を創りかえる『黒白』の発動は看過できず、今代の聖女であるスフィアを依り代として顕現していたのかもしれない。

 

 だがそれがクナドによるものだと知った、スフィアの意思に抑え込まれたのだ。


 そしてそのクナドはカインが使えるようにすることが目的だったので、カインが同様に使えるようになっていることも、スフィアはよしとしたという図式だろう。


 もしもクナドが関わっていなかった場合、スフィアに宿ったナニモノカがなにをどうしようとしていたのかはわからない。


「ああ、なるほどそういう魔法なのか。文字通り術者にとって都合の悪い世界を消して、都合のいい世界を創りなおす。だから『無限廻廊』を抜けることができたのか。だがそれが千年ぶりに発動したことによって、奇跡が――」


 クナドはまだピンと来ていないようだが、カインはそれを瞬時に理解した。


 となればそのスフィアが与えてくれたヒントから、『黒白』の正体のみならず、内在も外在も魔力を必要としない奇跡、その発動を可能ならしめている存在へまで一気に思考は加速する。


 なにしろあのスフィアがねじ伏せたのだ、もはや神の禁忌であろうがなんであろうが、クナドが存在している限りは警戒する必要はないと判断したのだろう。

 ある意味カインはスフィアという個人を、奇跡を起こすナニモノカよりも恐れている、あるいは信頼しているのだ。


 敵に回せば絶望しかないが、味方であれば神様すら畏れるに足りない。


「そんなことよりもクナド様、また寿命を使われましたね? 次に使ったら私の提案した寿命を延ばす方法をやってくださるお約束だったはずです」


 だがスフィアはカインの言葉を強引に断ち切った。


 クナドに害を及ぼすのなら絶対に抑え込むが、どうでもいい馬鹿カインが調子に乗って禁忌に触れた場合は、抑えきれない可能性もある。スフィアとしては自業自得で済む話なのだが、そうなると最終的にはクナドが悲しむのはわかっているので、言葉で賢いつもりの馬鹿の言葉を止めたのだ。


「いやしていない。そんな約束は絶対にしていない」


 だがそれに気付けたのはカインだけで、クナドはした覚えもない約束とやらについて抗議している。


「私に嘘をつかれたのですか?」


「なんでもそれで押し切れると思うなよ、ここには取り巻きもいないぞ」


 清楚可憐と言われるかんばせに悲しげな表情を浮かべれば、周囲に人がいれば問答無用でそんな表情をスフィアにさせた者が悪とされる。意外とそういう空気に流されるクナドは、これまでに何度もその手でスフィアに押し切られてきた苦い記憶があるのだ。


 だが今は1対1、なんならあまり頼りにはならないが確実にクナド側にはついてくれるカインもいてくれる。


「悲しいです。慰めてください」


「まずカインに残りの禁呪と古代魔法を見てもらう方が先だ」


 故にクナドは珍しくスフィアに押し切られることを拒んでいた。

 最大の古代魔法はどうにかなったとはいえ、まだ再現しなければならない逸失魔法が残っていることも理由としては尤もなものだろう。


 もっとも後でならいいと言っているようなものなので、すでに勝負はついている。


「クナド、私は後でいい」


「なんでだよ⁉」


 そのうえ味方に付いてくれるはずのカインにも梯子を外された。


「いいから」


 カインにしてみればすべての逸失魔法を再構築できることは確定したのだ。

 クナドの寿命を使わせてもらうとはいえ、そうであればなにも今この瞬間にこだわる必要などない。


 勇者と剣聖王女はすでに完成の域にあり、賢者である己も必須だった『黒白』を得たことによって準備は整ったといえる。ならば今最優先するべきは、最後のピースである聖女を安定させることだと判断したのだ。


 ことあるごとにさっきのが出てくるのであれば、スフィアがクナドと離れていてもそれを抑え込めるようにしておく必要が絶対にある。そうでなければ事と次第によっては、勇者パーティーが魔王ではなく神様によって壊滅させられるかもしれないと思ったのだ。


 ――遠距離恋愛は絶対に破綻すると聞くしな。


 カインとしてはそうならないよう、できることはするべきだと心に誓った。


『聖女スフィア』①

12/17 8:00台に投稿予定です。


新作の投稿を開始しました。

2月上旬まで毎日投稿予定です。


よろしくお願いいたします。


【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】


ほんの少しでもこの物語を


・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひともお願い致します。

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をスマホの方はタップ、PCの方はクリックしていただければ可能です。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ