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【朝晩2話毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第四章

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第040話 『賢者カイン』⑦

 ああ、実はクナドが一番おかしいのは女性の趣味なのかもしれないな。


 それをかっこよく言い換えれば、常人からあまりにもかけ離れた精神性ということになる。それを前にすれば、少なくとも私にとっては神の如きクナドの能力すら霞んでしまう。


 とはいえ寿命を対価にするとはいえ、実質なんでもできる能力なんてさすがに無茶苦茶が過ぎる。


 スフィアの奇跡ですらもどれほど強力でも治癒、強化、弱体方面に特化していて、攻撃においては酷く脆弱だ。なによりも言葉で「こんなことができる魔法」と聞いただけで「こんな感じか?」と構築できてしまうのがとんでもない。


 どれだけ文献をあさっても再構築できなかった闇系統の魔法も、クナドに言わせれば数秒の対価で発動できる闇の基礎魔法を見せてもらえば一気に進んだ。


 対価が大きすぎるものについても発動前に構築術式を展開するだけなら寿命は消費されないらしく、それを詳しく聞くことによって逸失魔法ロストマギカの一つだった『短距離転移テレポート』魔法は再構築することができた。


 さすがに禁呪や古代魔法は構築術式が複雑かつ巨大すぎるため、クナドとの伝言ゲームでは一年半もの時間を費やしてもとうとう再現できなかった。


 それでもクナドが一度実際に禁呪や古代魔法と発動させてくれれば、私の『魔眼』はそれを丸裸にできる。


 高威力の魔法を連発することが自慢だった幼い頃とは違い、今の私が最も優位点アドバンテージだと思っているのは、『魔眼』で見えている構築術式に魔力干渉することによって発動そのものを阻害する『術式破壊インタラプト』だ。それは構築術式が存在している限り、対象が人でも魔族でも関係なく効果を発揮することができる。


 そんなことまで可能となるほど私はこの『魔眼』を使いこなせているのだ、クナドの寿命を削って発動させてくれる禁呪や古代魔法を、一度で必ず再構築させてみせる。


 だからと言って、年単位の寿命を削ることを平気で出来るのはさすがにおかしい。

 

 クナドは致命的な嘘は言っていないと思うし、実際に魔王討伐を果たした後、私たちと一緒に歳を重ねていけるだけの寿命は確保できているのだと思う。自分が寿命を削って禁呪や古代魔法を連発するより、私に再構築させて勇者の固有能力との相乗効果を活かした方がいいというのもその通りだ。


 別に偽悪的に言わなくても、クナドが魔王討伐の効率と可能性を上げるために最適を選んで動いているというのはよくわかる。アドル、クリスティアナ殿下、スフィア、そして私がクナドを王都に残すために必死になるなら、自分が残ることが最適だと判断できるくらいに徹底している。


 クナドは魔王討伐さえできれば、それが自分の手によるものでなくても平気なのだ。


 クナドは名誉やそれに付随する富にそれほど執着しない。

 割と俗なところも見せてくれるので忘れがちだが、自分の命を削ってまで裏方に徹せられるというのはやはりおかしいと思う。


 だからと言ってクナドは博愛主義者だというわけでもない。


 ちょっとした理由で平気で人を嫌うし、嫌った相手には結構容赦がないことも知っている。勇者や王女殿下、賢者(私)の名前を利用することに忌避もないみたいだし、そこだけを見ていると俗物だといってもいいくらいなところもあるのだ。なお聖女の名前をクナドが利用しないのは、デメリットの方が多いと判断しているからだろう、多分。


 一方で気に入った相手には、何事にも親身になって一切骨惜しみをしない。

 どう表現すればいいのか言葉が浮かばないけれど、献身というのが一番近い気がする。


 気に入った相手に対しては、己が身を献ずることすらもまるで厭わない。


 寿命を削ってまで私に逸失魔法を見せようとしてくれるのなどまさにそうだし、まだ勇者の力に目覚めていなかったアドルとその妹を、足手纏いなのにもかかわらず魔物狩りに連れて行っていたこともそうだ。


 それが言葉を選ばずに言えばアドルやクリスティアナ殿下、私の様に利用価値がある相手を選んでしているのであれば、まだ納得できたかもしれない。


 だがクナドにはすこし悔しいことに、勇者パーティー(私たち)以外にも王立学院で知り合って仲良くなっている連中がいくらでもいる。そいつらが何かに困っていたら私たちに対するのと同じように立ち回るし、その際は私たちの名前を利用することもまるで厭わない。


 そのくせきっちり序列つけているあたりは狡いというか上手いというか……少なくとも私は序列が上だと嬉しくなってしまうので、すでにクナドの術中であることは認めざるを得ない。


 クナドは「順番をつけられない好きを好きと認めん。俺はな」とか言って笑っていたが、それ聞いて傲慢だと思うよりもかっこいいなと思ってしまった私はもう手遅れなのだろう。ちなみに手遅れ連中のなかでの序列はアドル、アドルの妹さん、クリスティアナ殿下、私、スフィアの順だと勝手に思っている。


 スフィアの私に対する態度を見る限り、あながち外れてはいないと思われる。

 まあそれも今のところで、そう遠くない未来にこの序列は入れ替わるだろう。


 それに術中というよりも、本気で自分の好き嫌いを大事にしているのだと思う。


 第一印象でも後付けでも好きになったら献身を厭わず、嫌いと見做せば敵とみなす。そこにはクナドの主観的な好き嫌いがあるだけで、多分世間的な評価とか立場は関係ない。正誤善悪損得も関係ないように見える。


 どうしてクナドがそこまで極端な――いびつとさえ言っていい在り方になってしまったのか私にはわからない。


 だが私が序列上位――親友で対等でありたいと思える相手は、どこかがぶっ壊れてしまっていることだけは間違いない。取扱注意なのだ、勇者パーティーのメンバーである私たちの中心に、いつ間にかというよりも、初めからなっていたクナドという存在は。


 正直に言えば、私は恐れてもいる。


 もしも私たちが魔王討伐に失敗した場合、クナドがなにをするのかを。

 想像がつくからじゃなく、わからないからこそ怖いのだ。


 だから私は――賢者は、いや賢者も完璧でなければならない。


 完璧に(そう)なるために、不本意ではあるけれど私はクナドの寿命を使わせてもらうことも受け入れる。そして禁呪と古代魔法のすべてを携え、勇者パーティーの一員として間違いなく魔王討伐を遂行してみせる。


 私がアドルの次くらいの親友になれたらいいなあと秘かに願っていながら、スフィア以上に怖いとも思っているクナド。その彼に後先考えず自分の能力を全開させるような事態にだけは、決してならないように。


 なあに私が逸失魔法をすべて再構築することさえできれば、聖剣の勇者アドルと剣聖王女クリスティアナ殿下、なによりも私以上にやる気満々の聖女スフィアが揃っているのだ。


 魔王であろうが魔人であろうが、魔族などに私たち勇者パーティーが負けることなどありえない。クナドだってそう信じてくれているからこそ、卒業後は王都防衛に専念すると言ってくれるのだ。


 私たちは絶対に魔族には負けない。

 そのために与えられたのだろう突出した力を、人の世界を護るために使うのだから。


『賢者カイン』⑧

12/15 21:00台に投稿予定です。


新作の投稿を開始しました。

2月上旬まで毎日投稿予定です。


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